マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置く HubSpot は、職場文化の構築に多くの時間を投資している企業です。この企業バリューは、同社の128ページに渡るスライドプレゼンテーションにも見て取れます。このスライドは、LinkedIn の SlideShare で400万回以上のビュー数を獲得しました。
HubSpot のチーフ・ピープル・オフィサー、Katie Burke 氏の目指す企業文化の水準は高いものです。「従業員みんなに幸せに働いてもらいたいと思っています。毎日オフィスに来るのが楽しくて待ちきれないくらいに。そのレベルまで、企業文化を高めていきたいと考えています。」
実際に、そうした投資は目に見える成果を生み出してきました。インバウンドマーケティングと営業向けのソフトウェア会社である同社は、常に「働きやすい会社」ランキングのトップに名を連ね、新たな才能を多数惹きつけています。同社の従業員規模は2008年の50人から現在の2,500人へと大きく拡大しました。ポーツマス、ダブリン、ベルリン、東京、シドニー、シンガポールとボゴタに開設された海外オフィスには、今年、パリが加わる予定です。グローバル規模で採用を積極的にすすめています。
そんな状況で、拠点や役割、勤続年数に関係なく、有意義なつながりを育み、本当の意味での「HubSpot 文化」を創り上げていくことの重要性が今まで以上に高まっています。Burke さんは、世界中でのコミュニケーションとコラボレーションを促進する、直感的に使えて適応がスムーズなツールを必要としていました。そんな中で浮上したのが、Slack でした。
「Slack があれば、いつでもサポートしてくれる2,500人の仲間とすぐにコミュニケーションが取れるので、従業員が1つの大きなコミュニティの一員であるという意識を持つことができます。」
Slack で人と人との「真のつながり」を促進
HubSpot の文化と従業員体験を製品に例えるなら、Burke さんの役割はプロダクトマネージャーということになります。
「HubSpot に入社すべき、そしてその後も当社で働き続けるべき理由を説得力のある形で提示したいと考えています。」と Burkeさん。これには、各地のチームと経営陣に投資し、HubSpot の文化に適合するのではなく、その文化を創り上げていくよう促す取り組みが必要になります。こうした適応戦略の実現は簡単なことではありません。そうした意味で、Burke さんの役割は非常に重要なものです。「この役割に就けてとても光栄に思っています。世界中の HubSpot メンバーが当社の一員であるという意識をもち、会社がメンバーとともに成長していくための革新的な方法を見出すためのサポートができるのですから。」と彼女は説明します。
HubSpot の文化を支える Slack の活躍は新入社員の入社第一日目から始まります。入社一日目は緊張することも多いものですが、「Slack を使って研修期間中次の行動を促す通知を送信したり、入社に至った理由をリマインドするようにしています。」Burke さんはそう付け加えます。チームのリーダーは、新入社員に知らせたい情報がベストなタイミングで届くようにボットをカスタマイズして利用しています。入社に伴う手続きが完了すると、Slack 通知が次の方法でサポートしてくれます。
- 新入社員に入社初日に確認しておくべき書類をリマインド
- 従業員リソースグループへ新入社員を紹介
- 開催予定の HubSpot での社内活動を通知
同社に入社すると、HubSpot のコアバリューである「透明性」がたちまち見えてきます。例えば、共同創業者の Dharmesh Shah さんに質問したいときも、Slack でダイレクトメッセージを送ればすぐに連絡が取れます。同社では、こうした経営陣と現場の従業員との直接のコンタクトを特に重要視しています。Burke さんはこう説明します。「Slack を使うことで、経営陣と従業員との溝がバーチャルでもグローバルでも消え去ります。組織全体の透明性を高め、当社の理念を実現する上でも重要な点です。」
さらに、HubSpot では、共通の体験で従業員同士をつなぐグローバルグループで地域間のコミュニケーションを深めています。同社には核となる従業員リソースグループが4つあり、入社したばかりのメンバーから経営陣まで、誰でも参加が可能です。HubSpot 事業運営担当副社長の Ryan Ward さんは、こうしたチャネルの役割を、「従業員が積極的に参画し、つながりを感じ、仕事に全力で取り組めると感じられる非常に良い方法だと考えています。」としています。
こうしたグループのひとつ、Women@HubSpot の管理者 Ashley Jeffress さんによれば、Slack は「このコミュニティを立ち上げるためのベストな方法といえるものでした。みんながアイデアを出し合い、考えていることを伝えられるスペースとして機能しています。」Jeffress さんは今年、Slack でプログラムのリーダーや推進者を地域別のチャンネルに集め、国際女性デーを祝うイベントウィークの開催を支援しました。「勤務地にかかわらず、参加者それぞれがこのプログラムを盛り上げるために貢献できると確信できるようなイベントにしたいと考えました。イベントのミーティングに自分自身で実際に出向くことなく、こうした目標が達成できたのは本当によかったと思います。」
[product_ui id="2184021476256" description="hubspot-women-at-hubspot" /]HubSpot では、Slack がもたらすコラボレーションの力をもとに、従業員に一体性と透明性の高い職場を提供するという当社の企業理念を日々実現しています。この理念の重要性は、同社が拡大を続ける中、さらに増しています。ダイバーシティ・プログラミングや、グローバルレベルのバディシステム、オープンチャンネルポリシーといった取り組みが、社内の階層の壁を取り払い、透明性の高い組織づくりを実現するうえ、同社文化が重視するバリューをさらに促進する多彩な人材の獲得や維持にも役立っています。
「HubSpot のプログラムは、あらゆるメンバーが自由に参加できるものです。そのため、プログラムに関与し参加したいと思ったときにいつでも、どんな場所からでも貢献できるような仕組みを提供したいと考えています。」
セールスチームは Slack 活用で顧客基盤を拡大
Slack の果たす役割は、職場文化の醸成だけに留まりません。HubSpot では、システム運営から営業に至るまで、あらゆる部門で Slack を活用しています。HubSpot の国際業務担当副社長の Jeetu Mahtani さんによれば、セールスチームでの Slack の有用性が特に顕著です。
米国外での成長促進を担当する Mahtani さんの業務。その成長の成否は、外部からの問い合わせにいかに適切に対応するかにかかっていると説明します。「『インバウンド』という言葉は基本的に当社が作り出したものですが、当社の営業担当者はみな、業務の中でこのインバウンド(外部からの)営業問い合わせを受けることになります。」Slack 導入以前は、こうした問い合わせがチームのシステムの受信トレイに届いたあと、担当者の誰かが対応するまでそのままになっていることが一般的でした。ただ、Mahtani さんの指摘するように、潜在顧客は、数時間経っても返信がないと、次のベンダー探しに目を向けてしまいます。
新しい Slack インテグレーションでこれが一変。「外部からの問い合わせは、受信次第 Slack 内で通知として担当者に送信されます。デスクトップでもモバイルでもリアルタイム通知が受けられので、受信トレイに問い合わせが届くのを待っていた以前とは異なり、より積極的に対応できるようになりました。」
[product_ui id="2166390602484" description="hubspot-central" /]営業担当者が HubSpot と Slack 間のデータをひとつひとつコピーしてペーストしているのに気付いたプロダクトマネージャー Jingo Mante さんは、チームメンバーと一緒にカスタムの Slack インテグレーションを作成。ユーザーが Slack から直接 HubSpot タスクを新規作成し、通知を受信し、連絡先を検索できるようにしました。作業の度に画面を切り替える必要がなくなり、セールスチームは、ナレッジの共有など、より付加価値の高い業務に時間を割けるようになりました。「新規顧客を獲得するたびに、Slack チャンネルにメッセージを送信して顧客の詳細やサービス購入の理由、当社サービスが問題解決にどう役立ったのかなどを共有します。」Mahtani さんはこう言います。「こういった情報共有は、当社の世界中に拡がる営業担当者全員にとっても多くの事を学べるチャンスとなります。」
「外部からの問い合わせがあり次第、Slack 内で通知として担当者に送信されます。デスクトップでもモバイルでもリアルタイム通知が受けられので、受信トレイに問い合わせが届くのを待っていた以前とは異なり、より積極的に対応できるようになりました。」
ノイズを減らし、顧客の問題解決をスピードアップ
HubSpot の事業成功の立役者のひとつが同社のサポートチームです。カスタマーサポートグループは、社内のソフトウェアエンジニアやプロダクトマネージャーと Jira 経由で連絡を取っています。ただ、受信トレイが Jira の通知で埋まってしまうことがあり、これが重荷になっていました。
この問題を、HubSpot では Slack インテグレーションとチャンネルの活用で解消。Jira のチケットで誰かにメンションすると、そのメンバーの Slack チャンネルにそのチケットが表示されます。Ward さんによれば、これは「無駄な情報に邪魔されることなく、プロジェクトマネージャーとエンジニアが重大な顧客の問題に確実に気づき、対処できるようにするための取り組み」です。
[product_ui id="2160436730402" description="hubspot-twitter-support" /]カスタマーサービスの分野においても、HubSpot のシステムオペレーションマネージャー、Andrew Meinert さんのチームでは、Twitter のネイティブインテグレーションを使って Twitter サポートチャンネルへの投稿元となる @HubSpotSupport ハンドルを監視し、その後は Slack で内容の整理と優先順位付けをしています。「ボットがポストを削除し、同じ内容を『クレーム』ボタンで再投稿する仕組みです。」Meinert さんはそのプロセスをこう説明します。プロジェクトの内容と担当者が明確化し、皆が安心して次の問題に取り掛かれるようになりました。「調整がしやすくなり、お客様への対応速度もアップしました。」と同氏は付け加えます。
HubSpot の規模が拡大する中、管理面でのタスクを改善し、効率性を高める上で Slack が大きな役割を果たしてきました。「どんな組織でもそうだと思いますが、管理関連では、避けては通れない面倒な細かい作業が多数発生するものです。」Ward さんは続けます。「1回限りの作業のためにわざわざ別のアプリケーションを起動しなくてもよくなるよう、こうしたタスクをできるだけ Slack へうまく移行するにはどうすべきか、検討してきました。」
こうした必須のタスクをなくすことも、オフィスに来るのが待ちきれなくなるような職場を作る HubSpot の多彩な取り組みのうちのひとつです。細部にこだわり、Slack のようなツールを活用することで、マーケティング業界をリードする同社は、2,500人の社員全員が最高の仕事を実現できる、透明性、ダイバーシティとインクルージョンを重視した職場を提供するという理念を実現しているのです。