マーケティング施策の成否を分けるポイントのひとつに、顧客の行動や心理に対する理解度の高さが挙げられます。顧客を深く理解することによってニーズに合った施策を講じることが可能になるからです。
今回は、顧客理解を深めるために活用される「カスタマージャーニー」について、わかりやすく解説します。カスタマージャーニーを活用するメリットや具体的な作り方、作成時の注意点を紹介しますので、ぜひマーケティング施策に役立ててください。
カスタマージャーニーとは、ペルソナの行動を可視化したもの
カスタマージャーニーとは、「Customer(顧客)」と「Journey(旅)」を組み合わせた言葉です。顧客にとっての旅とは何を意味しているのか、カスタマージャーニーの定義と具体的な活用方法について見ていきましょう。
ペルソナの行動を時系列で見える化したもの
カスタマージャーニーとは、ペルソナの行動を時系列で見える化したものです。顧客が商品の存在を知り、購入を検討したうえで実際の購入に至るまでを旅になぞらえています。
カスタマージャーニーは、購入をゴール地点に設定する概念でありません。購入後に継続購入したり、リピート購入の意思決定を下したりするまでのあらゆる顧客体験を含む概念です。
カスタマージャーニーはマップで表される
消費者が商品を認知し、購入やリピート購入に至るまでの道筋は、ひとつだけとは限りません。情報収集や比較検討など、紆余曲折を経て商品購入の意思決定に至るケースも多くあります。
そうした顧客が商品購入に至るまでにたどる道筋のあらゆるパターンを想定し、見える化したものを「カスタマージャーニーマップ」といいます。
旅行をする際、目的地を目指す道順や交通手段が複数考えられるのと同様に、商品の購入やリピート購入に至るまでの軌跡は何通りも想定できるでしょう。購入の意思決定までに消費者がふれる情報や、情報に接した際に抱く感情、それによってもたらされる行動を可視化したものがカスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーを作成するメリット
カスタマージャーニーを作成することで、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリットとして、次の 4 点が挙げられます。
顧客を理解できる
カスタマージャーニーを把握することは、顧客理解を深めることにつながります。顧客が何を感じ、どのような行動をとるかを、あらかじめ把握しやすくなるからです。
マーケティング施策には多種多様な手法がありますが、施策を講じる側の視点で設計されたフレームワークも少なくありません。ですから、フレームワークに沿って施策を講じたとしても、顧客が想定外の行動をとる可能性は十分にあります。カスタマージャーニーを作成することで、顧客視点で行動や心理、感情をイメージしやすくなるのです。
顧客目線で発想できる
カスタマージャーニーを通じて、顧客目線での発想がしやすくなります。自社の商品・サービスを客観的に分析・評価するのは、容易なことではありません。企画・開発などに携わった側の思い入れや願望が混在しやすく、強みやメリットを過信する原因にもなりかねないからです。
そこで、カスタマージャーニーを作成することで、顧客目線による自社の商品・サービスの客観的な分析につながります。商品・サービスの強みや弱点を再確認したり、魅力を再発見したりするのに役立つでしょう。
マーケティング活動における意思決定が的確になる
マーケティング活動においては、講じた施策が始めから期待通りの成果をもたらすとは限りません。PDCA サイクルを回して改善を図りつつ、着実に KPI を達成していく必要があります。
カスタマージャーニーを作成することで、マーケティング活動のフェーズごとに講じるべき施策を判断しやすくなります。結果として意思決定が的確かつ迅速になり、PDCA サイクルをより高速で回すことにもつながるでしょう。顧客が商品・サービスにたどり着くまでの経路をチーム内で共有しやすくなるため、施策の共通理解を図ることも容易になるはずです。
ブランドの価値を向上させることができる
カスタマージャーニーの作成は、ブランド価値の向上にも寄与します。顧客とのあらゆるタッチポイントを想定したうえでカスタマージャーニーマップを作成することで、細部にわたって顧客体験を損なわないための配慮がしやすくなるからです。
例えば、あるブランドのファンにとって、商品が醸し出す高級感がリピート購入の決め手となっていたとします。しかし、この顧客心理の理解が不足していると、より多くの消費者に購入してもらうために安易な値下げキャンペーンを打ってしまうかもしれません。すると、既存顧客はブランドの持つ高級感が損なわれたと感じ、顧客離れを招く原因にもなりかねません。
ブランド価値を維持・向上させていくためにも、カスタマージャーニーを把握しておくことは重要なポイントといえます。
カスタマージャーニーの作り方
カスタマージャーニーを作成するにあたっては、必要な情報を事前に整理しておく必要があります。次に挙げる情報がそろった状態で、カスタマージャーニーの作成に着手しましょう。
情報がそろったら、下記の手順でカスタマージャーニーを作成していきます。
1. ペルソナの設定
年齢・性別・居住地・職業・趣味・ライフスタイルなどのほか、抱えている課題や商品購入を通じて課題をどう解決するかを、具体的に設定しましょう。
2.フェーズの設定
商材や事業内容に合わせてフェーズを設定します。商品やサービスによっては、ペルソナが情報収集や比較検討する期間のほか、購入後に継続利用やリピート購入に至るまでのフェーズを含めます。
3. ペルソナの行動・感情・思考の洗い出し
フェーズごとにペルソナがとる行動や、抱くと予想される感情・思考を洗い出します。タッチポイントによって異なるパターンが想定されるため、考えられるすべてのケースを洗い出しておくことが大切です。
4. 課題・施策の洗い出し
ペルソナが抱える課題に対して、適切な解決策を提供できる施策を決定していきます。企業側の都合で決めるのではなく、ペルソナの視点に立って施策を講じるのがポイントです。
5. 改善・軌道修正
施策の効果を測定し、改善点を洗い出します。改善を要するポイントを施策に反映し、「3」〜「5」を繰り返すことで PDCA を回しましょう。このサイクルを繰り返すことで、施策の精度が高まっていきます。
カスタマージャーニーは本当に古いのか?
カスタマージャーニーは、消費者・顧客の行動が多様化の一途をたどっている現代には、適さないといわれることがあります。果たして、カスタマージャーニーはすでに過去のマーケティング施策となってしまったのでしょうか。
近年は、顧客がウェブを通じて容易に情報を収集できるため、顧客の行動は直線ではなく、螺旋状になる傾向があります。さまざまな情報にふれる中で紆余曲折を繰り返し、購入に至っているのです。
直線よりもタッチポイントが増えるため、企業にとって、フェーズごとのユーザーの行動に着目し、適した施策を講じていく重要性は、むしろ高まっているといえます。
また、ユーザーが意思決定に必要以上の時間を要している場合、購入を阻害する何らかの要因があることも考えられます。
顧客の視点に立って阻害要因を分析するためにも、カスタマージャーニーを適切に活用することは重要なポイントであり、決して「古い手法」「不要になった手法」ではないのです。
カスタマージャーニーを作る際の注意点
カスタマージャーニーを作る際、意識しておくべき注意点を確認しておきましょう。カスタマージャーニーを活用するためにも、下記の点を押さえておく必要があります。
企業の願望を反映しすぎない
カスタマージャーニーは、顧客目線で作成することが大前提です。企業の願望が反映されてしまうと、「顧客はこうあるべきだ」「このような行動をとるはずだ」といった独りよがりのカスタマージャーニーが出来上がるおそれがあります。
実態に即したカスタマージャーニーを作成するためにも、できるだけデータにもとづいて顧客行動を判断し、データがない場合は仮説を立てたうえで検証を行うようにしましょう。
時間をかけすぎない
カスタマージャーニーには、顧客がたどると予測されるすべてのパターンの経路を反映させることから、作成には相当な時間を要します。しかし、カスタマージャーニーの作成自体が目的ではないことから、時間をかけすぎないよう、計画的に進めることが大切です。
あらかじめ作成計画を立て、適切な時間配分で完成させる必要があります。
定期的にカスタマージャーニーを見直して施策の修正を検討する
顧客の行動や心理・感情は流動的です。商品やサービスのリリースから経過した期間や他社商品の台頭をはじめ、市場環境やトレンドの変化など、複数の要因によって顧客が変化することは十分考えられます。
作成したカスタマージャーニーを使い続けるのではなく、定期的に見直して施策の修正を検討することが大切です。
カスタマージャーニーの作成に Slack を活用しよう
カスタマージャーニーを作成する際には、チームでの協力が欠かせません。コミュニケーションツールのSlack を活用して、チームでのコラボレーションを円滑にしましょう。
カスタマージャーニーを作成する CX プラットフォームと連携ができる
カスタマージャーニーを作成する際には、顧客体験の分析・検証に役立つ CX プラットフォームを活用するケースが多いのではないでしょうか。
CX プラットフォームの CX とは、 Customer Experience の略で「顧客体験」と訳されます。 CX プラットフォームとは、ユーザーの行動を分析したり、ウェブやアプリで接客ができたりするなど、 CX 向上を目指すためのツールといえるでしょう。
Slack は、各種 CX プラットフォームと連携できるため、ツールに関する通知を Slack 上で受け取ることができます。通知を随時見逃すことなく作業を進められれば、タイムリーな情報を取り入れやすくなり、より正確性の高いカスタマージャーニーを作成することが可能です。
カスタマージャーニーで得た結果・分析を共有しやすい
Slack は 1 対 1 のダイレクトメッセージ以外にも、豊富なコミュニケーション方法を提供しています。ファイルの共有はもちろんのこと、グループチャットやハドルミーティング、ビデオ会議などのコミュニケーション手段を選択可能です。カスタマージャーニーで得た結果や分析に関する情報を共有する際にも、こまめにコミュニケーションをとることで、チームでの共通認識の形成や意思決定がしやすくなるでしょう。
Slack canvas でカスタマージャーニー作成に利用したデータをまとめて保管できる
前述のとおり、カスタマージャーニーは、施策を講じながら PDCA サイクルを回していく中で、必要に応じて改善していかなければなりません。その際に、カスタマージャーニー作成に必要なデータが社内でバラバラに存在していると、データは最新の状態で保管されているのか、そもそもどのデータを利用したのか、わからなくなってしまう可能性があります。
しかし、 Slack の新機能である Slack canvas なら、カスタマージャーニーを作成するために利用したデータをドキュメントとしてまとめて保管・共有・共同編集できます。Slack canvas は単独のメッセージ、またはチャンネルに紐付けることができるため、検索に手間や時間がかかることもありません。また、Slack canvas に保管したデータは、Slack 上で閲覧・編集も可能です。
送受信するデータの保護
Slack は、グローバルスタンダードのセキュリティレベルを備え、送受信するデータは初期状態ですでに暗号化されています。
監査ログやデータ損失防止プロバイダーとのインテグレーションにより、やりとりするデータを高いセキュリティ性によって保護できるのです。顧客に関する秘匿性の高い情報も、安心・安全にやりとりすることができます。
カスタマージャーニーを作成して顧客理解を深めよう
カスタマージャーニーは、ユーザーの行動や心理・感情を顧客視点で分析し、フェーズごとに適切な施策を講じるうえで不可欠な施策です。顧客理解を深め、ブランド価値の向上を図るためにも、カスタマージャーニーを有効活用しましょう。
今回ご紹介したカスタマージャーニーの作り方や作成時の注意点を、ぜひマーケティング施策に活用してください。カスタマージャーニーを起点に、いっそうのサービス向上や施策改善の実現へとつながっていくはずです。
よくある質問
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