「組織有効性」は中身のない流行語のように聞こえるかもしれませんが、企業の成功を測る指標として重要性が高まっている概念です。実際、最近の関心の高まりを受けて、その導入に関する認定プログラムを提供する大学もあるほどです。
組織有効性とは、基本的には、企業がビジネス目標をどれほど徹底的にかつ効率的に達成できるかを測る概念です。有効性の高い組織は、適切に設計され潤滑油が行きわたった機械のように機能します。各可動部がスムーズに連携し、資源や時間を無駄にすることなく、ビジネスが目指す成果を生み出します。
本記事では、なぜ組織有効性が重要なのか、そして、より効率的なパフォーマンスを実現するために、リーダーはどのような施策を講じることができるのかについて、解説します。
組織有効性とは何か?
組織有効性とは、組織がいかに自己認識を達成しているかを示すものです。組織有効性は、次のような要素によって実現されます。
- リーダーが従業員のために明確な目標を設定し、その目標を効率的に実行する方法を示すこと
- 経営幹部が、明確な意思決定プロセスとコミュニケーションの経路を確保すること
- 厳選された従業員が、適正な報酬を受け、意欲的に仕事をして成果をあげること
組織有効性が重要なのはなぜか?
組織の有効性が高いほど、長期的に生き残り、繁栄する可能性が高くなります。Bain & Company の調査が示すように、組織有効性は、会社をより効率的にすることを目的とした「反復的な取り組みのサイクル」では達成できません。その行動が学習され、日々の業務と継続的な評価に組み込まれる必要があります。
この調査では、組織有効性に対する継続的なコミットメントと、コスト削減を目的とした一時的な取り組みとの違いについても説明しています。前者は、体によい食事をして定期的に運動をするという健康的な習慣に例えられます。一方、後者は極端なダイエットに近いものです。短期的には効果があるかもしれませんが、「長期的な変化に耐え抜くための筋肉をつける」ことはできません。
有効性を優先することは、会社の健全性や顧客満足度を損なうことではありません。Bain & Company の同じ調査によると、「効率を重視する企業では『コスト削減努力が成長の阻害要因ではなく、むしろ成長を促す要因になった』と答える割合が 4 倍になり、さらに、カスタマーエクスペリエンスが改善されたとする割合は 4.5 倍に達している」とされています。
リーダーが長期的な組織有効性を生み出すための 5 つの方法
Bain & Company の調査では、成功した企業が組織有効性を実現するために取り組んだ 5 つの主要分野が示されています。
- 戦略
- 指標
- コミットメント
- 行動
- 企業文化
調査では「これらの分野に粘り強く取り組み、継続的な投資を行うことによって、成功する可能性が最も高くなる」とされています。
1. 戦略
戦略としては、組織の中心的なアイデンティティ、つまり、リーダーが組織の目的や目標を社内外にどう説明するかという点に、有効性や効率性をコアバリューとして組み込んでいくことがポイントになります。市場からも従業員からも「有効」「効率的」と評価される企業になるほど、その価値があらゆる新規プロジェクトや目標に組み込まれていきます。
組織有効性は、企業の長期目標をシンプルに、かつ明確にするものでなければなりません。この目標が戦略レベルで明確になっているほど、部門の垣根を越えて浸透しやすくなります。
2. 指標
組織有効性を指標を用いて測定することは、組織の責任ある取り組みを実現する上で重要です。同時に、適切なデータを用いて測定することや、分析が困難なデータについて人間の判断や議論を重視するタイミングを知ることも、同じくらい重要です。組織が取り組みに着手する際には、次のような問いが役立ちます。
- 各チームは具体的にどのような目標を持って取り組んでいるのか?
- チームリーダーはそれらの目標を明確に説明しているか?
- どのように、またどれくらいの間隔で、進捗状況を評価するのか?
ノースカロライナ大学による有効性に関するレポートは、組織が定期的な評価を通じて自らの公正性を保っている好例です。そのレポートには、組織の重点戦略、役割の明確化を促す取り組み、一般管理部門の組織設計の改善に向けた提言などが記されています。
3. コミットメント
Bain & Company の調査では、「強力なエグゼクティブスポンサーシップは、成功の要因としても、失敗の要因としても、頻繁に挙げられるものである」とされています。調査結果として強調されているのは、全社的なコミュニケーションや人材採用の手法から、四半期ごとの予算会議の進め方に至るまで、シニアリーダーによる有効性施策への「目に見える、信頼できるコミットメント」が、組織全体にトリクルダウン効果をもたらすという点です。
4. 行動
ただ、同じことの繰り返しが続けば、組織有効性の実現への取り組みにほころびが生じてしまいます。日々の業務の中で具体的な意思決定の瞬間を特定し、その場面でどのように行動を変えるべきかを従業員に伝え、その選択を促す仕組みを導入することで、自らの有効性を自ら律する、より健全な組織を構築できます。
5. 企業文化
最後に、従業員がどれほど意欲的に仕事に取り組んでいるかで、仕事の有効性が決まります。そのため、有効性を重視する企業文化を作ることが重要です。
ビジネススクールからコンサルティング会社まで、数多くの機関による研究調査により、従業員エンゲージメントと組織全体のパフォーマンスの間に(因果関係とまでは言えないにしても)相関関係があることが示されています。よく引き合いに出される Gallup の調査結果によると、意欲の低い労働者は、雇用主にその賃金の 3 分の 1 以上のコストを生じさせており、生産性の低下により、全体として米国経済に 6,000 億ドル以上の損失を与えている可能性があると示唆されています。
つまり、財務的な側面から見ても、企業文化に着目し、従業員エンゲージメントに優先的に取り組むことは、組織有効性を企業の DNA に組み込むための最良の出発点となります。