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心理的安全性の高い組織を作る方法

職場の心理的安全性を高めて、失敗を恐れず挑戦できるチームを構築

Slack チーム一同作成2019年2月19日イラスト: Robert Samuel Hanson

職場では感情を出すべきではなく、明確で毅然としたアクションだけが求められていると聞いたことはありませんか?かつては職場で感情について話すことはタブーとされ、今もその傾向は根強く残ります。しかし専門家によると、感情を表すことで多くのメリットが得られるようです。それどころか、疑念や不安といった感情を口にしないでいると、ビジネスの成功が妨げられかねません。

研究者の Hemant Kakkar 氏と Subra Tangirala 氏は、もともと活発にアイデアを出したり提案したりする人でも、批判や罰を受けることを恐れると控える可能性があると指摘し、次のように述べています。「逆に言えば、はっきりと意見を言うことを奨励してそれに報いるようにすれば、リスクを避ける性格の人も発言するようになります」。

この背景には、メンバーが自分の意見が重要だと思っていない、あるいは職場のヒエラルキーによってメンバーの貢献が制限されている可能性があります。現場のマネージャーは、メンバーの感情や不安に細心の注意を払い、その感情がモチベーションやメンバーの能力にどう影響するかわかっておかなければなりません。

そこで大事なのが心理的安全性です。

メンバーにとって心理的に安全な空間を作るのは簡単ではないものの、お金のかかるトレーニングは必要ありません。ただ注意深く、一貫性を持って行えばよいのです。

心理的安全性の定義とそのメリット

心理的安全性とは、グループのなかで自分を正直にさらけ出しても大丈夫だと誰もが感じられることです。この言葉を創出したハーバードビジネススクール教授の Amy Edmondson 氏は、心理的に安全な職場文化を「そこにいるメンバーが不安でいっぱいにならず、恥ずかしさやプレッシャーを避けるため自分を隠すようなことをしない文化」と表現しています。 言い換えれば、意見を言うことや失敗から学ぶことが奨励されるだけでなく称賛される文化です。

ここで、リーダーの頭に入れておくべき点があります。それは、心理的安全性は優しさの産物ではなく、その逆だということです。Edmondson 氏によると、心理的安全性の鍵は職場に一定の健全な対立があることだそうです。「心理的安全性とは、率直さのことであり、生産的な意見の相違や自由な意見の交換が可能な状態です」と、同氏は Quartz の記事で述べています。

これを裏づけるのが、調査企業 Gallup で Senior Managing Adviser を務める Jake Herway 氏です。Herway 氏は以前ある企業と仕事をしていた時、ある重要な取り組みの最中に行き詰まったそうです。「その部門では、安心して新しいアイデアや意見、批判を主張したり追求したりできると感じている人は明らかにいませんでした」と、Herway 氏は書いています。「ネガティブな環境ではないものの、実際に仕事が始まると、生産的ではありませんでした」。

マネージャーとメンバーがお互いに遠慮して建前で相手の考えを支持すると、コミュニケーションがうまく機能しないばかりか、お互いから学ぶチャンスを逃してしまいます。過度に親切な発言(特に不正確または曖昧な内容や、間違った相手に向けられるもの)は、実は、『GREAT BOSS(グレートボス)―シリコンバレー式ずけずけ言う力』の著者である Kim Scott 氏が言う「過剰な配慮)」につながります。進歩よりも相手への配慮を重んじるこのような言動は、短期的にメンバーの気分をよくするかもしれませんが、誰にとっても成長はおろか改善にもつながりません。

一方でエンゲージメントが高く、行動してよいのだと思えるメンバーは、チームに自分の声が届いていて意見が尊重される(そして反対意見もあること)とわかっているため、チームがイノベーションを起こす力に大きな影響を与えるのです。

職場の心理的安全性を高めるには

意見を主張してリスクを取るようチームに奨励することと、実際に信頼関係を築くことは別物です。心理的安全性は簡単に損なわれるものであり、それを考えるとなおさらです。たった 1 つの衝動的な反論が、チーム全体を崩壊させることもあります。

メンバーが安心して意見や懸念を口にできるかどうかは、結局のところマネージャーがグループとどう接するか次第です。メンバーが一緒に働きたいのは、自分をチームの一員とみなし、何も隠さないと信じられるリーダーです。

マネージャーやチームリーダーが心理的安全性を高めるための 4 つの方法

  1. 自分の間違いを認める : リーダーが不得手な面を隠さず率直な姿勢を見せれば、間違ってもよい(そしてそれを知られてもよい)というメッセージをメンバーに示せます。Edmondson 氏によると、リーダーがこれまで信頼と心理的安全性を促進できなかったと謝罪するのも効果的だそうです
  2. チームに意見を求める : Alison Reynolds 氏と David Lewis 氏の研究によると、ヒエラルキーに基づいて行動するチームでは新たなアイデアを試すまでに時間がかかることがわかりました。というのも、その責任をチーム全体ではなく個人に負わせるからです。グループで複数のメンバーに意見を求めるようにすれば、メンバーがチームに対して深い関わりや責任感を感じられるだけでなく、イノベーションを起こせるようになるでしょう。
  3. 質問や懸念には積極的に対応する : Gallup の調査によると、アメリカで自分の意見が職場で重視されていると考える人の割合はわずか 30% です。評価されるべきアイデアは、ビジネス戦略に関するものとは限りません。メンバーが非現実的なスケジュールを指摘したり、プロジェクトの明確化を求めたりした時にも、マネージャーは感謝を示すべきです。懸念を共有してくれたことに感謝し、メンバーが次のステップを決めるのをサポートしましょう。
  4. メンバーのミスを許す : 間違いに対する否定的な反応ほど、心理的安全性を損なうものはありません。その代わり、ポジティブな面に目を向けましょう。ミスは発見され、修正可能であるうえ、その経験から学べます。何より、心理的安全性が高い環境は間違える不安からメンバーを守ってくれるのです。

組織心理学者で『Zen Your Work: Create Your Ideal Work Experience Through Mindful Self-Mastery(仕事に禅を : マインドフルな自制を通して理想の働き方を実現する方法)」の著者である Karlyn Borysenko 氏によると結局自分の弱い部分をさらけ出すことに尽きるようです。

「心理的安全性がどのようなものか示すには、自分自身がチームの模範となるのがベストです」と、同氏は Forbes の記事で指摘しています。「実際に、自分自身のためにこれらを行おうとしなければ、いくらチームビルディングに力を入れても望む状態にはなりません」と語っています。

信頼との違い

Edmondson 氏が心理的安全性と優しさの違いを指摘するように、リーダーも心理的安全性と信頼には明確な違いがあることを頭に留めておく必要があります。これらの概念は関連していますが、置き換えられるわけではありません。メンバーとリーダー間の信頼は心理的安全性の要因となり、逆もまた然りです。

心理的安全性が高い職場環境では、仕事のペースや量が変動しても、常に安定したコラボレーション状態を保てます。メンバーは安全だと感じることで、挑戦できるようになるのです。皆さまの組織にはあらゆる可能性があります。心理的に安全性な環境を作りさえすれば、その可能性は大きく発揮されるでしょう。

 

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うーん、システムがなにか不具合を起こしてるみたいです。後でもう一度お試しください。

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