顧客から開発、会計、コンサルティングなど特定の業務を請け負うエージェンシーが完全リモート体制になるのは簡単ではありません。でも顧客、パートナー、契約業者、ベンダーがみんな一斉にリモートに移行したらどうなるでしょうか?
3 月中旬以降、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、世界中の企業がリモートワークへと移行しました。Slack では分散したチームがどう距離を埋めているのか把握するために、Slack コネクトを使って顧客とコラボレーションを進める組織にインタビューしてきました。Slack コネクトとは複数の組織が同じ Slack チャンネルと Slack ワークスペースで安全にコラボレーションできる方法です。
ここではそのなかからグローバルな顧客を持つ 3 社による、顧客とより連携したパートナーシップを育むための戦略を紹介したいと思います。
Crema
納品までのプロセスに顧客を引き入れたコラボレーション
ミズーリ州カンザスシティを拠点とするデジタルプロダクトエージェンシー Crema は、モバイルアプリやウェブサイトの開発プロセスの全段階において、チャンネルを使って顧客とつながり、コラボレーションを進めています。
「ほとんどの顧客は、仕事を依頼したら数週間後には納品されることを期待します。Slack チャンネルを共有すれば、納品までのプロセスに顧客を引き込むことができます。より速い意思決定が、より速い納品につながるのです」
Crema では顧客ごとに 2 つのチャンネルを作成しています。1 つ目は #client-名前
というチャンネルです。ここでは Crema と顧客が一緒に、デザインや開発のニーズについて話し合います。次のステップが決まったら、それを #client-名前_コラボ
で実現していきます。
Crema の CEO である George Brooks 氏は、チャンネルでコミュニケーションする一番のメリットについて、自社のツールやシステムを Slack に直接連携させるのが簡単だという点を挙げます。例えば、Crema では Zoom がよく使われます。ほとんどのチームがリモートワークに移行している今はなおさらです。「私たちにとって Slack は今や欠かせません」と、Brooks 氏は話します。「Zoom で会話を始めるのも、Slack の /Zoom コマンドならあっという間です」。
IQ Accountants
顧客とのやり取りをチャンネルに移して対応時間を 43% 短縮
オーストラリアのクイーンズランド州近郊に本社を置く IQ Accountants は、会計、記帳代行、税務相談、事業開発の各サービスを世界中の組織に提供しています。同社ではメールでのやり取りや煩雑な紙ベースのプロセスを避けるため、顧客とのコラボレーションに Slack を導入しました。
現在は 30 件のチャンネルを活用して、記帳代行サービスの顧客と連絡を取り合っています。Managing Partner の Kyelie Baxter 氏によると、同社では顧客とチャンネルを共有し始めて以来、顧客対応時間を 43% も短縮できたそうです。以前は 7 日かかっていたところが、3 日で済むようになったのです。
「顧客の案件を処理している最中に、銀行取引明細書がないとか、税金書類がアップロードされていないことに気づくことがあります」と、Baxter 氏は続けます。「こういう場合、以前はメールで顧客に連絡していたのですが、なかなか返事をもらえませんでした。 でも今は、Slack で『書類をアップロードしてください』と頼むだけで済むようになったんです」。
Baxter 氏によると、オーストラリアの税制度では、企業は四半期および月ごとに事業活動報告書を記録することが求められています。そのため書類が整理されていないと、まさに時間との闘いになるのです。「プロセスを 21 日で終わらせないといけないのに、14 日目にやっと情報が送られてくるということもありました」と Baxter 氏は振り返ります。「そうすると残り 7 日ですべての仕事を終わらせなければなりません。今では Slack でコミュニケーションできるようになったおかげで、期限前に仕事を終えられるようになりました」。
顧客とチャンネルを共有することの最大のメリットは、「メールがあふれることがなくなったこと」だと Baxter 氏は言います。Slack を導入する前、ピーク時には顧客から 1 日平均 20 通のメールが届いていました。それが今ではわずか 1、2 通に減ったのです。
「顧客と共有しているチャンネルでは、以前よりずっと早く返信をもらえるようになりました。これは私たちにとって大きなメリットです。仕事の効率が上がったのですから。そして顧客にとっても、フラストレーションが減り仕事をすばやく進められるため、大きなメリットとなっています」
Spark 64
チャンネルで顧客の複数プロジェクトに同時対応
Spark 64 はニュージーランドのオークランドを拠点とするコンサルティング企業です。同社では、対話型チャットボットから画像認識ツール、ビジネスインテリジェンスまで、AI テクノロジーを活用して顧客ビジネスの成長を支援しています。
Spark 64 の共同創業者兼 CTO の Ming Cheuk 氏によると、チームが顧客とチャンネルを共有してやり取りを整理している方法は次の通りです。まずチャンネルは、#data-合同-調査
や #smartsense-プロジェクト
のようにプロジェクトごとに命名しています。これらのチャンネルでは次のことを残しています。
- プロジェクトの重要な決定事項
- ビデオ会議の議事録
- 進捗共有ミーティング
- 要件や依存関係にあるものに関するフォローアップの質問
Cheuk 氏によると、同社ではチャンネルのおかげで同じ顧客の複数のプロジェクトに同時に対応できるようになったそうです。そのなかには、最初のプロジェクトでは Spark 64 チームのサポートがあまり必要なかったという例があります。このプロジェクトでは、開発者は顧客のチャンネルを使って、主に進捗報告、質問への回答、対面での会議のスケジュール設定などを行っていました。
そうしてプロジェクトが進むなか、顧客から新たに期限が重複する別のプロジェクトを依頼されたのです。第 2 のプロジェクトでは、顧客側の中心的な開発チームとのこまめな連携が必要でした。そのため新しいチャンネルには、さまざまなチームのエンジニアなど最初のプロジェクトよりも多くの人が参加しました。そんななかでやり取りや情報を整理しておけたのは、プロジェクトごとに個別のチャンネルを作ることができたからです。
「どちらのプロジェクトでも、メールの件数はほぼゼロになりました」と、Cheuk 氏は話します。「Spark 64 では、毎週の対面ミーティングを除けば Slack がメインのコミュニケーション手段です。とてもシームレスに使えています」。
「チャンネルでつながれば、ワークスペースを切り替えなくても、社内の人と話すのと同じくらい簡単に顧客とやり取りすることができます。また違う組織の人にもダイレクトメッセージが送信できるため、時間のかかる議論は個別に行うこともできます」
チャンネルで、より効果的なコミュニケーションの世界へ
リモートワークが初めてでも、すでに経験豊富でも、Slack コネクトを使ったコラボレーションなら、社内メンバーから社外パートナーまで全員の距離がもっと近づきます。プロジェクトの進行中に顧客が重要な意思決定や成果物に関われるようになれば、ともにチームとしてより高い成果を実現できるでしょう。