オーストラリアの国内向けメディア企業のひとつ、Nineの出版部門は、数年前に抜本的なデジタル変革に着手しました。The Sydney Morning Herald、The Age、The Australian Financial Review を始めとする有力ニュースメディアを発行している同部門では、24時間365日廻り続けるニュースサイクルに対応するため、新たな戦略が求められていました。そんな中、従来の出版環境からの移行先として Slack に着目。ニュース編集室プロセス関連の透明性の向上に加え、チームやタイムゾーン、ニュースストーリー間のコラボレーションの改善がその目的でした。
これまで、出版部門の主なコミュニケーションツールはメールでした。ところが、メールのやり取りが膨れ上がり、配信リストが増えるにつれ、ニュース編集室のジャーナリストと現場のレポーターとの間に溝が生じるようになりました。経営陣がボトルネックとなり、質問や問題、レビューのリクエストが受信トレイの中に埋もれてしまい、届くべきところに届かないという事態も発生しました。現在では、編集、製品、テクノロジー、業務、経営の各チームが部門の壁を超えて Slack でコラボレーションしています。
「実際に顔を合わせて話すのがコミュニケーションとしては一番効率的です。それができないときにベストな手段が Slack でしょうね。」
Slack チャンネルでニュース速報にタイムリーに対応
編集プロセスもニュース編集室の運営も、メール主体の手作業のワークフローから一変し、ニュース速報への対応から同社の多数の出版物のパフォーマンス分析に至るまで、Nine の出版部門のメンバーは Slack をあらゆる用途に活用するようになりました。
例えば、Slack の導入で、The Age のジャーナリストのニュース速報への対応方法は大きく変わりました。以前はメールの一斉送信でサポートを依頼していましたが、現在では Slackの #ed-age-breaking チャンネルでこれを行っています。例えば、メルボルンのダウンタウンで火災が発生した場合にジャーナリストが「近くに誰かいますか?」と投稿すれば、こうした呼びかけがチャンネル内のジャーナリスト全員に届き、対応できるメンバーからすぐに返信やリアクションが届きます。
「このような優れた可視性というのは、個別の事例にとどまらず幅広い面でプラス効果をもたらします。」Nine の出版部門の CTO を務める Damian Cronan さんはこう説明します。「Slack の活用で情報をより簡単に配信できるようになり、ニュース編集室が組織全体で報道している内容を継続的に把握できるようにもなりました。」
「従来は数日がかりで対応していたような問題が、今では30分足らずで解決できるようになりました。どんな問題があるのか、メンバーの誰がサポートを必要としているのかがわかりやすく、オープンになったこともその理由だと思います。」
アプリとインテグレーションでニュース編集室のオペレーションを最適化
編集チーム以外でも、Nine の出版部門は Slack を社内の業務運営を管理に活用しています。マーケティングチームでは、同社のブランドに対するフィードバックの共有方法を、これまでの「都度メール」で伝える形から #marketing-news チャンネルへと一元化しました。
この他には、購読者数の増加に寄与しているキャンペーンを特定するべく、その統計をトラッキングするための専用チャンネルもあります。「最新の統計をチェックするためにプレゼンを最初から最後まで確認する必要はなくなりました」と Cronan さんは語ります。「#subscriptions チャンネルで自動生成される週次レポートがいつでも見られるからです。」
同部門では、部門のコンテンツ管理システムも Slack と連携させています。これにより、チームメンバーがシームレスにデータを共有でき、出版されたコンテンツに関する情報を検索しやすくなりました。社のさまざまなプラットフォームを通じて出版されているコンテンツを把握し、そのパフォーマンスを深く理解する上で役立っている機能です。
出版関連の問題が発生すると、編集チーム向けの専用のサービスチャンネル「#ed-tools」の出番です。ここでは、チームメンバーが社内ツールや CMS で発生している問題を投稿したり、プロセスの処理方法を質問することができます。
Cronan さんのチームでは、チームメンバーが必要なときに必要な情報を取得できるよう、手作業だったプロセスのいくつかも自動化しました。これにより、簡単なスラッシュコマンドと Slack のカスタムインテグレーションを使って、インシデントの報告や、トランスクリプトのリクエスト、データダッシュボードの閲覧などができるようになりました。
同部門では、こんなカスタムスラッシュコマンドとインテグレーションを活用しています。
- @incident-monster : 新しいインシデントを報告してチームのインシデント管理をサポート
- /transcribe : ジャーナリストが音声ファイルの文字起こしを Slack から直接すばやくリクエスト可能に
- /dashboards : 利用可能なダッシュボードライブラリを表示し、従業員によるコンテンツのパフォーマンスに関するデータやインサイト活用を支援
- /roster : 所定のサービス担当で勤務中のエンジニアや技術チームメンバー一覧を表示
Slack で部門を超えたコラボレーションが深化
Cronan さんは、チーム、データとプロセスを 1つの Slack ワークスペースにまとめることで、部門内のつながりが強まり、生産性も向上したと説明します。メールから Slack への移行でチーム間のコミュニケーションもスピードアップし、従業員の間でもコラボレーションの機会が積極的に増加されるようになりました。
また、チャンネル別に業務が整理されたことで、管理職が複数の会話をフォローして必要に応じてアドバイスを提供できるようにもなりました。以前のように、対応の要不要にかかわらず送信される数百件の cc メールに煩わされることはありません。
さらに、Slack の活用により、複数部門にまたがる経営面での可視性もアップ。経営陣がこれまでになかったレベルで組織の現状を把握できるようになり、他方で従業員が長時間承認を待つ必要もなくなりました。「Slack で、業務遂行の過程でわざわざ私や経営チームを通す必要がなくなり、経営上の負担が減りました。」Cronan さんはこう語ります。
Slack で経営チームの承認という障害を取り除き、ニュース編集室間のつながりを築き、業務を合理化することで、Nine の出版部門はデジタル時代に合わせたコンテンツの進化を実現しています。