現在の経済状況において、大企業との契約を成立させるのは簡単ではないでしょう。顧客企業は出費に消極的になるだけでなく、大幅な値引きを求めたり、最上級のサービスを期待したりするかもしれません。承認プロセスも複雑になりがちです。このような理由から、IT 業界全体で営業サイクルが長期化する傾向が見られています。
Slack の Account Executive for Large Enterprise を務める Jack Gibbs は、「顧客企業では、どんなものを購入する場合にも細かな点まで検討され、決定までに時間がかかるようになっています」と話します。「あらゆる投資がこれまで以上に慎重に精査され、比較的小さな案件にも多くの人が関わるようになっています。要するに、購入の決定に関わる人の数が増えているのです」。
一方、そのような企業に売り込む営業チーム側でも、財布の紐が堅くなっており、顧客との関係構築にあてられていた従来の予算が削られています。
このような買い手市場において、売り手側は何らかの方向修正が必要になるでしょう。そこで今回は、営業チームに役立ててもらえるよう、大企業を担当する Slack の営業担当者から、このような難しい市場状況での成約や顧客との関係構築に役立つベストプラクティスを集めてみました。
「かつての営業では、まず顧客とメールを送り合える関係になることが王道とされていましたが、Slack コネクトを始めとする効果的なテクノロジーによって、それをさらに高いレベルに引き上げられるようになりました」
営業担当者ではなくパートナーとして
ものをただ売りつけられるのが好きな人はいないでしょう。優秀な営業担当者にとっては常識だと思いますが、セールストークに入る前に、何らかの価値を提供して、見込み客の信頼を得ておくことが重要です。例えば、洞察に富んだ質問をしたり、ベストプラクティスや特定分野に詳しいメンバーを紹介したり、といったことです。
このような良好な関係を構築するために、Slack の営業チームが採用している効果的な方法の 1 つは、顧客や見込み客とのコミュニケーションを Slack コネクトチャンネルで行うことです。Slack コネクトにより、関係者とデータを 1 つのチャンネルに集めることができ、メールの堅苦しさや、言葉足らずなテキストメッセージによる誤解などを避けられます。
その仕組みは次の通りです。まず、営業担当者が、見込み客や顧客を Slack コネクトのチャンネルに招待します。招待が受け入れられ、管理者にも承認されると、チャンネル内でお互いにメッセージやファイル、クリップをやり取りできるようになります。ハドルミーティングを使って、すばやくリアルタイムに話し合うことも可能です。
「Slack コネクトを使って見込み客とコミュニケーションすることで、まるで自分のチームの延長であるかのように、パートナーと仲間としての深い関係を築けます」と Gibbs は言います。「対話をして、問題の解決に一緒に取り組めます。先方からのメールが届くのをじっと待っているようなことはなくなるのです」。
「Slack コネクトを使って見込み客とコミュニケーションすることで、まるで自分のチームの延長であるかのように、パートナーと仲間としての深い関係を築けます」
例えば、顧客からセキュリティについての技術的な質問があれば、Gibbs はすぐにメンション機能を使って、セキュリティエンジニアに会話へ加わってもらうといいます。また、成約間近になれば、契約手続きに必要な関係者をチャンネルに追加します。メンバーはチャンネルへの参加や退出を自由に行えます。チャンネルをスクロールして過去にさかのぼれば、これまでの話し合いや決定事項がわかり、ビジネスの関係がどのように進展してきたかを把握できます。
「大企業との契約には、双方から多くの人やチームが関わります。部門を超えてさまざまな業務が入り乱れるような複雑な仕事も、Slack コネクトによってずっと簡単かつスピーディーに進められるのです」と Gibbs は話します。
メールでやり取りしたり、会議を調整したりして、何日も何週間もかかっていたことが、わずか 1 日で行えるようになります。実際、顧客と Slack コネクトで連携している企業では、対応時間が 60% スピードアップしています。
絵文字で親しみやすく
これまでの営業活動では、顧客とのやり取りに絵文字を使うことを控える傾向がありました。でも Slack では絵文字をどんどん使っています。
「契約までのプロセスでは、顧客とのやり取りが頻繁に発生します」と話すのは、Slack で Senior Account Executive for Large Enterprises を務める Elin Hollis です。「Slack を使ったコミュニケーションは形式張らず、会話的なので、応答がすばやく返ってきます。絵文字を使うことで気持ちのニュアンスが伝わり、メッセージを送るハードルも下がります」。
例えば、「ご確認のためにご連絡いたしました」といった同じような文面のメールを繰り返し見込み客に送る代わりに(経験ありますよね)、Slack では 👋 のような絵文字を添えた温かみのある確認のメッセージを送ることができます。
「契約を結びたいと考えているお客様も、ほかにいろいろと仕事を抱えています。必要な手続きすべてをクリアするのに気が進まないこともあるでしょう」と Hollis は言います。「そんな時でも Slack でメッセージを送れば、メールよりも気軽に話せる雰囲気を作れます。👋 などの絵文字と簡潔なメッセージで、礼儀を損なわず、かつ効果的に、必要事項を確認してもらえるよう促すことができるのです」。
Slack の営業チームでは、チャンネル内ですばやく意思決定をするためにも、絵文字を活用しています。例えば、担当者がタスクを完了したり問題を解決したりした際には ✅で、確認中の場合には 👀 を使って、ほかのメンバーに状況を知らせます。このような方法は、プレッシャーのかかる場面で心理的な負担を軽くすることにも役立ちます。
また、Hollis は顔写真と動く背景を使ったカスタム絵文字を作って、顧客に楽しんでもらっていると言います。
「Slack 社内の伝統として、誰かが商談を成立させたというような特別な機会があると、その人の写真に Wow という言葉を添えたカスタム絵文字を作って贈る習慣があります。それをお客様向けにも作っているんです。パートナーになっていただいたことへの感謝を伝えるための、ユニークで親しみやすい方法だと思います」。
承認者からの同意を得やすく
家を買う時と同じように、大企業との契約では、何度も承認手続きを経る必要があります。よくあるのは、法務、財務、エンジニア、営業といった各部門のマネージャーから承認を得なければならないケースですが、多くの場合、マネージャーたちはほかにも多くの案件を同時に扱っているはずです。
そのため、いざ承認をしようと思った時に、都度、その案件に関連する情報をすべて探し集めて状況を把握しなければならず、それが承認プロセスに時間がかかる大きな理由になっています。このような情報を収集するには、通常、複数のアプリを切り替えなければなりません。また、さまざまな人に向けて同じ情報を繰り返し説明するのにも、貴重な時間が費やされます。
そこで Slack の社内では、営業チームがビジネステクノロジーチームと協力して「成約承認ボット」を作成しています。承認プロセスの一部を自動化するこの仕組みにより、時間を大幅に節約できます。Hollis が「商談成立の立役者」と評するこのカスタムボットによって、 Slack の営業チームでは承認サイクルが 70% スピードアップしました。
「カスタム承認ボットは商談成立の立役者です」
その仕組みは次の通りです。担当者は、新規契約を承認ルートに乗せる準備が整うと、Salesforce 内で「Slack での承認に送る」ボタンを押します。すると、承認ボットによって Slack 内に専用のチャンネルが自動作成され、Salesforce 内の顧客情報と、関係する承認者がそこに集められます。そしてボットが、契約条件を確認する順番が回って来た承認者に、順次通知を送ります。承認者はチャンネル内でそれまでの経緯を確認できるため、全員で同じ認識を共有し、時間も節約できます。
鉄は熱いうちに打て、というように、商談も時間が勝負です。紹介した承認業務の自動化以外にも、営業チームは、さまざまな形で Slack プラットフォームの自動化機能を利用して、営業活動にかかる時間を大幅に短縮できます。
チーム営業で大型案件を成約に導く
景気がよい時でも、大企業案件の成約には多くの人の協力が欠かせません。経済状況が下降している時には、なおさら全員の動くスピードを上げられなければ、チャンスを失ってしまうかもしれません。契約に至るまでの長いプロセスをスムーズに進めるには、関係者全員ですばやく認識を共有する必要があります。
Slack を営業部門の Digital HQ として活用すれば、担当者は顧客との人間味のあるやり取りを通じて、ほかとは一味違う関係を築けるでしょう。それが商談のスピーディーな成立につながっていくはずです。