コラボレーションとは何かを考える時、以前なら異業種の企業間で協力し、新しいものを作ることがまっさきに思い浮んだかもしれません。しかし最近では企業内での部門やチームを超えた協働という意味でも多く使われるようになりました。Dropbox Japan が実施した調査によると、好調な企業で働く回答者のうち 8 割が「オープンコラボレーションを重視している」と回答。ビジネスをより良く進めるうえで、さまざまな部門の人を巻き込んだオープンな話し合いと、そこから生まれる新しいひらめきが大切だと感じる人が多いようです。
一方で、部門による環境の違いが社内コラボレーションを進めるうえで壁になることもあります。例えば、メンバーが持っている情報や使う専門用語、勤務時間帯や使用するコミュニケーションツールなどが部門によって異なる場合、そうした違いがスムーズなコミュニケーションを妨げることも。そのため、社内コラボレーションとはどのような環境で生まれやすいかを考え、各側面での違いが問題にならないよう準備を整えておく必要があるのです。
今回は、社内コラボレーションとはどのように促進できるのかを考え、環境を整えるためにできることを 4 つのステップに分けて紹介します。
1. 情報共有の垣根をなくす
「社内コラボレーションとはどのような環境で生まれやすいのか」を考えた時、まず最初にしておきたいのが情報の垣根をなくすこと。なぜなら、広く情報を知ることができてこそ、各メンバーの視点から点と点がつながりやすく、現実に沿ったアイデアが浮かぶはずだからです。
そのために、まず情報共有に使う社内ツールを 1 つに決めましょう。各部門で使うツールが異なっていては、ツールの切り替えに手間がかかったり、会話を見失ったりしてしまうことも考えられます。社内でのコミュニケーションツールを統一し、やりとりの土台を固めましょう。そのツール選びの際に大切なのは、まず内容ごとに会話の場を分けられるものを選ぶこと。トピックの数が増えたとしても、情報が錯綜することなくそれぞれの話題に集中できるからです。
また会話を検索しやすいツールを選ぶことも大切です。そうすれば、日々さまざまな情報が蓄積されていくコミュニケーションツールを、全員にとって共通の情報源やナレッジベースとして使うことができるからです。さらに、実際にツールを使用する際にはコミュニケーションをできるだけオープンにしましょう。各自が広く情報にアクセスでき、自律的に調べ物をできる環境を整えるのです。
ある企業では、メールで情報共有をしていたところ「メンバーや組織のことををどれだけ知っているか」によって 1 人ひとりが得られる情報に差がついてしまいました。そこで情報共有をツール上でオープンに行うよう変えたところ、情報のサイロ化を解消し、社内のナレッジを広く共有できるようになったそうです。社内コラボレーションとはどのような環境で生まれやすいかを考えた時に、こうしたオープンな情報共有ができる環境はまず欠かせないと言えそうです。
2. 専門用語の溝を埋める
社内コラボレーションとは、別々の専門知識を持つメンバーがともに働くということ。つまり、お互いが普段聞き慣れない専門用語が出てくる状況も想定できます。しかし毎回誰かに尋ねるのも大変ですし、個人の説明次第で受け手の理解がずれてしまうことも起こります。そうした状況を避けるには、用語の意味を教えてくれるボットを活用するのがおすすめです。
ある企業では「社内で飛び交うあらゆる専門用語を格納する生きた辞書」として、チームでボットを作成。これにより、メンバーが独自に疑問を解決できるようになったほか、新入社員の研修にも役立っているそうです。またメンバーがどのようにボットを使っているかを把握することで、社内の知識面での温度差を知ることができ、組織として変えるべきことを探るのに役立っているようです。
3. 非同期的にやりとりをする
働き方の多様化が進み、さらにコロナ禍によりリモートワークをする人が増えるなか、同じ部門のメンバー同士でも別々の場所や時間で働くことも珍しくなくなりました。部門を超えたやりとりを促進したい場合ならなおさら、メンバーの働く時間や場所が異なることを前提にその方法を考えた方が良さそうです。
時間や場所を超えて効率よくやりとりをするには、非同期的なコミュニケーションを基本にすると良いでしょう。ある企業では、オンラインツールでの非同期的なやりとりをコミュニケーションの中心にすることで、世界中のメンバーとのスムーズなやりとりを実現。場所やタイムゾーンの違いがあっても、各自が必要な時にメッセージを投げかけ、またできるだけ早いタイミングで対応することで、効率的なやりとりができるようになりました。たとえ別々の時間帯や場所で働くメンバー同士でも、適切なツールを使いコミュニケーション方法をアップデートすることで、社内コラボレーションとは問題なく実現できるものなのです。
4. すばやく意思決定する
社内コラボレーションとは、新鮮なアイデアや新たな価値を生む可能性を秘めています。そのため、実行する際はその鮮度が落ちないようスピード感も大切にしたいところです。ゴーサインまでに時間がかかり新鮮味がなくなったり、状況が変わって実現できなかったりすることは避けたいもの。そこで最後の壁となりうるのが意思決定です。
スムーズな意思決定のためには、ツール上での意思決定フローをあらかじめ決めておくことがおすすめです。例えば「承認する際はこの絵文字」など、できるだけシンプルにしておくと良いでしょう。
さらに無駄なく意思決定を進めるには、メンバーに委ねるのも一案です。十分な情報を得ているメンバーであれば、一からそのプロジェクトについて学ばなくてはならないリーダーよりも的確な判断ができる場合もあります。ある企業では、オープンに情報共有して従業員の自律的な行動を促した結果、意思決定のスピードが 4 倍にもなったそうです。新しい挑戦を促すにはこうしたスピード感や、メンバーの自律性を伸ばすことも重要です。リーダーはコミュニケーションツール上で進捗を見ながら必要な時に介入できることで、安心してメンバーの自律性を伸ばすことができるでしょう。
社内コラボレーションとは、各部門が別々に考えていては思いつかないような新しいアイデアを引き出す機会です。そして、そうしたアイデアをもって挑戦することが、メンバー 1 人ひとりの、そして企業にとっての成長にもつながるのです。