職場の文化は、物理的に顔を合わせることから、オープンコミュニケーションやバーチャルコラボレーションへ移行しつつあります。これは自営業の人に限った話ではありません。
調査会社 Global Workplace Analytics のリモートワークに関する最新のデータによると、日常的に在宅勤務をする従業員は 2005 年以来 140% 増えています。
つまり、Slack などのコミュニケーションプラットフォームを使って、時間や場所にとらわれずにやり取りするチームが増えているということです。それに伴い、そうした空間での雰囲気や、誰にでも開かれた協力的な社内コミュニケーションがこれまで以上に大切になっています。
Autodesk は、3D デザイン、エンジニアリングおよびエンターテイメントのソフトウェアやサービスを開発するソフトウェア会社です。同社でオープンソース戦略の責任者を務めるのは、かつてエンジニアだった Guy Martin 氏です。その Martin 氏が提唱するのは、アイデアやナレッジを同僚と共有する際は「オープンをデフォルトに」することです。
Deloitte による最近の調査では、Autodesk で働く従業員の 8500 人以上が Slack を利用して「チームのネットワーク」を作っていることが示されたそうです。 これにより、全社を通じて、どの立場にいる従業員もベストプラクティスを簡単に共有し、各チームのプロジェクトや目標について透明性を高めることができます。
Martin 氏によると、意味のあるコラボレーションとオープンコミュニケーションの実現は、各プロジェクトの成功に影響を与えるだけでなく、社内全体の文化や長期的な目標達成にも貢献するほか、パフォーマンスの高いチームを作ることにも役立つといいます。
共有は成功につながる
職場の文化は最近まで個人に依存していました。つまり、個人がそれぞれのナレッジやスキルで貢献し、それぞれのパフォーマンスに基づいて評価され、昇進が決まるという形です。結果的に、どのように情報を持つか(あるいは溜め込むか)によって、組織の中で力を持つ人が決まってくるという構図になっていました。しかし「こうした個人主義の考え方では長期的なキャリアの成功には結びつきません」と Martin 氏は指摘します。
「人間は、コミュニティで働くようにできていると思うんです」
チームメンバーがお互いから学ぶのに情報を共有することがいかに大事かということについてリーダーが理解すると、会社はコラボレーションの強化に乗り出そうとします。「人間は、コミュニティで働くようにできていると思うんです」と、Martin 氏は続けます。「ソフトウェアの開発とチーム全般にいかに影響を与えるかという点において、社会科学が私たちに追いついてきました」。
テクノロジーもその一因です。ソフトウェア業界およびほかの多くの業界では、製品を市場に導入するプロセスはあまりに複雑なため、従業員のコミュニティ外で設計することは非常に困難です。「1 人のエンジニアが最初から最後まですべて開発する時代は過去のものです」と Martin 氏は言います。
コラボレーションに対する考え方を変える
よりオープンでコミュニティ志向の作業プロセスを推進するリーダーたちは、コラボレーションの効果を示す事例をたくさん知っています。例として Martin 氏は、クラウドソースのオンライン百科事典 Wikipedia と、オープンソースの Linux オペレーションシステムの 2 つを挙げます。これらのプロジェクトが優れているのは、たくさんの人がナレッジを共有できるからです。「成功しているオープンソースのコミュニティは、それに貢献する人たちの知的資本や知的貢献を高く評価しています」と、Martin 氏は話します。
「私たちの義務は、ほかの人の声や考えを引き出し、それを大きく広げていくことなのです」
Wikipedia のようなプロジェクトは、異なる背景や視点、文化を持ったさまざまな編集者がいなければ成功しません。さまざまな視点を受け入れるという価値観があれば、ほとんどのプロジェクトや組織を改善できると Martin 氏は考えています。また権力を持つ人には、コラボレーションを前進させるための誰にでも開かれた環境を作る責任があると言います。「私たちの義務は、ほかの人の声や考えを引き出し、それを大きく広げていくことなのです」。
成果を測る : オープンコミュニケーションがもたらす相乗効果
職場で透明性を高めてナレッジ共有を推進するだけではなく、その取り組みの成果やそれがどれほど会社の文化を向上させているかを測ることは大切です。そのためのよい方法の 1 つは、従業員がチーム外とのコミュニケーションに費やす時間を観察すること。このことは Slack で共有されているチャンネルで特に簡単にわかります。ここで Martin 氏がすすめるのが「相乗効果のサインを探す」ことです。
Slack では、従業員が自分の業務に直接関係するチャンネルだけでなく、個人が関心を持つさまざまなチャンネルに参加しているため、相乗効果が一目瞭然です。これらのチャンネルのなかには、自分が関心を持っている組織内の別のプロジェクトや、仕事とは関係のない趣味やほかの関心事について話すためのチャンネルもあります。
Martin 氏によると、Autodesk では意外にも会社の #help チャンネルがコミュニティ形成のきっかけとなったそうです。このチャンネルには、さまざまな役割の従業員が参考にする FAQ が含まれています。「従業員には #help の活用を促しています。そこなら管理者に頼らず、自分たちで答えを見つけられるからです」と、Martin 氏は言います。
従業員は会社のマネジメントチームの助けを借りず、それぞれ FAQ を参照しています。「私たちは自立できるコミュニティを築くよう努めてきました。各従業員が自分で解決しようとしていることは、成功の大きなサインです。サポートや自律という私たちの職場の文化を自分のものにしていることを示しているからです」と Martin 氏は評価しています。
オープンコミュニケーションは誰にとってもメリットです。ほとんどの従業員はいつまでも同じ仕事をし続けるわけではないからです。「今は、いつまでも 1 つのことを専門にするという時代ではありません。長期にわたってキャリアを成功させていくには、学び続け、成長し、あらゆるタイプの人たちと効果的に交流する必要があるのです」。