Slack の機能や価値はそもそもなにか?ビジネスでどのように活用でき、どんな成果を上げられるのか?Slack に少しでも関心を持ってくれたビジネスパーソンが最初に抱く問いに答えるため、セールスフォース・ジャパンは、「チームのやる気と生産性を上げるちょっとした仕組み。TOPPAN の実践する『分報』とは?」と題するウェビナーを開催しました。
TOPPANデジタル株式会社で ICT開発センター 開発戦略部に籍を置く椿 紗代子氏と、同センター DXソリューション開発部の青山 桃氏をゲストスピーカーに招き、Slack の活用方法を紹介した「Why Slack? 導入事例紹介セッション」の主な内容をレポートします。
Slack の価値は「自動化・情報共有・コラボレーション」
本ウェビナーでは最初に、株式会社セールスフォース・ジャパン Slack 事業統括本部 エンタープライズ第二営業本部 第三営業部 部長で、ナビゲーターを務める越野 昌平氏が、Slack の価値をこう説明しました。
「Slack は、大きく 3 つの価値を提供しています。『AI と自動化による仕事のスピードアップ』『ナレッジの共有・検索による再利用』『全員がつながり参加するコラボレーション』の3 つです。それらによって、Slack は業界・業種を問わず、現在 20 万以上の組織で採用されています」
Slack には、これらの価値を出すための複数の機能があります。
まず「自動化」で提供しているのが、アプリケーションを Slack に連携させる機能や、ワークフロービルダーを活用して業務を円滑に進める機能です。
「情報の共有」では、チャットでリアルタイムにコミュニケーションできるチャンネルや、ストック型でコンテンツを共有できる canvas などの機能があります。
越野氏は、「コラボレーション」についても、手軽に音声通話できるハドルミーティングや、動画で非同期のコミュニケーションを実現するクリップなどの多彩な機能があるとし、こう解説しました。
「たとえば、『遊び心のあるコミュニケーション』を実現するのが絵文字。テキストだけより温かさや楽しさ、盛り上がり感のあるコミュニケーションを演出できます。ハドルミーティングを使えば、『ちょっといい?』と肩を叩く感じで Web 会議を実施し、チーム内でのリアルタイムな協力や、“1 対 n ”のコミュニケーションを活性化できます。また、クリップを使えば、大切なアナウンスや表彰などの際、短い動画や音声を撮って直接言葉や感情を伝えられます」
加えて Slack は、2,600 以上のアプリケーションを連携させて最小限のコーディングで利用できる AI・自動化の機能や、自分の知らない社内の情報を検索・発見して仕事に活用できる機能も備えています。
「そうした機能によって、Slack は、“企業のインテリジェントプロダクティビティプラットフォーム”として多くの価値を提供しているのです」(越野氏)
Slack で実現する TOPPAN の“分報”
では、そうした価値とそれを支える機能を持つ Slack は、ビジネスでどう活用されているのでしょうか? ゲストスピーカーの椿氏が、「チームのやる気と生産性を上げるちょっとした仕組み。TOPPAN の実践する『分報』とは?」と題して、同社における Slack の活用法を紹介しました。
分報とは、業務報告を日報のような日単位ではなく、分単位で小刻みに行うというもの。椿氏は、それを採用した理由と経緯をこう説明します。
「Slack を導入した矢先に、コロナ禍によるフルリモートワークが始まりました。オンラインでのコミュニケーションを更に促進するためにはどうしたらよいか悩んでいました。そんな中で見つけたのが、『分報』を活用した他社の取り組みに関する記事です。Slack で個人メインのチャンネルを作って Twitter(現 X )のように運用し、業務のことからプライベートなことまでなんでも自由に表に出す。これはおもしろそうだと思い、分報『#times』を始めることにしました」
一般に分報は、作業の内容や進捗などの業務情報を分単位で報告することで、チーム内の課題をリアルタイムに共有する目的で行われます。しかし、同社における分報の利用法は、それだけに留まりません。
「#times」の使い方は、メンバーによってさまざまです。たとえば、あるデザイナーは、製品の UI で気になることをメモするために投稿し、そのスレッドに続けて改善案を書き出していくという、自分用のアウトプットの場として利用しています。それらの投稿には、他のメンバーからコメントやリアクションがあり、そこからアイデアが広がったり、やる気が出たりすることもあります」
ほかにも、気になった記事をブックマークしたり、参加した勉強会の内容や感想を書き込んだり。他のメンバーに直接メンションをつけて質問するなど、各メンバーが思い思いに「#times」を利用しているそうです。
「その中から、当初は想定していなかった活用法が次々に生まれています。 たとえば、あるメンバーが、会議中に疑問を感じながら時間切れで議論できなかった内容について、『先ほどの話、こうしたらどうかな?』と投稿したところ、他のメンバーから『いいね、それでいこう』と反応があり、瞬時に解決したことがありました。また、シナリオテスト用の Excel 作成に関する個人メモの投稿に対し、他のメンバーが必要な観点を投稿して情報を補うことで、作成前に打ち合わせなくメンバー間のすり合わせが終わったこともありました」
単におもしろそうという理由で始めた「#times」ですが、結果として情報がオープンになる、モチベーションが上がる、Slack 利用のハードルが下がって日常により溶け込むなど「非常にいい効果が現れている」と椿氏は喜びます。
実際、ICT開発センター内の個人間のみでやりとりができるダイレクトメッセージの利用率を調査したところ、「#times」を導入していないチームが平均 37.0% だったのに対し、「#times」を導入したチームは 15.8% と低くなっています。分報の日常的な利用によって、チーム内の情報共有の頻度と密度が自然に高まり、ダイレクトメッセージを使う必要性が低下していることがうかがわれる数字です。
また、投稿数・リアクション数・検索数など、Slack の利用状況を示す各種指標において、「#times」チャンネルの保有者が軒並み上位 20 位までの約半分を占めています。椿氏は「Slack 利用に対する心理的ハードルが下がりいい効果を相乗的に生み出しているのではないか」と分析します。
「本日の主題である『やる気と生産性』への効果も確実に現れています。メンバーの投稿に触発されたり、コメントで励まされたりすると本当にモチベーションが上がります。また、ちょっとした困りごとがその場で解決する、気づきをアウトプットすることで思考が整理される、さらにそのアウトプットが誰かのインプットになる、という好循環が生まれ、生産性が高まっているのを強く実感しています」(椿氏)
そうしたいいことづくしの分報をぜひ一緒に始めませんか、という言葉で椿氏は事例紹介を締めくくりました。
分報「#times」は“オンライン上のデスク”
続いてのセッションでは、越野氏・椿氏に青山氏を加えた 3 名により、視聴者からの質問に答えるパネルトークが行われました。Slack の活用に関する示唆に富んだやり取りの中から、いくつかをピックアップしてみました。
Q.どんなことを意識して「#times」を使っていますか?おふたりの活用術を教えてください。
「私は Twitter と同様に思ったことをどんどんつぶやいて、意見や賛同を得る用途で使うことが多いです」(椿氏)
「分報を“オンライン上のデスク”ととらえて、出社直後にその日の To Do を投稿するよう意識しています。作業の内容や進捗を周囲に伝えておくことで、なにか問題があったときに察知してもらえるからです。また、誰かに質問したいとき、その人のデスクへ行って話しかけるのと同じ感覚で、チーム内外を問わず相手の分報にメンションをつけてコメントしたり、逆に自分の分報で複数のメンバーにメンションをつけて情報共有したりしています。自分のデスクである『#time 』を中心に、どんどん話を広げていくようなイメージです」(青山氏)
Q.Slack がなかったとしたら同じような効果をどう生み出していましたか?
「『#times』の代わりになるものはないと感じています。他のツールでは、Slack ほど情報をオープンにできないからです」(椿氏)
「私も Slack は唯一無二だと感じています。『#times』では、チャンネル名のつけ方のルールを決めているため、そのルールで検索すると目的の分報がすぐに見つかり、気軽にのぞきにいったり、参加したりすることができます。そういう使い方は Slack でなければ難しいと思います」(青山氏)
Q.上司は分報を見ているのですか?
「上司・部下関係なく見ていて、投稿にグッドマークをつけてくれたり、悩んでいることにアドバイスしてくれたりします。気負いなく思ったことをつぶやき、それに対して皆が自然に反応してくれる感じです」(青山氏)
「上司の立場からすると、メンバー全員の分報があれば、日報や週報がなくても仕事が成り立ちそうですね。そういうマネジメントの目線でもいい取り組みだと感じました」(越野氏)
Q.会議や打ち合わせの代替として活用できますか?
「大いに活用できます。先ほどもお話したように、会議で終えられなかった議題の続きを話したり、“打ち合わせ前の打ち合わせ”としてメンバー間で意見をすり合わせたりする用途でも使えます」(椿氏)
「ほかにも、大きな効果を発揮するのが、打ち合わせをするか悩むけどちょっと会話したいというとき、まず『#times』で話しかけて、必要ならハドルミーティングに切り替える、といった使い方ですね」(青山氏)
分報をフル活用する同社の取り組みは、Slack の導入や活用拡大を検討中の企業にとって、大きなヒントとなったのではないでしょうか。