近年、チームマネジメントの重要性が高まっています。これまでも、リーダーやマネージャーがチームを「管理する」ことの重要性が指摘されてきましたが、個々人の価値観や働き方が多様化しているため、チームをまとめ上げるのは困難になりつつあります。
今回は、チームマネジメントの意義や目的、必要なスキルなどについて解説します。チームマネジメントに有効なツールもご紹介しますので、ぜひ理想的なチームづくりに役立ててください。
チームマネジメントとは生産性を高める手法
チームマネジメントとは、チームに属する個々のメンバーが能力を発揮しやすい環境を整え、チーム全体の生産性を高める手法のことです。マネジメントを直訳すると「管理」ですが、単にメンバーを管理して統率することだけを指しているわけではありません。
チームをまとめていくにあたって、リーダーが果たすべき最も重要な課題は「目標達成」です。 1 人では実現が難しい大きな目標を達成することが、チームの存在意義といえます。そこで、リーダーはいかにチーム全体の生産性を高め、目標を達成していくかを考えなくてはなりません。
しかし、リーダーがメンバーに対して逐一指示を与えていては、チームの生産性を高めることは難しいでしょう。メンバーが目標達成に当事者意識を持ち、主体的に動けるチームにしていくことがリーダーの役割といえます。
チームマネジメントが重要な理由
チームマネジメントが重要とされる主な理由は、「メンバーの能力を引き出すため」「アイデアを創出するため」「生産性を維持するため」といった 3 点が挙げられます。
メンバーの能力を引き出すため
チームの生産性を向上させるには、メンバー各自の生産性向上が必須です。メンバーにとって働きやすい環境を整え、各自が能力を発揮しやすい状況を作っていくことは、リーダーとして重要な役割となります。
アイデアを創出するため
消費者のニーズが多様化・細分化しつつある現代において、優れたアイデアの創出は急務となっています。アイデアを創出するには、チームに属するメンバーが共通の目標に向かってアイデアを出し合うことが大切です。チームの方向性を一致させ、メンバーが協力し合える環境を整える必要があります。
生産性を維持するため
労働人口が減少していく中、生産性を維持することは企業にとって重要な課題です。限られた人材を最大限に活用するためにも、チームの結束力を強化していくことが求められています。
チームマネジメントの目的
チームマネジメントへの理解を深めるには、その目的を把握しておく必要があります。チームマネジメントの主な目的を整理しておきましょう。
仕事の成果を出せるチームを作り上げること
理想的なチームの姿として、「効率良く仕事を進められるチーム」や「雰囲気の良いチーム」などが掲げられることがあります。こうした理想像を設定することは、チームマネジメントにおいて重要な要素です。
しかし、最終的な目的は、「仕事で成果を出すこと」であることを忘れてはなりません。着実に成果を出せるチームを作り上げることが、チームマネジメントの重要な目的なのです。
生産性の向上(働き方改革・人材不足解消・効率化)
チーム全体で成果を上げていくには、メンバーにとって働きやすい環境が整っていることは必須条件です。昨今は働き方改革が進められており、長時間労働は敬遠される傾向があります。また、人口減少に伴って人材採用が難しくなっており、いかに効率や生産性を高めるかが重要なカギを握っているのです。生産性を高めることも、チームマネジメントの目的といえます。
イノベーション創出
商品が市場に行き渡り、飽和状態にあるといわれている現代社会では、物を作って市場に出すだけでは、売れません。そこで、消費者が潜在的に求めている商品を企画・開発するには、イノベーションの創出が必須となります。
メンバーが自由に意見を出し合い、ブラッシュアップできる環境を整えることもチームマネジメントの目的です。
従業員エンゲージメントのアップ
働きやすい環境を整え、メンバーが各自の能力を発揮できる状況を作っていくことで、チーム全体のパフォーマンスが向上します。仕事で成果が出るようになれば、やりがいを見いだすメンバーも増えていくでしょう。結果的に従業員エンゲージメントが向上し、離職率の抑制にもつながるのです。従業員エンゲージメントのアップは、チームマネジメントに取り組む重要な目的といえます。
チームマネジメントのポイント
効果的なチームマネジメントを実践するには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。リーダーからメンバーへの一方的な働きかけに終始しないためにも、次のポイントを押さえてチームマネジメントに取り組みましょう。
目的や情報を共有する
一体感のあるチームを作るには、メンバー間で取り組むべき仕事の目的や必要な情報が共有されていることが重要です。目的が不明確な状態のまま仕事を進めていると、「指示されたことだけをこなす」「機械的な流れ作業と捉える」といったことにもなりかねません。何を目指して目の前の仕事に取り組んでいるのか、メンバーに目的を明確に示すことが大切です。
また、業務に必要な情報が十分に共有されていないと、メンバーは的確な行動を選択できません。情報を開示・共有し、特定のメンバーに情報が偏ることのないように留意しましょう。
信頼関係を構築する
メンバーがお互いに安心して仕事に取り組める環境を整えることも重要なポイントです。意見を述べたとしても「批判や否定をされることはない」と思える信頼関係を日頃から構築しておかなければ、有益な意見は挙がってこないでしょう。リーダーとメンバー、さらにはメンバー同士がお互いを尊重し、相談し合いながら高め合うことのできる関係を築いていく必要があります。
コミュニケーションを深める
チーム内で円滑にコミュニケーションを図れることは、生産性を高めるうえで重要なポイントといえます。少しの行き違いや誤解が生じると、業務が滞る原因になりやすいからです。業務に関するコミュニケーションを深めるには、日頃からお互いに言葉を交わしやすい環境になっていることが必須となります。業務上、必要なミーティングだけでなく、 1 on 1 や面談を通じてメンバーの性格や考えを知っておくことが大切です。
プロセスを重視する
優れた成果を上げるには、メンバー各自が努力の方向性を誤らないことも重要なポイントとなるでしょう。そのためには、成果だけを見るのではなく、成果に至るプロセスを重視したマネジメントを実践する必要があります。プロセスを重視するチームであることが伝われば、メンバーも仕事のプロセスを丁寧に考えるようになるはずです。
チームマネジメントに必要なスキル
効果的にチームマネジメントを実践するには、複合的なスキルが求められます。特に重要度の高いスキルは、「目標設定力」「スケジュール管理能力」「タスク管理能力」「コーチング力」「コミュニケーション能力」の 5 つです。
目標設定力
企業には経営理念や事業方針があり、それらを部署単位に落とし込んだものが、チームのミッションとなります。しかし、企業全体の事業方針はテーマが大きすぎることも多く、現場で業務に携わるメンバーが具体的に何をするべきなのかがわかりにくい場合もあるでしょう。チームで達成するべき目標として行動レベルに落とし込み、メンバーに提示する目標設定力が求められるのです。
また、チーム全体としての目標だけでなく、メンバーの長所や強みを活かせる目標を掲げ、達成に向けて注力できる状況を作っていくことも必要です。
スケジュール管理能力
掲げた目標の達成に向けて、何をいつまでにやるべきなのかを具体的に示すことも重要です。目標から逆算して業務計画を立て、計画に沿って業務が進んでいるかを管理する必要もあります。計画に対して遅れが生じた場合は遅れている原因を突き止め、早めに軌道修正を図ります。
中長期の目標の場合、目標を完全に達成するまでには長い期間を要することも珍しくありません。途中に複数のチェックポイントを設け、進捗状況を確認していくスケジュール管理能力が求められます。
タスク管理能力
スケジュールが滞りなく進むかどうかは、日々のタスク管理にかかっています。メンバーがこなすべきタスクを着実に処理できているか、随時確認していくことが重要です。
タスク管理能力とは、タスク完了報告を漏れなくチェックする能力のことではありません。業務を進めるうえで課題となっている点を抽出し、問題解決にあたる能力も含まれます。チーム全体を俯瞰しつつ、メンバーの動きを注意深く観察する洞察力が求められるのです。
コーチング力
チームに属するメンバーの能力や得意・不得意は、十人十色です。期待するレベルのパフォーマンスが必ず発揮されるとは限りません。メンバーが苦手とする業務や改善が必要な行動に対しては、正しく指導するコーチング力が求められます。
ただし、ミスを指摘されたり、不得意なことができないと責められているとメンバーが感じたりしていると、モチベーションが低下する原因になりがちです。メンバー各自の得意なことや長所を伸ばす指導も織り交ぜ、チーム全体のモチベーションを高めていきましょう。
コミュニケーション能力
ここまでに挙げた 4 つのスキルを効果的に活かすには、チーム内でコミュニケーションの土台が築かれている必要があります。コミュニケーションにおいて重要なポイントは双方向性が保たれていることです。一方的な目標・スケジュールの提示や、メンバーの動きを監視するような進捗管理では信頼関係は築けません。
コミュニケーションを活性化するための条件として、リーダー自身が傾聴力を伸ばしていくことは必須です。日頃からメンバーの声に耳を傾け、誠実に対応していくことで双方向のコミュニケーションが成立します。
チームマネジメントに有効なツール
チームマネジメントを効果的に実践していくには、ツールを活用する方法もあります。ツールを活用することで、効率的にチームマネジメントを実行できるでしょう。ここでは、チームマネジメントに有効活用できる主なツールをご紹介します。
プロジェクト管理ツール
スケジュール管理を適切に行うためには、プロジェクトの進捗状況がいつでも確認できるようにしておくことが重要です。プロジェクト管理ツールを活用すれば、プロジェクトの全体像と現状の進捗状況を随時確認することができます。
プロジェクト管理ツールには、ガントチャートや進捗報告の機能を備えたものも多く見られます。メンバー各自が担当業務の進捗状況を報告し、リーダーは報告をもとに全体の進捗状況を把握していけばいいのです。
タスク管理ツール
メンバー各自のタスク管理を行うには、タスク管理ツールを活用するといいでしょう。 To Do リストを共有できるようにしておき、タスクの優先順位や現状の完了状況を随時確認します。これにより、必要に応じて優先順位や進捗状況についてヒアリングを実施するなど、全体の進捗が滞ることのないよう先手が打てるのです。
また、タスク管理ツールは業務の割り振りにも役立ちます。メンバー各自が抱えている業務量や現状の進捗状況をタスク一覧で確認し、業務の負担が大きいメンバーを見分けることができるからです。
グループウェア
情報共有の負担を軽減するには、グループウェアを活用する方法もおすすめです。チーム内で閲覧・投稿できる掲示板を設置し、チーム全体への連絡事項を記入することができます。また、事例の共有には社内 Wiki を活用する方法も有効です。ノウハウを蓄積することにより、過去の事例をメンバーが確認して各自で判断・行動できるようになります。
グループウェアには、プロジェクト管理ツールやタスク管理ツールが備わっているものもあります。個々のスケジュール管理をしつつ、全体向けの連絡やノウハウの蓄積にも活用したい場合は、グループウェアの導入を検討するといいでしょう。
ビジネスチャットツール
チーム内のコミュニケーションを活性化させるには、ビジネスチャットツールの活用が有効です。あえてメールを送るほどの用件ではない場合も、短文でのやりとりがしやすいチャットなら気軽にコミュニケーションを図ることができます。
ビジネスチャットツールとして Slack を導入すると、プロジェクト管理ツールやタスク管理ツール、グループウェアなどと連携させることも可能です。チャットによる双方向のやりとりが生まれ、各ツールをより効果的に活用できるでしょう。特に、リモートワーク(テレワーク)のようにお互いの顔が見えない環境下では、ビジネスチャットツールの活用がコミュニケーションの促進に効果を発揮します。
チームマネジメントで成果を出せるチームを構築しよう
チームマネジメントは、メンバーを管理するというよりは、チーム全体の生産性・創造性を高めるための施策です。リーダーとして担うべき役割を把握し、チーム全体を俯瞰しつつメンバーをきめ細かくフォローしていくことが求められます。
今回解説してきたポイントを参考に、ぜひ成果を出せるチームの構築に取り組んでください。活気のあるチームを醸成していくことで、チーム全体のパフォーマンスをいっそう高めることができるはずです。
よくある質問
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