職場における経営幹部のコミュニケーションのあり方は、企業の成功にとって不可欠ですが、1 つのアプローチですべての状況に対応できるわけではありません。メディア理論家の Marshall McLuhan 氏は著書で、「手段がメッセージである」と述べていますが、それは経営にも当てはまります。結局のところ、何を話すかではなく、いつ、どのように伝えるかが重要なのです。
職場にはさまざまなコミュニケーションツールがありますが、企業が成長を続けるには、ビジネスリーダーはポジティブな職場環境を築きながら従業員のエンゲージメントを維持し目指す方向性を揃えるための最適な戦略を見つける必要があります。ここでは、従業員とのコミュニケーションにおいて、経営幹部が適切なメッセージを発信し、力を与え、成長できる職場文化を成功裏に築くための 4 つの方法を紹介します。
1. 従業員から定期的にアイデアや質問を募る
デザインコンサルティング会社 IDEO の Global Head of Talent である Duane Bray 氏は、多くの企業において最高のアイデアはボトムアップで生まれると指摘します。そのため、管理職はチームメンバーがアイデアを提供できる機会を定期的に設け、リーダーはそれに耳を傾けることが重要です。
「リーダーがプロジェクトを立ち上げる際は、常にその根底にあるニーズを説明し、求める結果を明確に示すことで、メンバーが目指す方向を共通の目標に揃えられるようにします。最高の戦略とは、メンバーが自分のものにできる戦略です」と Bray 氏は言います。
Whirlpool の CEO である Marc Bitzer 氏は、従業員の最大の関心事を把握するため、同社の従業員エンゲージメントプラットフォームを使って、リアルタイムで従業員の質問に答えるライブストリームを行っています。
Whirlpool のグローバルコミュニケーションチームの Senior Manager of Interactive Communications である Kathy Craig 氏は、「[Bitzer] はある時、『従業員が会社全体の広範な状況を理解すれば、それぞれの職場環境でよりよい意思決定ができるようになると確信している』と言いましたが、本当にそのとおりです。そしてそれは、経営幹部からほかの管理職へと波及しています」と述べています。
メッセージ
経営幹部が定期的に全社的な目標を伝え、会社全体の従業員と関わることで、全員の方向性が揃います。また、経営幹部と従業員との間にある壁を取り払うのにも役立ちます。
2. 従業員のフィードバックを受け入れて学び、実現する姿勢を持つ
ほとんどの従業員は、会社における従業員エンゲージメントの向上を望んでいます。しかし、職場でのエンゲージメントとコミュニケーションを高めるためには、経営幹部が意思決定プロセスを定義する際にも、フィードバックを求める際にも、一緒に働く従業員をできるだけサポートするように心がける必要があります。
例えば、アウトドアアパレル大手の Patagonia は、数年前から業績評価を完全に廃止しています。代わりに、アプリを使った継続的なフィードバックプログラムを導入し、四半期ごとの 1 対 1 のミーティングを強化しました。
Patagonia の Head of Human Resources, Finance, and Legal である Dean Carter 氏は、このプログラムに関するインタビューで、「フィードバックを求めると、システムに寛大さが生まれ、それが指数関数的に広がります。単に送られてくるのを待つより、求めたほうがずっと有益なものが得られます」と述べています。
Carter 氏は、同社が段階的にプログラムを導入する過程で、参加した従業員は参加しなかった従業員よりもはるかに高いボーナスを得ていたと述べています。結果的に、それが会社全体にわたる信頼を生み出しました。
継続的なフィードバックモデルの優れている点は、管理職でさえもネガティブなフィードバックを与えるのが難しい職場で、率直なコミュニケーションが当たり前になることです。2017 年に行われた約 7,600 人の回答者を対象としたある研究では、44% の管理職がフィードバックを与えることにストレスを感じていると回答し、約 7,800 人の回答者を対象としたフォローアップのアンケートでは、21% がフィードバックを完全に避けていることがわかりました。
メッセージ
従業員がどのように感じているかを確認するのに役立つ、分析機能を備えた匿名アンケートなどオンラインのコラボレーションやフィードバックのツールは数多くあります。また、リーダーがチームのパフォーマンスを評価するためのプラットフォームもあります。Patagonia の先例を参考にしたいと思う企業は、従業員が質問をしたり、同僚に対して称賛や建設的なフィードバックを提供したりすることができるアプリを使って、完全な透明性を実現するためのポリシーを採用することもできます。
3. 企業の価値観を公に掲げ、伝える
管理職、経営幹部、従業員が垣根を越えて職場における協調的なリーダーシップとコミュニケーションの文化を築くことで、チームの主体性と自律性を高めることができます。Netflix の事例をご紹介します。自立した意思決定が同社の最も重要な企業価値として挙げられています。
Netflix の CEO である Reed Hastings 氏は、2018 年の TED トークで「私は四半期ごとにできるだけ少ない決定を下すことを誇りに思っています。私たちがやろうとしていることは、従業員に責任感を持たせ、彼らが自ら行動する権限を与えることです」と述べています。
Slack が 2019 年に発表した「ナレッジワーカー意識調査」によると、目指す方向性が揃っている従業員(会社のビジョンや戦略とのつながりを感じて成果を上げる従業員)は、成果志向と独自のモチベーションの両方を備えています。さらに、その 75% は意思決定の権限を与えられていると感じており、90% は成功がどのようなものかを明確に理解していることもわかりました。それらはすべて経営幹部から伝えられています。
メッセージ
企業のリーダーは組織のミッションや価値観を伝える責任があります。会社がどんなことを重視しているのか、どのような期待があるのかを従業員に理解してもらうために、その価値観を目につきやすい場所に掲げてください。
管理職が従業員のエンゲージメントの高い企業文化を築く最も効果的な方法は、職場でのコミュニケーションを強化することです。幸いなことに、それは最も簡単なことの 1 つでもあります。
職場のコミュニケーションをかつてなくスピーディーでアクセスしやすくするためのアプリは数多くあります。リーダーが行うべきは、自分のチームに最も適したエコシステムを構築するために時間を費やすことです。