どの会社にもスムーズに回らない車輪があるものです。Slack の場合、その 1 つに書類への署名という面倒な作業がありました。新入社員には山のような書類に署名するという退屈な作業があるのですが、法務チームの担当者はそれらの署名済み書類をすべて追跡し、しかるべき場所に提出されたかどうか確認しなくてはいけません。この作業に貴重な時間が取られてしまっていたのです。
そんな車輪には油を差す必要があります。そこで Slack の法務チームは LegalBot という Slackbot を思いつきました!これは未処理の法務タスクについて、ずばっと言うものの親切なリマインダーを送ってくれる Bot です。おかげで法務チームはもっと有意義なことに集中できるようになりました。
このアイデアは経営層から出てきたものではありません。実は、Slack プラットフォーム上で使える新しい社内ツールについて従業員にアイデアを出してもらうためのプログラム「Slack on Slack」で、法務チームの現場で働く担当者が提案してくれたものなのです。
Slack on Slack は、Slack が IT を活用してビジネスを成長させていく仕組みの中核となるものです。私たちは自らの Slack プラットフォーム上でボット、アプリ、インテグレーションを活用することで、従業員のビジネスライフを快適にする取り組みを行っています。あなたの会社も Slack を使っているなら、きっと同じことができるはずです。
IT チームが Slack でできること
IT チームはトップダウン式が多く、新しいソリューションを提供する際も身軽に進まず時間がかかる傾向にあります。そのため、毎日のワークフローを大きく改善できるような小さな変更を徐々に進めることがなかなかできません。でもマネージャーが従業員の意見を直接積極的に聞くと、画期的な提案が生まれることがあるとわかっています。
Slack の場合は、#slack-on-slack
というチャンネルを作り、従業員にアイデアを送ってもらえるようにしました。このチャンネルで双方向の会話が始まったことで、私たち経営層は現場の従業員がどんな問題を感じていて、解決策としてどんなアイデアがあるのか、直接学ぶことができたのです。
次に、実際に取り組むプロジェクトはどういうものがよいのか、明確な基準を設けました。私たちが探していたアイデアは次のようなものです。
- 社内の広い範囲に効果がある
- ワークフローを効率化できる(承認が簡単になる、複数のアプリやプロセスをシンプルに統合できるなど)
- よりシンプルで、より快適で、より有意義な Slack の使い方について、パートナーやユーザー企業の皆さまの参考になる
これらの条件を満たすアイデアがあれば、ぜひ共有するよう働きかけたのです。その手っ取り早い方法として、Slack のワークフロービルダーを使って /slack-on-slack
スラッシュコマンドを作りました。このコマンドを実行するとフォームが開いて次のフィールドが表示されます。
- 課題
- 現在のワークフロー
- 提案するソリューション
- この機能で得られるその他のメリット
アイデアを共有したあとどうなるのかについても、明確なマイルストーンを示すことが大切です。その後話し合うのか、もっと詳しい情報を求めるのか、あるいはその機能を作ると決めるのか。要するに、現実的なコミュニケーションが必要だということです。アイデアを共有した次の日に実現すると思ってもらっては困りますが、ビジネステクノロジー担当者から何の反応もなく半年も放置されるわけではないことを従業員にわかっておいてもらいましょう。
大きいレベルでの説明責任を果たす
門を開けると、アイデアがどんどん舞い込んできました。では、次のステップは?ほしい機能を大規模に実現させるのは大変です。そのため Slack では、アイデアの発案者に、コンセプトの考案と提供のプロセスに参加してもらっています。これが大事な理由は、発案者がアイデアに対して真剣であると確認できるからです。また、導入段階での推進にも役立ちます。
「大きな成功にだけに目を向けていては、現場の従業員からは動きが見えづらくなります。従業員がアイデアを出し続けられるように、そして私たち経営層がそれをちゃんと活用するとわかってもらえるようにするには、草の根のサポートが必要なのです」
#slack-on-slack
は匿名の目安箱ではありません。どのプロジェクトも、まずは直接発案者と集まり、一緒になってプロジェクトの基本的なコンセプトから作っていきます。また、機能のリリースが近くなったら、ほかの人に使ってもらうための方法を発案者に考え始めてもらいます。この機能は誰に影響するのか、トレーニングは必要か、どんな指標を見るべきなのか?ビジネステクノロジー部門が取り組むのが従業員からの要望を実現することなら、私たちはその機能が一番必要な人に実際に使えってもらえるようにしたいのです。
大きなアイデアと小さなアイデアのバランスを取る
優先順位から考えれば、ビジネスの収益を大きく伸ばして経営層が満足するようなプロジェクトにだけ目が向きそうになります。それらは影響が大きく労力もかかるものです。リソース確保のためには経営幹部からの支持を得る必要があるのはもちろんのこと、そのようなプロジェクトは時間がかかり、忍耐も必要です。でも大きな成功にだけに目を向けていては、現場の従業員からは動きが見えづらくなります。従業員がアイデアを出し続けられるように、そして私たち経営層がそれをちゃんと活用するとわかってもらえるようにするには、草の根のサポートが必要なのです。
そう考えると、従業員の日常にすぐに大きな効果をもたらすものを届けることが大事だと気づきました。例えば、今は 3 時間かかっているけれど、自動化すれば 5 分になるようなプロセスがあるかもしれません。このようなバランスを取ることで、#slack-on-slack
のようなパブリックチャンネルを作ったときに殺到する要望にうまく対応することができるでしょう。
従業員のアイデアを実現する
ここで、このプロセスが Slack 社内で実際どのように行われているかを紹介しましょう。次に挙げるのは、時間の短縮になっただけでなく、従業員のビジネスライフを明るいものにした具体的な例です。
1. LegalBot : 法的書類への署名という退屈だった作業ですが、この Bot のおかげで期限内に書類が戻ってくることが多くなり、今や Slack の文化を推進するものになっています。
2. ヘルプデスクサポートの拡大 : Slack の従業員は世界中でどんどん増えているので、IT サポートチケットの数もそれだけ多くなります。サポートデスクに送信されるチケットの 80% は、パスワードを忘れたとか、ソフトウェアにアクセスしたいというよくあるものでした。担当者をそうした問題から解放してもっと難しい問題に取り組んでもらえるようにし、また従業員がすぐに解決策を得られるように作ったのが AskBot です。AskBot は AI と自然言語処理を活用し、ソフトウェアのプロビジョニングなど何度も来るリクエストに 年中無休 24 時間体制で自動的に対応します。
3. すぐに見られる指標を増やす : 成長中の企業において、全員がすばやく意思決定するための情報を得られるようにするにはどうすればよいでしょうか?Slack にとって、その答えは毎日仕事をする場所にそのデータを置くことでした。その場所とはもちろん、Slack です。新しい Slack の UI フレームワークである Block Kit とデータウェアハウス、それから Looker とのインテグレーションを組み合わせて使った MetricsBot で、全社向けの Slack チャンネルにパフォーマンス指標を毎日投稿するようにしました。
4. 営業資料の自動作成 : アカウントエグゼクティブは、資料を一から作るのにかなりの時間を費やしています。承認されたスライドが何百枚もあり、その中から担当するユーザー企業との打ち合わせのたびに、各企業に合うものを手動で選んでいるからです。営業部門全体でどれほどの生産性が失われているのかを考えると、これは早急になんとかしたい状況でした。そこで営業チームから、Slack の中に「資料の生成」ボタンを作り、ユーザー企業のセグメント、業界、その企業特有の Slack 利用指標に基づいて資料が組み立てられるようにはできないだろうかという相談がありました。
これは間違いなく大プロジェクトで、たくさんのインテグレーションが必要になるでしょう。でもこれはアカウントチームの業務が楽になるだけでなく、会社全体としても大きな意義を持ち、複合的な価値を生むものになると考えています。
自社ならではの「on Slack」プログラムを
ここまで Slack 社内で効果のあった事例を紹介してきました。皆さんの会社の車輪をスムーズに回すための実用的なアイデアとして参考になるとうれしいです。チームで Slack を活用して何ができるか考えるために、頭に置いておきたいことを改めてまとめます。
- 全社規模で意見を募れば、従業員のビジネスライフを改善する方法について貴重な意見が得られるはずです。それは結果として生産性の低い時間を減らすことにつながるでしょう。
- 自社ビジネスに特有のニーズに合わせて Slack をカスタマイズする際は、色んな部門や人とのコラボレーションが必要です。従業員はアイデアを出し、IT チームと一緒にブラッシュアップし、機能が完成したらチームに導入するプロセスを主導します。
- 彼らに参加し続けてもらうために即効性を示すことと、影響が大きく労力のかかるプロジェクトを実現することをバランス良く行うことが大切です。
- ビジネス目標を達成するためには、何よりも Slack と API を活用するアイデアに目を向けましょう。
このプロセスを実践すると、流れ落ちた水が水たまりを作るようにその効果が会社全体に広がっていくことがわかるでしょう。新たに生まれた時間で従業員に何をしてもらいますか?あるチームから来たリクエストはほかのチームにも役立つでしょうか?従業員がアイデアを出せるようにすることは、会社を内側から積極的に改善してもらうようにすることです。その違いは、皆さんの顧客もきっと感じることでしょう。