報連相は一昔前、二昔前の常識といわれることもあります。しかし、職場においてコミュニケーションが重要なのは、現在でも変わりません。「報連相ができない」組織は、健全な状態にあるとはいえず、業務がスムーズに進まないために機能不全に陥る可能性も高くなってしまいます。
ここでは、報連相ができない原因と、今の時代において報連相を浸透させるための方法について解説します。
報連相とは報告・連絡・相談の略
報連相(ほうれんそう)とは、報告・連絡・相談を略した言葉です。仕事を円滑に進めるためのビジネスの基本として 1980 年代頃から日本で広まりました。具体的には、山種証券の元社長である山崎富治氏の「ほうれんそうが会社を強くする」という著書がベストセラーとなったことから広く知られるようになった言葉です。
現在も報連相は、社内のコミュニケーションの在り方について語るときによく言及されます。まずは、この 3 つの言葉それぞれの意味について見ていきましょう。
報告
報告とは、業務の途中経過や結果を知らせることです。主に部下が上司からの指示や命令を受けて行うべきものとされます。
連絡
チーム内メンバーや関係者に業務や作業に関する情報を知らせることが連絡です。自分の意見や憶測を含めず、事実を客観的かつ正確に伝えることが求められます。
相談
相談とは、自分だけでは判断が困難なとき、上司や周囲に意見を求めることを指します。意見やアドバイスによって解決法を得られれば、適切な対応をするのに役立てることができます。
報連相の目的
企業において、報連相にはどのような目的があるのでしょうか。ここでは 4 つのポイントを挙げてみます。
風通しの良い職場環境を作るため
現在では、報連相はあたかも部下や新人の社員がマスターすべき社会人の常識のようにも扱われています。しかし、これは本来の意味とは少し異なります。本来、報連相はさまざまな立場にある社員が容易に報連相できるような、「風通しの良い職場環境」を作るために考案されたものでした。
つまり、報連相を実践する元々の目的は、コミュニケーションを基盤とする組織の活性化だったのです。そのために必要なのは、部下の努力だけではありません。むしろ、そうした雰囲気を作り出すリーダーの配慮や裁量こそが重要です。この点はまず、押さえておくべきポイントでしょう。
問題点を改善し、トラブルを早めに解決するため
報連相は、業務やプロジェクトを進行する上で何か問題が起きたとき、早めに対処するためにも役立ちます。日頃から社内に報連相の習慣が根付いていれば、問題点の改善やトラブルの解決を図りやすいのです。
どんな組織でも、順調に進行している事柄についての報告や連絡はすぐになされます。しかし、ミスをしたときや不都合なことがあった時の情報伝達は遅れがちになるものです。こうしたコミュニケーションの停滞を避けることも、報連相を行う目的となります。
縦・横の連携を強化するため
報連相は、上司と部下という上下間だけではなく、チーム内や部門・部署間など、横の意思疎通をスムーズにするためにも活用できます。報連相を社内全体で活用し、行き渡らせることができれば、縦と横の連携が強化されて、より風通しの良い環境が作れるでしょう。
情報共有を確実にする
80年代には、情報共有という言葉を使う人はあまり多くいませんでした。しかし、現在では情報共有が業務の効率化や、属人化の防止、組織全体のスキル向上などに役立つことは広く知られています。
報連相は、その情報共有を確実なものにする目的でも活用できます。報告・連絡・相談という 3 つを状況に応じて使い分けることで、情報の共有化の度合いをより深めることができるのです。
報連相ができていないとどうなる?
社内で報連相ができていないと、どうなるのかを考えてみましょう。 3 つのケースを見ていきます。
業務やプロジェクトが円滑に進まなくなる
報連相の不足は、業務やプロジェクトの円滑な進行を妨げます。
例えば、納期の決まっている業務の進行が現在、遅れているのか、予定どおり進んでいるのか、予定より早く進んでいるのかがわからない場合を考えてみましょう。その業務の担当者から報連相がなければ、上司やプロジェクトマネージャーが、納期が近づいた段階で部下やメンバーに尋ねて状況を確認しなければならなくなります。
これは手間がかかる上に、仮に進行が遅れていた場合には対処が遅れる原因にもなります。これが、現場からの適切な頻度・タイミングでの報連相が求められる理由です。
トラブルへの対応が遅れる
トラブルが起きているときの報連相は重要です。トラブルやアクシデントに関する情報伝達がしっかり行われていないと、必ずといっていいほどその分、対応が遅れます。そればかりか、さらに大きな問題を引き起こすおそれもあります。
特に、顧客とのトラブルは迅速な対応が必要です。ですから、細かいことでも報連相による情報共有を進めるべきなのです。
組織マネジメントに悪影響が出る
部下や担当者から情報を得ることは、組織マネジメントを適切に機能させるためにも不可欠です。現場の情報がなければ、管理する立場の人間は状況を正しく把握することができません。そして、状況がわからなければ適切な指示も出せません。
このことは、縦のつながりだけではなく、横のつながりにおいてもいえます。例えば、マーケティング部と営業部との間での報連相がおろそかになると、顧客への適切な対応もできなくなるでしょう。
報連相ができない原因とは?
報連相ができないのは、なぜなのでしょうか。原因として考えられることを 5 つご紹介します。
目的や必要性が十分に理解されていない
頭ごなしにただ報連相をすべきだと社員に指導しても、すぐにそれが習慣化することはまれです。社員たちが、報連相がなぜ、何のために必要なのかを十分に理解していなければ、報連相の意義や価値を実感することができず、各々の行動につなげることは難しいでしょう。
また、報連相の目的が理解されていないと、「このくらいは伝えなくても大丈夫だろう」という報連相の軽視を生じさせます。これは、部下から上司への報連相だけではなく、上司から部下への報連相も同様です。
伝えやすい雰囲気が形成されていない
報連相ができない原因として最も多いのが、社内に報連相をしやすい雰囲気が形成されていない、環境が整っていないというパターンです。
日頃からあまりコミュニケーションが活発でない、多忙で一人ひとりが仕事を抱え込みがちといった職場環境では、報連相を実践するのは難しくなります。上司が無意識に威圧的な態度をとっている場合も同様です。これは、企業のカルチャーや社風とも関連する問題です。
タイミングがわからない
報連相をいつ、どのように実行すればいいのかわからないというのも、ハードルになりやすいポイントです。必要なときに柔軟性を持って実践できるのが理想ではありますが、その必要なときの判断は難しく、人によって捉え方も異なります。
報連相の対象となる上司が忙しそうだと、つい後回しにしてしまうこともあるでしょう。いつ、どのようなときに報告・連絡・相談をすべきなのかという基準があいまいなために、報連相ができなくなっているといえます。
伝え方や手段がわからない
具体的にどのような話し方で報連相をすればいいのかがわからないという人もいます。口頭で伝えるべきなのかメールが適切なのかなど、手段がわからないというケースもあります。
これらは、報連相の行い方、手段が定まっていない状態です。以前はうまくいっていたのに、上司が変わったり、リモートワークに移行するなどして業務の環境が変わったりすると、急に報連相が滞る場合もあります。
報連相のための時間や手間がかかりすぎる
報連相の必要性については周知されており、環境もある程度整っていたとしても、なぜか報連相がうまく浸透しないという場合もあります。
その原因は、情報伝達に時間や手間がかかるためかもしれません。「報連相は面倒だ」という認識ができてしまうと、情報伝達がおざなりになってしまいます。
また、そもそも上司がなかなかつかまらない、上司とのコミュニケーション手段が限られるといった企業では、報連相が遅れ、対応も後手に回ってしまいがちです。
報連相を浸透させる方法
以上を踏まえて、報連相を社内に浸透させる方法を見ていきましょう。多くは基本的なことですが、基本をしっかり押さえておくのが重要です。
目的と必要性の周知をする
まず、報連相の目的・必要性を自社の業務やカルチャーに合わせて明確化し、アナウンスします。報連相が必要という認識を全社で共有して、日々の業務の中に報連相を組み込んでいくための基盤を作りましょう。
報連相のポイントを示す
次に社員に対し、報連相の伝え方や方法のポイントを示します。マニュアルやガイドラインを用意するのもいいでしょう。マニュアルには、下記のような内容が考えられます。
報連相に関するガイドラインがあれば、それが基準となって徐々に浸透していくことが期待できます。
実践しやすいルールを作る
報連相のタイミングや方法に関する実践しやすいルールも定めておくとスムーズです。
例えば、「作業の進捗状況を、午前、午後の業務が終わったタイミングで、チャットを通じて箇条書きで、上司に報告する」といった、簡単なルールでいいのです。何を、いつ、どのように、誰に報連相するのかをあらかじめ決めておくのが基本です。
報連相に適したツールを活用する
報連相の実践には、ツールも活用できます。込み入った相談をする場合などを除いて、口頭での伝達は相手の時間を奪うことにつながりやすく、記録に残らないというデメリットもあります。メールも端的な情報伝達にはあまり向いておらず、多くの部下からの報連相メールを管理するのも面倒です。
そこで候補に挙がるのは、ビジネスチャットです。ビジネスチャットは挨拶文などが不要で、要点をまとめた報告や連絡を送ることができます。相手は都合の良いときに内容を確認できるので、時間にしばられることがありません。また、記録に残り、後から検索して内容を確認するのも容易です。
ほかにも報連相には、さまざまなツールが考えられます。日報ツールやプロジェクト管理ツール、グループウェアなども報連相に役立てられるでしょう。自社に合った方法を考えてみてください。
ビジネスチャットで報連相を実践するコツ
ビジネスチャットを使えば、今の時代にマッチした報連相を実践することが可能です。ビジネスチャットでの報連相のコツを 2 つご紹介します。
チャンネル内でいつでもどこからでも迅速に伝達
ビジネスチャットでは、セクションやチームごと、プロジェクトごと、顧客や案件ごとなど、自由にチャンネルを作って会話をすることができます。チャンネル内でタスク管理もできるので、進捗状況などのチェックも可能です。
例えば、プロジェクトでチャンネルを作り、そのチャンネル内でメンバー同士が常に報告・連絡し合うようにします。そうすれば、該当するチャンネルを見ることで、いつでも必要な情報を把握できるようになります。
相談も基本的には同様です。チャンネル内で相談すれば、マネージャーやメンバーに問題点を提示できます。解決策が得られれば、それをグループで共有してノウハウとすることができるでしょう。もしも、グループチャットではなく、個人的に相談したいというのであれば、ダイレクトメッセージを使って個別相談することもできます。
ワークフローでより確実な報連相を
ビジネスチャットの Slack では、ワークフローという機能が利用できます(有料プランで利用可能)。ワークフローでは、 1 つのタスクをこなしたら次のタスク、そのタスクをこなしたらさらに次のタスク、といったように、複数のステップで構成されるプロセスを自動的化することができるのです。
この仕組みを利用すると、報連相をシステマティックに実践できます。例えば、業務報告のワークフローなら、「午前の業務が終わった時点、午後3時時点、午後の業務が終わった時点で、業務内容を作業に要した時間とともに記す」といったタスクを作るといいでしょう。後は、時間が来たらワークフローの項目欄に業務内容を書いて送信するだけです。
また、相談については、何か問題点や気になる点があれば、そのことを記入できる欄を設けておけば対応できます。
ワークフローで報告・連絡を行うルールを作れば、確実に情報伝達と共有を行えるようになるのです。
社内の報連相のトラブルはツールの活用で解決できる
ビジネスチャットなどのツールが利用できるようになり、報連相の実践方法も変わりつつあります。
従来のやり方があまりうまくいっていないのであれば、コミュニケーションツールによる迅速かつ確実な報連相の仕組みを整えてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
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