ギャラップが 2017 年に公表した従業員エンゲージメントに関する調査結果によると、日本には「熱意あふれる社員」の割合が 6% しかおらず、調査した 139 カ国中 132 位でした。「従業員エンゲージメント」という言葉に馴染みがなくても、「熱意あふれる社員」の割合が調査国中最下位クラスだったということに衝撃を受けた人も多かったのではないでしょうか。
この結果について、ギャラップのジム・クリフトン会長兼最高経営責任者(CEO)は日経新聞のインタビューで、1980 年代に効果のあったコマンド & コントロール(指令と管理)という方法がミレニアル世代が重視する「成長」と合わないことが原因だと指摘したうえで、従業員エンゲージメントを改善するには「メンバーに指示を出して確実に実行させれば成功する」というマネージャー層の意識を、「メンバーをどうやって成長させるか」に変えていくことが必要だと語っています。
従業員エンゲージメントを高めることが企業の業績にプラスの効果をもたらすことはすでに多くの調査や研究で明らかになっています。では、クリフトン氏の言うようにメンバーを成長させるには具体的に何をどうすればよいのでしょうか?この記事では従業員エンゲージメントを高めるためにできることについて紹介したいと思います。
1.マネージャーはメンバーのサポート役になる
クリフトン氏の言うように、従業員エンゲージメントを高めるには、マネージャーの役割を「指示を出す立場」ではなく「メンバーの成長をサポートする立場」だと捉えることが重要です。しかし昔のようにマネージャーが情報を抱えていてはメンバーに自発的に動いてもらうことは難しく、当然成長も期待できません。まずは情報をどんどん公開し、「マネージャーしか知らない」情報をなるべく少なくすることで、フラットでオープンなコミュニケーションが生まれる土壌を作りましょう。
また多忙なマネージャーはなかなかメンバー 1 人ひとりとコミュニケーションする時間が取れないもの。メンバーとのコミュニケーションが薄くなると、「マネージャーは自分のことをわかってくれていない」という不信感を生み、メンバーはバラバラの方向を向いてしまいます。
最近多くの会社が取り入れている 1on1 ミーティングは、このギャップを埋めるのにいい方法です。その効果を最大化するには、ただのタスク進捗確認に終始せず、ゴールの達成状況やメンバーの抱えている課題感、今後目指して行きたい姿など「メンバーの成長」をメインに話し合う場にすること。メンバーが多く全員と 1on1 を行うのは難しい場合には、スキマ時間にチャットのダイレクトメッセージを活用するのもよいでしょう。
2.経営層を「雲の上の存在」にしない
「上の人が考えていることはわからない」「偉い人は現場のことをわかっていない」こんな声を耳にすることは少なくありません。原因は、経営層と現場でコミュニケーションが分断されていること。そんな状態では会社のビジョンやミッションはなかなか浸透せず、当然その達成も難しくなります。
ウイリス・タワーズワトソンの行った従業員エンゲージメントに関する調査では、「私は会社の目標や目的を信じている」と答えた従業員の割合が日本の回答者全体のうち 38% だったのに対し、従業員エンゲージメントの高い回答者の間では 95% だったそうです。これは、会社のビジョンやミッションの浸透が従業員エンゲージメントにとっていかに大切かがわかる数字です。実際、同社は「組織のミッションやビジョン、バリューは、従業員のエンゲージメントを伴うことでのみ到達可能」だと指摘しています。
経営層とメンバーが同じ方向を向くためには、経営層と現場の分断を埋めるコミュニケーションの場を用意すること。その際、社内メルマガのコラムや朝礼での話など一方通行なものよりも、社員も意見や感想を気軽に共有できる双方向のコミュニケーションの場があると効果的です。経営層が各チームのランチや飲み会に参加するのもいいですが、できれば日常的かつ継続的に行えるものが理想的。例えば、オンラインで「社長がつぶやく場」などを用意して、社長の発信に対してメンバーが気軽にリアクションしたりコメントしたりする場ができるとよいでしょう。
3.仕事の「全体像」が見えるようにする
メンバーのモチベーションが下がるのは、自分の仕事が何の役に立っているのかわかりづらいとき。全体の流れがわからないまま、局所的に「これをやれ」「あれを直せ」と指示されると、だんだん自分が会社の部品のように感じられ、全体への貢献感が希薄になります。また、チーム全体が目指す姿や抱える課題を把握しないまま仕事をしていると、だんだん「受け身」の姿勢が定着し、自分で情報を取りに行ったり積極的にアイデアを提案したりといった行動が減ってしまいます。これではメンバーから成長機会を奪っているようなもの。従業員エンゲージメントも低下してしまうでしょう。
そんな事態を避けるには、仕事の透明性を高めること。すべての仕事の流れや関連するコミュニケーションを見える化しておくことで、都度説明を受けなくても、誰でも全体の流れを把握することができます。そうしてすべての情報を公開しておくと、情報に対する考え方が「流れてくるもの」から「取りにいくもの」へと変化します。そうすることで、社員の間に積極的な意識が芽生え、仕事に対して「自分ごと」という意識で取り組むことができるようになり、それが結果的に従業員エンゲージメントを高めることにつながるのです。
4.褒め合う文化を作る
「認められた」という経験はモチベーションになり、メンバーの成長意欲を高めます。月 1 度あるいは四半期に 1 度のタイミングで表彰を行う会社は多いと思いますが、日常的に認め合う文化を作ることも効果的です。実際、会社のバリューに合った行動をした従業員に対して、従業員同士で「いいね!カード」というのを贈り合うことを奨励している会社や、朝礼で誰かのいい行動を紹介する会社もあります。また、ピアボーナスという従業員同士がインセンティブを贈り合う制度を取り入れている会社も増えてきています。
それに加えて見直したいのが日常会話で感謝を伝えたり褒めたりすること。口頭の会話でも、オンラインの会話でも関係なく、日頃からポジティブな言葉や反応を伝え合うことは従業員エンゲージメントを高めるうえでとても大切です。言葉で褒めづらい場合は絵文字やスタンプなどを活用してみるのもおすすめです。