株式会社ニューズピックスは、「経済情報で、世界を変える」をミッションに掲げる株式会社ユーザベースの事業子会社であり、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」を運営する企業です。2013 年 9 月にメディアを立ち上げて以来、617 万人(2021 年 3 月末時点)の会員を抱えるまでに成長してきました。
親会社であるユーザベースが掲げる The 7 Values の 1 つ、「自由主義で行こうー Be free & own it」という価値観のもと、ニューズピックスでは約 300 名のメンバー 1 人ひとりが最大のパフォーマンスを発揮できるよう、働く時間や場所を自由に選べるようにしています。メンバーは国内にとどまらずニューヨークやロサンゼルス拠点にも分散するほか、職種も記者、編集者、営業、エンジニア、業務管理など多岐にわたります。こうしてさまざまな職種のメンバーが分散型ワークの多様な働き方を実践できる背景には、Slack と Sales Cloud の活用がありました。
分散型組織を支える Slack を使った非同期型コミュニケーション
ニューズピックスで Slack の利用が始まったのは 2016 年。それ以前の同社では、チームや職種ごとに利用するコミュニケーションツールがバラバラだったそうです。「当社のように、メンバーの職種や働く時間や場所が多様で海外拠点も抱える組織では、コミュニケーション基盤をグローバルで共通化して非同期的にやり取りを進めることで、業務効率とスピードを上げる必要がありました」と、同社の Corporate Planning Division で Business Management Team Leader を務める蒲原慎志さんは振り返ります。
Slack の非同期型コミュニケーションのしやすさはニューズピックスの組織構造や多様な働き方にピタリと適合し、現場への Slack の浸透はかなり早いペースで進みました。蒲原さんによれば、今では「Slack がなければ仕事にならない」という状況で、その活用は社内にとどまりません。実際にニューズピックスの広告事業では Slack コネクトを通じて取引先とやり取りしているほか、グループ会社との連携においても活発に使用しているそうです。
「非同期型の業務プロセスにおいては、次の作業者がすぐにアクションに移れる情報を適切なタイミングで届けることで、業務効率とスピードを劇的に上げられます」
Slack と Sales Cloud との連携であらゆる業務プロセスを効率化
ニューズピックスでは、Slack を全社統一のコミュニケーション基盤とする一方で、業務基盤として Sales Cloud を活用しています。同社が Sales Cloud を導入したのは Slack と同じ 2016 年のこと。以来、事業成長を支える強い基盤を構築するという目標のもと、Sales Cloud にさまざまな業務を集約してきました。今では、取引先管理、契約管理、受注・売上計上管理、発注・支払・費用計上管理など、ニューズピックスのあらゆる業務を Sales Cloud 上で管理しています。
そんな Sales Cloud をコミュニケーション基盤である Slack と連携させることで、ニューズピックスではあらゆる業務プロセスがスムーズに流れるようになりました。
例えば、同社の営業担当者が広告コンテンツの案件を受注すると、Creative チームが企画内容に沿って適切な担当者をアサインして制作を進めます。ここで肝になるのは、営業担当者と Creative チームのスムーズなコラボレーションです。しかし Slack と Sales Cloud の連携前は、この段階でツールをまたぐ面倒なやり取りが発生していました。営業担当者が Sales Cloud に案件情報を登録後、その概要をメールや口頭、Slack メッセージなどで Creative チームに伝え、それを受け取った Creative チームが担当者をアサインしたのちに、アサインの内容を営業担当者にメールなどで戻していたのです。
このプロセスが Sales Cloud と Slack との連携によって大幅に効率化しました。営業担当者が Sales Cloud に案件情報を入力すると、Sales Cloud プロセスビルダーによってその情報が整理され、Slack の専用チャンネルに情報が登録されたことを知らせる通知が届くようになったからです。情報を登録すれば通知されるようになったことで、伝える手間が減ったとともに、Creative チーム内のアサイン状況も Slack 上で誰でも確認できるようになり、関係者間での情報共有がぐっと促進されました。
こうした効率化は営業案件にとどまりません。例えば、新規取引先のコンプライアンスチェックも自動化でき、チェック結果が出ると担当者が自動的にメンションされて通知が届くようになりました。こうした業務効率化について、蒲原さんは「前工程から後工程へ、適切な情報を、適切な人に、適切なタイミングで届けることが鍵」だと話します。「前工程の担当者が、次の作業の担当者に対して『何をすべきか』をタイムリーに伝えることで、業務が淀みなく進みます。ニューズピックスの売上成長は、Slack と Sales Cloud の両輪によって支えられていると言っても過言ではありません」。
「業務のシステム化で最も大切なのは、効率的なプロセスを柔軟に設計・構築することです。Slack と Sales Cloud の連携でコミュニケーションと業務を集中させれば、それが可能になります」
チーム外の関係者から状況が見える化され、認識を揃えるのが簡単に
案件が営業から Creative チームの手に渡ってコンテンツ制作が進んでいくと、その進捗はチーム外から見えない状態になりがちです。しかしニューズピックスでは Slack 上にあらゆるコミュニケーションをまとめたことで、Creative チーム外の関係者も制作の進捗を把握できるようになりました。また、Sales Cloud 上で情報が変更されたり、申請が承認されたりすると Slack に通知が届くため、関係者はレコードを開かずとも業務進捗などを把握することもできます。
こうして Sales Cloud に多くの業務を集約して Slack と連携させることで、制作にかかわる全メンバーが最新状況について認識を揃えやすくなり、業務がスムーズに流れるようになりました。また関係者全員が自分の知りたい情報が見えない不安から解放されるのと同時に、自分が行うべきことを把握することができ、状況確認のための余計な会話や会議を行う必要もなくなったそうです。
「情報がすべて見える化され、自分に必要な情報が過不足なく届くというのがビジネスコミュニケーションのあるべき姿だと思います。Slack と Salesforce の連携によって、その理想に近づけていると感じます」
Slack に業務を一元化できる世界へ
蒲原さんは今後、Sales Cloud を開かずとも Slack だけで確認や承認を完結できる環境を実現し、業務をさらに効率よく進めたいと考えているそうです。「その実現に向けて、Slack と Salesforce との連携がより強化され、特別な設定をしなくてもあらゆるアクションを Slack で行えることを期待しています」。
さらに同社では現在、iPaaS ソリューション「Anyflow」を使用し、プロセスビルダー等 Salesforce の設定に頼らずに Slack 通知を実現する仕組み作りも進めています。将来的に Slack と Sales Cloud との統合が進むことで「そうした仕組み作りが一層容易になることが理想です」と蒲原さんはつけ加えます。
「Slack だけで業務が完結できれば、業務効率は間違いなく上がります。そう遠くない将来、そうした環境が必ず実現できると見ています」。