コミュニケーションコストが高くなると、情報伝達に時間がかかってしまうため、業務に遅れが出るなどの無駄が発生してしまいます。共通言語として同じ日本語で会話をし、情報伝達や意思疎通をしているはずなのに、どのような理由でコミュニケーションコストが高くなってしまうのでしょうか。
ここでは、コミュニケーションコストが高くなる原因や、解決するための方法をご紹介しましょう。
コミュニケーションコストとは?
コミュニケーションコストとは、情報伝達や意思疎通というコミュニケーションに対して、時間・労力といった金銭以外のコストがどれくらいかかるのかを表しています。
ですから、情報を伝えるためにかけた時間や労力が少なければコミュニケーションコストが低く済みますし、反対に情報を伝えるために必要以上に時間・労力がかかる場合はコミュニケーションコストが高くなってしまいます。コストが高いということは企業としてマイナスですから、できるだけコミュニケーションコストは低くしたいといえるでしょう。
コミュニケーションコストが高い人の特徴
コミュニケーションコストが高くなる人の特徴としては、主に次の 3 つが挙げられます。
- 組織内での役割を理解していない人
自分自身が組織においてどのような役割を果たすべきなのか理解していない人は、コミュニケーションに時間や労力がかかりやすくなります。
例えば、「売上を伸ばす」という営業担当者の役割を理解していれば、上司に報告するべき最優先事項は売上に関する成果と判断できます。反対に、役割への理解が不十分だと「今日はどんな活動をしたか」「何件訪問したか」といった過程の報告に終始しがちです。そこで、上司が毎回のように「まず結果を報告してほしい」と伝えれば、コミュニケーションコストが高くなるのです。
- 情報の理解・処理に時間がかかる人
個々人の理解力や情報処理能力も、コミュニケーション能力に影響を及ぼします。
理解力の高い人は、ある情報に付随する状況や背景まで含めて包括的に理解することが得意で、その後の処理もスムーズに進めることができます。一方、理解力が低い人の場合、前提となる状況や背景も順序立てて説明して、理解できているかどうかを確認する必要もあり、時間・労力がかかります。つまり、情報を理解・処理する能力は、コミュニケーションコストに比例するといってもいいでしょう。
- 自分の話をしたがる人
コミュニケーションの目的は相互理解にあります。相互理解を深めるには、相手にとって必要な情報を端的に伝えることが大切です。ですから、相手が求めている情報を提供できる人は、コミュニケーションコストが低い傾向があります。反対に、相手に構わず自分の話をしたがる人の場合は、相手が求めている情報を届けるまでに回り道をしやすく、コミュニケーションコストがかかる傾向があるのです。
コミュニケーションコストが高い組織の例
コミュニケーションコストが高くなる原因は、個人に起因するものとは限りません。次のようなケースでは、組織の在り方や仕組みがコミュニケーションコストを増大させていると考えられます。
- 社内で誰に何を相談すればいいかわからない
知りたい情報や探している資料がある場合、社内で誰に何を聞けば解決できるのかが明確になっていないと、対象を見つけるまでに時間と労力を要します。特に、資料の保管場所や指示系統が整理されていない場合に陥りやすいケースです。結果的に複数の社員に聞いて回ったり、毎回のように同じことを確認しなければならなかったりと、コミュニケーションコストが無駄に発生します。
- 社内のルールが周知されておらず、修正・説明に時間を要する
業務の進め方や申請フローなど、仕事を進めるには共通のルールが必要です。ルールは更新されることがありますが、その際、更新された内容について社内への周知が徹底されなくてはなりません。その周知が徹底されていない場合、何度もルールの説明をしたり、ルールに則って修正指示を出したりする必要が生じます。社内のルールに関する認識のずれは、コミュニケーションコストが高くなる原因のひとつです。
- 伝達事項が正しく伝わらない
情報を伝える仕組みに欠陥がある場合や伝達のフローが複雑な場合、伝達するべき事項が正しく伝わらないことがあります。
例えば、部署Aと部署Bで同じ用語を別の意味合いで使っている場合、本来の意図とは異なる解釈で伝わってしまうケースがあります。この場合、伝えるべき事項の前提知識から説明し直す必要があるため、コミュニケーションコストが増大する傾向があります。
- 従業員間にリテラシーギャップがある
従業員間にリテラシーギャップがある場合も、コミュニケーションコストが増す原因になりがちです。
例えば「会議の議事録はクラウドにアップロードして部内で共有する」という手順のみ説明すれば理解できる人と、「どうすればクラウドにアップロードできるのか」「ファイルを共有するにはどんな操作が必要か」といった、基本操作の説明を必要とする人がいるケースなどが想定されます。
コミュニケーションコストが高いと起こる弊害とは?
コミュニケーションコストが高くなることによって、企業にさまざまな弊害が生じてしまいます。ここでは、具体的な弊害について見ていきましょう。
情報の伝達・発信・受信に時間がかかる、または正しく伝わらない
コミュニケーションコストが高い状態で業務に携わっていると、ひとつの情報を伝達・発信・受信するために時間を要します。単純な伝達事項であっても会議を招集しなくてはならないなど、情報の伝達が遅れるケースもあるのです。
また、そもそも伝えるべき情報が正しく伝わらないことも考えられます。誤った情報にもとづいて業務を進めた結果、ミスにつながったり、修正・訂正のために余計な時間を要したりすることになりがちです。
業務効率の低下
情報の伝達に必要以上の時間をかけていると、全体として業務時間が膨張していきます。業務完了までに予定以上の時間がかかり、長時間労働が常態化する原因にもなるのです。
業務効率の低下は、実質的に労務費の増大につながります。本来必要な人員よりも多くの人員を配置しなくてはならないなど、金銭面のコスト増大にも直結しかねない問題といえるでしょう。
部署間やチーム内での連携がとれない
異なる部署に連絡する際、情報が正しく伝わらないケースや、特定の人にしか伝わらないケースが発生しやすいです。重要な情報を迅速に伝えることができず、結果的に顧客や取引先に迷惑をかけていることもあります。
また、チーム内で連携が図れなくなることも予測されます。必要な情報が行き渡らないために情報の格差が生じやすく、業務の重複や抜け漏れが発生しやすくなるのです。
意思決定のスピードが遅れる
コミュニケーションが円滑に図れないことは、組織としての意思決定スピードにも影響を及ぼします。現状の課題点や状況の把握に時間がかかるため、すぐに対処するべき重要な課題を見落としてしまう可能性があるからです。
意思決定のスピードが遅れれば、貴重なチャンスやリスク回避のために必要な動きがとれなくなることもあり得ます。結果として組織全体の対応能力が低下し、機能不全に陥ってしまうおそれがあるのです。
従業員が無駄に疲弊する
コミュニケーションコストが高い職場では、従業員間の行き違いや誤解が生じやすくなります。伝わらない・理解してもらえないことによって、従業員がストレスを抱えやすくなり疲弊してしまうのです。
本来、従業員が業務のために投じることのできた集中力を削がれることは、組織としての活力喪失にもつながりかねません。さらに、従業員のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼすことが予想されることから、モチベーションの低下に直結する可能性があるのです。
コミュニケーションコストが高くなる原因
コミュニケーションコストが高くなる原因として、いくつかの要素が考えられます。複数の原因が絡み合っているケースもあるため、コミュニケーションコストが高いと感じたら、次のような状況になっていないかチェックしてみましょう。
コミュニケーションの手段を統一していない
コミュニケーションを図るための手段が統一されていないと、コミュニケーションコストが高くなりがちです。例えば、上司に報告するための方法としてチャットとメールが混在していると、上司に報告事項が伝わるまでにタイムラグが生じる可能性があります。
情報の見落としや散逸にもつながりやすいため、すでに報告済みの内容を再度伝えなくてはならないこともあるでしょう。コミュニケーション手段の不統一は、意思疎通に時間・労力のロスが生じる原因となりえます。
不要な情報を発信する
情報が整理されておらず、不要な情報が発信されていることもコミュニケーションコスト増大の原因になります。複数の人が発信する伝達事項の内容が重複していたり、必要以上に詳細な報告がされていたりするケースが典型例といえるでしょう。こうした状況では、情報を発信する側に不要な負荷がかかるだけでなく、情報を受信する側も要点を確認するまでに時間を要してしまうのです。
紙に印刷するなどの手間をかけている
メールやチャットで送信できる文書をわざわざ紙に印刷して配布するなど、情報共有の方法が非効率であることもコミュニケーションコストが高くなる原因のひとつです。
また、紙ベースの文書が増えるとファイリングの手間がかかるうえに、後日必要な情報を探しにくくなることも考えられます。情報を伝えるという目的に立ち返り、伝達の迅速性や蓄積された情報の検索性を考慮した手段を選ぶことが大切です。
コミュニケーションが限定されている
コミュニケーションを限定的な範囲で行い、周囲に情報が伝わらないこともコミュニケーションコストを押し上げる原因となります。少人数で実施したミーティングの内容が部署内に伝達されていなかったり、メールや電話など 1 対 1 でのコミュニケーション手段に頼っていたりすると、情報共有が促進されません。
結果的に、特定の人だけが重要な情報を把握していると、情報の偏りが生じやすくなるのです。コミュニケーションをできるだけオープンにし、部署内で共有可能な状態にしておく必要があります。
社内の価値観や前提となる情報が共有されていない
組織には固有の価値観や前提となる情報なども存在します。こうしたルールに対する共通認識が十分に醸成されていないと、コミュニケーションコストの増大につながるでしょう。
例えば、新商品を開発する際に企業としての理念やスタンスが共有されていないと、「売れれば良い」「安ければ良い」といった独自の解釈で企画会議に臨む社員が現れる可能性があるのです。目指しているものが異なれば、話し合いをしても結論はまとまりません。価値観や前提となる情報を共有するための仕組みを整える必要があります。
コミュニケーションコストを下げるには?
コミュニケーションコストを下げる手段として、大きく分けて「個人のコミュニケーションコストを下げる方法」と「組織のコミュニケーションコストを下げる方法」の 2 つが考えられます。それぞれ具体的な対処法を見ていきましょう。
個人のコミュニケーションコストを下げる
個人のコミュニケーションコストを下げるには、次の 2 点を推進する必要があるでしょう。
- 自分や周囲(部署)の役割を明確にする
自分自身やチーム、部署に期待されていることは何か、目的やミッションを明確にしておくことが大切です。短期的な目標を提示するだけでなく、中長期的に何を目指しているのかをチームメンバーや部下に話しましょう。自身の役割が理解できれば、与えられた役割を果たすための努力をしやすくなります。コミュニケーションに関しても、目的やミッションを達成するための手段として位置付けられるでしょう。
- 情報を整理する
情報の漏れや重複を防ぐには、情報を整理して伝えることが重要です。伝えるべき事項の優先順位をフォーマット化し、フォーマットに沿って報告・連絡を行うようにしましょう。情報を発信する側にとって伝えるべき事項が明確になるだけでなく、受信する側も項目が統一されることで効率良く理解できるはずです。
組織のコミュニケーションコストを下げる
組織のコミュニケーションコストを下げるには、いかにマニュアル化をするかがポイントです。コミュニケーションを図るよう呼びかけるだけでなく、次に挙げるような具体的な施策を講じていきましょう。
- マニュアルを作成する
業務の基本的な手順や注意点をマニュアルにまとめておくことで、同じ質問が複数の人から発生しなくなります。不明点があればマニュアルを見るよう習慣付け、自己解決できる範囲を広げておくのです。入社年次や業務の習熟度によらず、不明点を逐一質問しなくても業務が進めやすい環境を整えましょう。
- 各部署の役割・目的・機能を明確にする
部署ごとに役割や目的、機能を明確にしておくことが大切です。各人が果たすべき役割が共有されていれば、自分にとって必要な情報や把握しておくべき事柄の範囲がわかりやすくなります。不要な質問や相談が減り、有益な情報発信や情報交換がしやすくなるでしょう。
- 社内教育・研修の仕組みを整える
社内教育や研修の仕組みを整え、社員に自社の理念や価値観、行動規範を伝える機会を設けましょう。組織内での共通理解が深まり、同じ目的意識を持ったうえでのコミュニケーションを図りやすくなるはずです。教育・研修は 1 回限りではなく、定期的に実施することで理解を深めることができます。
- オープンにコミュニケーションを図る
コミュニケーションは、できるだけオープンな状況で図ることも重要です。例えば、電話によるコミュニケーションは基本的に 1 対 1 で行われるため、会話の内容を周囲の人は知ることができません。そこで、グループチャットを活用するなど、関係者全員が会話内容を確認できる状況を作りましょう。
- コミュニケーションの手段を統一する
用途や緊急度に応じて、コミュニケーションの手段を統一しておくこともポイントのひとつです。例えば、業務上の連絡は基本的にチャットで行い、緊急の場合は電話を使うといったルールを設けておくといいでしょう。
コミュニケーションコストを下げるために有効なツール
コミュニケーションコストを下げるためには、ツールを活用するのもおすすめです。ここでは、そのために有効な具体的なツールをご紹介しますので、ぜひ活用してみてください。
ビジネスチャット
ビジネスチャットを活用することで、メールよりもカジュアルにコミュニケーションを図りやすくなります。リモートワーク(テレワーク)など離れた場所で就業していても、気軽に質問や相談ができるでしょう。ビジネスチャットは社内だけではなく、グループ企業やパートナー企業など、社外とのコミュニケーションをスムーズに進めることにも役立ちます。
また、グループチャットを活用して、情報を共有しやすい仕組みを整えることも可能です。部署やチーム、社外を含むプロジェクトメンバーなどとのコミュニケーションを活性化させるためにも、ビジネスチャットの活用はおすすめの方法といえます。
社内 SNS
社内 SNS を導入して社員同士のコミュニケーションを活性化させる方法もあります。社内 SNS はログに残せるため、有益な事例などの投稿をまとめれば、マニュアルとして活用できるでしょう。
また、コメント機能を活用して上司や同僚からフィードバックを送ってもらうなど、社内のコミュニケーションを活発化させやすいことも社内 SNS の長所です。
ウェブ会議ツール
ウェブ会議ツールを活用して、離れた場所にいる相手と対面コミュニケーションを図る方法もおすすめです。画面共有機能やホワイトボード機能を利用すれば、資料の共有やブレストをすることもできるでしょう。また、録画機能を使うことで会話内容を記録に残し、後で見直すこともできます。
コミュニケーションツールを導入してコミュニケーションコストを低減しよう
情報の受発信にかかる時間・労力を表すコミュニケーションコストは、社内でのコミュニケーションが円滑に行われているかを考えるうえで重要な指標となります。コミュニケーションコストが高いと感じる場合は、個人・組織の両面から原因を分析し、対策を講じていくことが大切です。
今回解説してきたポイントを参考に、 Slack などのコミュニケーションツールを導入し、社内のコミュニケーションコスト低減に取り組んでみてください。
よくある質問
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