経営資源の無駄を省くためにも、業務の可視化は大切です。また、業務の可視化は、業務の効率化や生産性向上など、企業価値を高める有効な手段であるとともに、「働き方改革」の推進においても重要な取り組みといえます。
ここでは、業務を可視化するメリットや具体的な方法のほか、組織改革のヒントなどについて解説します。
業務の可視化とは、業務内容やプロセスを俯瞰し把握すること
業務の可視化とは、「いつ」「どこで」「誰が」「どのような方法で」仕事をしているか、業務プロセスを明らかにして俯瞰し把握できるようにすることです。あらゆる業務を把握した上で、問題点や無駄、そこに潜む課題を浮き彫りにして改善することが業務の効率化や組織力の強化につながります。
とはいえ、業務の可視化や改革、改善の目的は企業ごとに異なるはずです。目的を定めず改革を開始すると、かえって企業活動を停滞させ、改革が失敗に終わってしまうことも。改革を成功に導くにはゴールを明確にし、業務の可視化を丁寧に行うことがカギとなるでしょう。
業務プロセスを「見える化」すれば、問題点が浮き彫りになる
多くの場合、業務はさまざまなプロセスが複雑に入り組んでいて、段階によって関わるスタッフも異なります。
例えば、製品やサービスを開発・提供する事業では、企画、設計、開発、製造、品質管理、出荷などに業務プロセスが分かれ、各段階でさらに作業が細分化されています。このような複雑な工程が、有機的に連携することで事業は成り立っていますが、全体像を把握するのは容易ではありません。
業務の可視化の第一歩は、業務プロセス全体をグラフやフローチャートなどを使って視覚的に「見える化」することです。
見える化によって、経営層や事業統括責任者が業務プロセスの全体像を把握できるようになり、各業務プロセスの担当者も自分の業務以外の作業内容が把握できるので、問題や課題に対処しやすくなります。
業務の可視化は、現状を把握し改善方針を見つけることが目的
業務プロセス全体をグラフやフローチャートなどを使って見える化すると、業務上の問題点を把握しやすくなります。問題点が明らかになれば、改善の方針が見えてくる。これが業務の可視化の目的です。
例えば、スマートフォンは、常にバッテリー残量を画面上で確認できます。もし、これが表示されていなかったとしたら、「あとどれぐらい使えるのか」がわかりません。また、スマートフォンによっては、「どのアプリがどれぐらいバッテリーを消費しているのか」がグラフで可視化できるものもあります。その情報をもとに、バッテリーを長持ちさせるためにどう工夫するのかを考えられるのです。
業務を可視化することのメリット
業務を可視化すると、具体的にどのような改善ができるのでしょうか。業務の可視化をする3つのメリットについて見ていきましょう。
無駄や改善ポイントが浮き彫りになる
業務の可視化で得られる最大のメリットは、業務の無駄や取り組むべき課題が明らかになる点です。
事業責任者や各部門のマネージャー、担当者にヒアリングを行い、業務内容の詳細やプロセス間の連携方法を把握し、グラフやフローチャートに落とし込んで見える化します。そうすると、無駄な部分が具体的に見えるようになり、業務フローの良し悪しを判断しやすくなるのです。今までぼんやりと「無駄かも?」と感じていた点が明瞭になるだけでなく、潜在的な無駄や気づかなかった課題があぶり出される場合もあるでしょう。
業務の可視化の結果を踏まえて、人員配置の再考やプロセスの見直し、経営リソースの有効活用を促進すれば業務効率の向上が期待できます。
誰もが同じ手順で作業でき、品質を維持できる
業務の可視化を行う際、一般的に業務フローをフローチャート化し、誰もが視覚的に業務の流れを把握・理解することができるような形にします。このフローチャートをマニュアル化すれば、誰もが同じ手順で仕事を進めることができ、結果としてオペレーションの品質を一定レベル以上に維持しやすくなります。
こうした取り組みは、特に工程が複雑な業務で大きな効果を発揮します。例えば、「この仕事はこの人でなければ」という属人的な仕事が業務フロー内に存在すると、当該人物の病欠、急な退職などの理由で、業務全体が停滞してしまう可能性があります。
その点、業務手順のマニュアル化を徹底しておけば、誰もが同じ手順で作業でき、業務の属人化という課題を改善できるのです。
企業の内部統制強化につながる
一定規模以上の企業では、不祥事を防ぎ、業務の適正を確保するための社内体制、すなわち「内部統制」が義務付けられています。業務を可視化することは、この内部統制の観点からも有益です。
業務の可視化を行えば、具体的な対応策を記載した「内部統制 3 点セット」と呼ばれる資料を作成することができるでしょう。
業務を可視化する具体的な方法は?
業務を可視化する方法はいろいろありますが、「従業員からのヒアリング」や「無駄や問題点の洗い出し」「業務の流れの見える化」を行い、これらをもとに誰が見てもわかる資料にするのがおすすめです。
ここからは、業務の可視化を実現する具体的な方法について解説します。
1. 無駄や問題点を洗い出し、改善課題として理解する
まずは従業員へのヒアリングを実施し、現場レベルで困っていることや、改善してほしいと感じていることを洗い出しましょう。ヒアリングで明らかになった問題点や改善すべき点をカテゴリー分けしてリスト化し、誰が見てもわかるよう、見える化します。
こうして問題がリスト化されると、従業員同士が改善課題を共有でき、改善に向けた前向きな意識を持つことにつながるのです。
2.プロセスマップを作成し、業務の流れを視覚化
次に、業務の流れを視覚化します。業務の責任者や担当者にヒアリングする、あるいは改善推進担当者が業務内容を調査して業務の流れを把握し、「プロセスマップ」を作成します。
プロセスマップとは、業務の始まりから終わりまでに行う各作業の流れを記号や図を用いてチャート化したもので、業務の可視化の柱といえるもの。誰が見ても直感的に理解できるよう、文字だけでなく記号で業務の流れを表現するのが大きな特徴です。
3.業務手順の徹底
業務プロセスの視覚化が完了したら、それをもとに業務手順の整理を行い、マニュアル化します。
業務手順マニュアルを作成する際は、文字だけでなく、図表や画像などを用いて、シンプルかつ直感的にわかるよう心掛けるといいでしょう。従業員が見て、「次に何をすべきか」「隣接する部署とどのような連携を図ればいいのか」が明確になれば、自ずと業務が円滑になり、効率化の推進力として機能するはずです。
業務可視化ツールを活用すれば、分析がより簡単に
業務の可視化には、「業務可視化ツール」を用いるのも効果的です。業務可視化ツールとは、業務プロセスや業務フローの可視化・図式化を行い、各プロセスの無駄や改善点を自動的に分析してくれるものです。
例えば、従業員の PC の操作ログを収集してサーバーで集計の上、情報をもとに改善点を洗い出す作業を行うことができます。
昨今、リモートワーク(テレワーク)の比率が増え、従業員の労働環境が把握しづらい状況は、経営課題のひとつでもあります。業務可視化ツールは、多様な環境で働く従業員の就業状況を把握し、問題点を改善策に変える上で大きな効果を発揮することが可能です。
このようなツールは、 PC の操作ログを情報源として分析するため、デスクワークがメインの企業では効果を発揮するでしょう。
あらゆるワークフローを改善へと導く「 monday.com (マンデー・ドットコム)」は、代表的な業務の可視化ツールです。ビジネスチャットツールの代名詞である Slack との親和性が高く、双方を組み合わせることでコミュニケーションから可視化までをシームレスに連携することが可能となります。
業務の可視化は、従業員の働きやすさの改善にもつながる
今回は、業務の可視化の必要性やその背景のほか、業務の可視化を行うメリットや具体的な方法について解説しました。
「働き方改革」の推進や業務の効率化、ひいては組織改革が求められる昨今、今ある問題点を浮き彫りにし、改善へと導く業務の可視化は、企業をより良い未来へと前進させるものです。ビジネスのさらなる成長や従業員の働きやすさを実現するためにも、業務改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
よくある質問
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