Slack の Digital HQ(会社を動かすデジタル中枢)は数多くの女性の力に動かされてきました。彼女たちのアイデア、エネルギー、熱意によって、何百万ものユーザーの皆さまのためのよりよい製品、より快適な職場、より平等な体験が生まれてきたのです。そこでこのブログでは、国際女性デーを皮切りに、第一線で活躍する女性たちを 3 回に分けて取り上げます。
第 1 回目の今回は、Slack と Salesforce のエンジニアリング、マーケティング、リサーチの分野でイノベーションを牽引する女性リーダーたちに、テクノロジー業界でのキャリアについてこれまでの経験や、独自の視点、そしてすぐに実践できるアドバイスをそれぞれ語ってもらいました。今回登場するのは、Slack で Software Engineering 担当 SVP を務める Rukmini Reddy、Salesforce の Global Marketing 担当 EVP である Emma Chalwin、Slack の Future Forum 担当 VP の Sheela Subramanian の 3 人です。男性中心の業界で、彼女たちがそれぞれどのように仕事にやりがいを見出し、仕事と家庭を両立させ、評価を勝ち取ってきたか見てみましょう。
インタビューの内容は、読みやすいよう要約・編集してあります。
不安の克服がキャリアの土台に : エンジニアリングリーダー Rukmini Reddy
Rukmini Reddy の人生は、飛行機に乗ると決意した瞬間に変わりました。インドの中流家庭で育った少女時代に夢中だったのは、レース編みよりもコンピュータープログラミングです。そして将来はコンピューターサイエンスを学びたいと思うようになりました。しかしいざアーカンソー州で大学院に行くチャンスを手に入れると、Reddy は不安で立ちすくみました。飛行機に乗って、知り合いが 1 人もいない国に行くべきかどうか迷ったのです。
そんな時、 思い切って挑戦してみなさいと励ましてくれたのは祖母でした。Reddy はいつも、あの時飛行機に乗っていなかったら人生どうなっていただろうかと考えると言います。それから Reddy はキャリアを積み、今や 10 年以上の役員経験を持つエンジニアリング部門のリーダーとなりました。
「私がキャリアを歩み続けられたのは、不安と勇気をともに持ちあわせていたからこそです」と、Reddy は話します。「何もかも残して旅立つのはとても不安でしたが、あの飛行機に乗って本当によかったと思います」。
キャリアを歩むなかで尊敬してきた女性を教えてください。おばあさまですか?
そのとおりです。この祖母の写真はインドで 1930 年に撮影されました。ズボンをはき、ラケットを持って自転車に乗っています。当時のインドで、こんな格好は前代未聞でした。祖母は一般的な女性とは違ったんです。
祖母の 108 歳の誕生日が近づいた時、私は子供たちを連れてインドまで会いに行きました。祖母が亡くなったのはその 1~2 か月後のことです。アメリカで初めてお給料をもらった時、私は祖母に数ドルを送りました。私が生まれて初めて稼いだお金だったからです。その紙幣は、祖母の遺品のなかにありました。ゆうに 15 年ほども、大事に持っていたんですね。祖母にとってそれだけ大きな意味があったんです。
仕事とプライベートの両立について、過去の自分に伝えたい方法はありますか?
私には燃え尽き度を測るメーターがあるんです。振り返ってみると、私はだいたい 90 日ごとに燃え尽きます。自分が自分であるためのエネルギー量がそれくらいなのでしょう。そのため私はここ何年もの間、90 日ごとに休暇を取っています。前もってスケジュールに入れておくんです。自分のパターンを把握することはとても重要です。燃え尽きて疲れ果ててしまったら、ベストな判断はできません。それを防ぐために手を打っておきましょう。セルフケアや自分のための時間を前もってスケジュールするのはおすすめです。
2 番目に大切なのは、自分の力が弱らないようにすることです。私はよく No と言います。色んなことを断って、周りに助けを求めるんです。もっと早くからこうしておけばよかったと思います。
「燃え尽きて疲れ果ててしまったら、ベストな判断はできません。それを防ぐために手を打っておきましょう。セルフケアや自分のための時間を前もってスケジュールするのはおすすめです」
望むキャリアの実現や方向転換のタイミングはどうすればわかりますか?
私は伸縮比率のようなものを使って、キャリアにおける方向転換、変化、成長のタイミングをつかんでいます。例えば、私は人生のある時期、具体的には新米ママの時には「今は伸びしろがない」と感じていましたが、それでよかったんです。また、いつも仕事に追われている気がする時は、思うように成長していないか、新しいことを学んでいない可能性があります。そんな時は、方向転換や変化が必要かどうかを考えるんですす。今は自分の仕事に満足しています。毎日、成長して学んでいるからです。
自分の価値観を大切に守ってキャリアも成功 : マーケティング役員 Emma Chalwin
Emma Chalwin はチャレンジ精神旺盛です。「退屈という感覚が思い出せません。まあ私は退屈が好きではないんでしょうね」と冗談めかして言います。Chalwin はこの 26 年間、好奇心を手掛かりに居心地の悪い環境でも居場所を確保してキャリアを積み、変化の速い業界でリーダーとして成長してきました。
彼女は自ら率いる 600 人のメンバーを家族のように思っていますが、どんなに忙しくても夫と 2 人の息子、そして 2 匹の犬を後回しにはしません。「私は教育熱心な母親であり、世界各地にいるさまざまな人のメンターですが、自分の家族やチームに接する時間や労力を犠牲にすることはありません」と、Chalwin は話します。そのため、夕食は必ず家族と一緒に摂る代わりに、オンラインでの取材では美容院で髪を整えず野球帽を被ります。すべて完璧にはできないとわかっているのです。
家庭でも仕事でも、最高の自分であるためには、時間をうまく管理するしかありません。たとえ朝 3 時に起きることになっても、一番早い飛行機で自宅に帰って、家族と過ごす時間を増やすでしょう。「幸運にも、私には素晴らしい夫がいます。彼がいなければ私の人生は成り立ちません。中途半端なことは絶対にしたくないので、あらゆることを計画的に考えています」。
その言葉に嘘はありません。Chalwin の Senior Executive Assistant である Graunya Holsen は、そのスケジュール管理術を目の当たりにしたといいます。その驚きは、Chalwin の取材中にわざわざ送ってくれたチャットメッセージにも表れていました。「彼女は常に家族の時間を確保する一方、仕事とチームにも全力を尽くしてるんです。自分の価値観に忠実に従い、境界線を守る姿勢を私は心から尊敬しています」。
「自らの評価を勝ち取るのは自分」だとよく言われますが、何か実践している方法があれば教えてください。
自分のキャリアのハンドルを握るのは自分です。人はよく、何もしなくても大きなチャンスがやってきてとんとん拍子にうまくいくのを期待しますが、それは大きな間違いです。自分が行きたい目的地までは、自分で運転しなくてはなりません。人に道を教えてもらうことはできますが、実際にハンドルを握るのは自分自身であり、その運命は自分で決めるしかないのです。つまり、私たちには自分の成果をきちんと主張し、意図的に野心を共有する責任があります。
少し時間を取って自分の力について考えてみましょう。あなたはどんな価値を提供していますか?私はよく、魂と給料の定義について話します。魂とは、自分がベストな状態の時に、自分を奮い立たせモチベーションを生む物事に専念する場所です。給料とは、いくら稼ぐかではなく、仕事を成し遂げるためにやらなければならないけれど元気も喜びも生まれないものです。
自分の魂、給料、能力を洗い出して考えてみると、自分が行きたい目的地をしっかり描き始められます。そのすべてがぴったりはまれば、あらゆる決断をする場面で、それが最終目的地にどう近づくか考えられるようになるでしょう。
これまでのキャリアを振り返ってみると、自分が大事にしている価値やリーダーとしてあるべき姿を追求し、人に対して自分がされて嬉しい行動を取ることが、まさに成功の土台となっています。
キャリアを歩むなかで、支えとなり力づけてくれた尊敬する女性は誰ですか?
私は女性リーダーたちを尊敬しています。強さと信頼性を見せ、自分自身で道を切り拓き、率直なフィードバックを恐れずに共有し、変化の担い手となった女性たちです。幸運にも私はキャリア通じて、世界中の女性リーダーたちと信頼関係を築くことができました。彼女たちはいつも本音で接してくれます。たとえ耳の痛い内容でも、怯まずにフィードバックしてくれるんです。
Salesforce では素晴らしい女性のロールモデルに囲まれています。毎日のように彼女たちからの助言を無料で受けられて、私は本当に恵まれていると感じます。彼女たちは、ほかの女性にも成功してほしいと願っているのです。私たちは、受けた恩をほかの誰かに返すことで、新たな女性リーダーを育てなければなりません。大切なのは、ほかの人がいつか自分もそうなりたいと憧れるような女性リーダーになることです。
これまでのキャリアで、うまくいった戦略や戦術を教えてください。
私はキャリアの非常に早い段階から、自分が最大限の価値を発揮できる場所に専念するようになりました。そしてすぐに、強力なパーソナルブランドを築く重要性に気づいたのです。これまでのキャリアを振り返ってみると、自分が大事にしている価値やリーダーとしてあるべき姿を追求すし、人に対して自分がされて嬉しい行動を取ることが、まさに成功の土台となっています。
興味を追求して柔軟な働き方を実現 : Future Forum の Sheela Subramanian
Sheela Subramanian のキャリアパスが一直線ではないことは、本人が一番よく知っています。何しろ面白いと思った機会を追求し、ほかの人にもそれを開いてきたからこそ、現在の彼女があるのですから。
もともと人権派弁護士を目指していた Subramanian は大学卒業後、電気も水道もないインド東部で非営利団体の活動に従事したあと、2004 年に Google に入社します。同社での 5 年間は情報へのアクセスをより多くの人に広げるべく、Google の世界的な展開に貢献しました。その後はビジネススクールに通い、修了後はあるスタートアップに幹部として入社したのです。それからの 5 年間は世界中を飛び回り、世界屈指の大企業が新興国や地域にインターネットアクセスを提供できるよう尽力しました。そんなある時、はっと思う瞬間が訪れます。
「妊娠 7 か月でインドネシア行きの飛行機に乗っていた時、もうこれ以上は無理だと思ったんです」。Subramanian は企業文化や製品を通じて、働く親をサポートしている企業で働きたいと考えました。そうすれば、仕事以外の部分でも喜びを見出せるからです。
「Slack を使うと、仕事とプライベートの境目が固定されず柔軟に対処できるようになったんです。ほかの製品だとそうはいきません」。これをきっかけに 2016 年に Slack に応募し、現在に至ります。ここまで紆余曲折を経たキャリアですが、そこには一貫したテーマがあります。それは、「社内外を問わず、大好きな仲間たちと面白いことを見つけて、根本的に難しい問題の解決に挑むこと」です。
昇進や評価サイクルにおいて、自分の成果を主張するコツを教えてください。
まず、自分自身の成長を記録することは本当に大切です。プロジェクトで成果を出したら、それをどこかに書き留めて、資料として残すようにしましょう。評価の時期や自分を振り返る時に、この 6 か月間に何をしたか頑張って思い出さなくても済むからです。また、その資料をリーダーに毎月共有するようにすれば、自分の成果を新鮮なうちに認識してもらえるようになります。
次に、仲間のネットワークを築きましょう。ほかの人を高めれば、あなたも高めてもらえます。第 3 に、自分の成果を主張することに罪悪感を抱かないでください。何も言い訳する必要はありません。「前にもお話ししたとおり、私はこういう成果を出しました。今後のキャリアの展望については、こんな希望があります」と言えばいいんです。 毅然とした態度で焦点をぶらさず、自分が望むものを明確にしましょう。また、味方になってくれる人を確保しておくのも大事です。
「間違えてもそこから学べばよいという環境を作れるかどうかは、リーダーにかかっています」
自分自身や自分の強みにより自信を持つためにできることは何でしょうか?
私はいつも、苦手なことに挑戦するようアドバイスしています。例えば、私は運動が得意ではありませんが、コロナ禍でテニスを習い始めました。週に 2 回、朝 6 時からボールを打ち返すよう大声で指示されています。友達からは、「どうしちゃったの?何でそんなことするの?苦手だったでしょう」と言われました。 でもこの挑戦によって、自分自身がコンフォートゾーンから押し出され、成長する意識が嫌でも身につくんです。さらに上達が目に見えると自身がつき、それは仕事にも役立ちます。
リーダーは、メンバーが成長できる機会を与えなければなりません。メンバーが無理だと感じているなら、うまくいくようリソースと予算を増やして期限を延ばしましょう。メンバーが成長できるようにすることこそ、リーダーの仕事だからです。多くの人は失敗を恐れ、最初からうまくやろうとします。間違えてもそこから学べばいいという環境を作れるかどうかは、リーダーにかかっています。そこにたどり着くために必要なサポートを提供し続けましょう。
Slack を Digital HQ として使っている今、実際に人、ツール、顧客、パートナーとどのようにつながっていますか?
私自身は Slack を使うことで、すばらしい働き方を実現できています。何と言っても、勤務時間を柔軟に調整できるからです。私のチームでは毎日 3〜4 時間のコアタイムを設定し、その時間で重要なトピックについてコラボレーションを行っています。それ以外の時間は、ジョギングをしたり、ボランティアをしたり、友人や親に会いに行ってもいいんです。9 時 5 時の勤務時間に囚われなくなると、さまざまなことができます。Slack には会社としても製品としても本当に感謝しています。私自身が自分に合う方法で柔軟に働けるだけでなく、チームメンバーにも同じ働き方を促進できるんですから。
さらに詳しく知りたい人へ :Subramanian が共同執筆した『How the Future Works:Leading Flexible Teams to Do the Best Work of Their Lives』をぜひお読みください(5 月 17 日に発売予定)。