Slack を活用して「スーパーアプリ」へと成長
2012 年にマレーシアで、安全な配車サービスとして始まった Grab は、1 つのアプリにさまざまな機能を統合した「スーパーアプリ」へと成長してきました。今ではデジタル金融サービスや配達サービスも提供するなど、東南アジアを代表する「毎日のあらゆることに使えるアプリ」になっています。
現在 Grab は、人口約 7 億人の東南アジア地域で、20 人に 1 人が利用するサービスとなっています。同社は、より多くの人にサービスを提供していくこと、そしてコミュニティへの支援をさらに充実させていくことをミッションに掲げています。
Grab の成長の推進力となっているのは、「Grabber」と呼ばれる従業員たちです。その力をさらに引き出すために、同社は、従業員がもっと生産的に仕事ができる環境を整える必要があると考えていました。
そこで Grab は 2018 年に、革新的な働き方をほかに先駆けて取り入れるため、Slack と Salesforce を導入しました。
同社の Grabber Technology Solutions は、IT ソリューションを通じて、従業員のための「時間を生み出す」役割を担うチームです。このチームを率いる Daniel Foo 氏は、こう説明します。「私たちの目標は、東南アジアの 20 人 に 1 人を超える人々にサービスを提供することです。その実現を後押ししてくれるツールのひとつが Slack です」
Slack を使った効果的なコラボレーションで成長を促進
これまで Grab では、電子メールと複数のコミュニケーションプラットフォームが使われていました。しかしその方法では、動きの速い組織での迅速なコラボレーションに、十分に対応できませんでした。
「Slack を導入する前は、コミュニケーションが複数のプラットフォームに分散してサイロ化するという課題を抱えていました。やり取りがバラバラで、意思決定にも時間がかかっていました」と Foo 氏は振り返ります。
Grab で Head of Business IT Solutions, GTS を務める Quinny Lei 氏によると、急成長する同社にとって、コストを管理し、セキュリティを強化しながら、この課題を解決するための最適な選択肢は何かと考えた結果、浮かび上がったのが Slack でした。
簡単かつ迅速にコラボレーションできる Slack は、Grab の従業員に全面的に受け入れられました。
Lei 氏はこう話します。「Slack を使うことで、特に大きなチームにおいて、生産性が高まり、コラボレーションが活発に行われるようになりました」
同社はほかのプラットフォームから Slack に業務を集約することで、運営を効率化。それにより投資収益率が高まるとともに、将来の成長に向けた強固な基盤も築けます。
「Grab にとって、Slack は単なるチャットツールではありません。すばらしいアイデアが生まれ、その多くが形になる場です」と Lei 氏は言います。
Grab にとって、Slack は単なるチャットツールではありません。すばらしいアイデアが生まれ、その多くが形になる場です
Slack のワークフローで数十万時間を節約
1 万人を超える従業員を抱える Grab では、ちょっとした非効率も、それが積み重なれば多くの時間が無駄になります。そこで同社は、社内プロセスを効率化するために、数千もの Slack ワークフローを作成。これにより定型的なタスクの処理をスピードアップし、チームの貴重な時間を取り戻しています。
「Slack のワークフローにより、タスクの完了に必要なステップ数を削減できます。完全に自動化できたタスクもあります」と Foo 氏は説明します。
その自動化を実現している方法の 1 つが WorkBot です。
これまでは、従業員からのリクエストを IT チームが手動で管理しており、双方にとって手間のかかるタスクになっていました。
たとえば、従業員はサポートが必要になると、外部のプラットフォームでチケットを発行し、リクエストがすぐに処理されることを祈りながら、IT 管理者が確認してくれるのを待たなければなりませんでした。複数のシステムが関わるこのプロセスは、非効率で時間のかかるものでした。
そこで、IT チームの負荷を軽減し、管理タスクをスピードアップするために、同社は Slack の自動化ボット「WorkBot」を作成しました。このボットが、複数のシステムを連携させ、Slack チャンネルにリクエストを集約。従業員はシンプルなメニューを通じてセルフサービスで依頼を行えます。その結果、導入研修やパソコンの設定、ハードウェアの問題の診断といったタスクを、より速く安全に処理できるようになりました。
こうした自動化が、トータルで大きな時間の節約につながっています。さらに、生産性向上の恩恵を得るのは自社だけではない、と Foo 氏は話します。
「Slack でタスクを自動化し、従業員がセルフサービスで問題を解決できるようにすることで、年間で数十万時間を節約できました。取り戻した時間で、コミュニティへの貢献をさらに充実させることができます」
Slack でタスクを自動化し、従業員がセルフサービスで問題を解決できるようにすることで、年間で数十万時間を節約できました。取り戻した時間で、コミュニティへの貢献をさらに充実させることができます。
インテグレーションでセルフサービス化を推進して、エンジニアの時間を確保
Grab は大規模なエンジニアチームを擁し、そこでの業務の多くが Slack で行われています。ただこれまでは、サービスリクエストに対応する際のツールの切り替えの手間により、製品開発などの価値の高い作業が中断され、生産性向上の妨げとなっていました。
同社はこの課題に対処するために、複数のシステムを統合して、包括的なサービス管理を行える「GrabCentral」という名の Slack 自動化を開発。この仕組みにより、エンジニアはプラットフォームを切り替える必要がなくなり、Slack 内で IT 関連のサービスリクエストを確認して対応できるようになりました。
この GrabCentral が優れているのは、従業員がセルフサービスによって Slack 上で即座に IT 関連の問題を解決できる仕組みを用意していることです。
たとえば、以前は 1 日に約 50 件のリクエストが従業員から IT チームに寄せられていました。1 件を完了するのに 3 分かかるとすると、合計で毎日 150 分もの時間を費やすことになります。
今では、こうしたリクエストが Slack 内ですぐに解決されるようになり、エンジニアは本来の仕事に時間を割けるようになっています。
「エンジニアの役割は、製品の開発に注力し、利益を生み出すことです。Slack でプロセスを自動化することで、Grab のエンジニアは製品開発に集中できるようになり、それが生産性の向上につながっています」と Lei 氏は言います。
Grab の未来を Slack と Salesforce が後押し
Slack と Salesforce の連携を進めることで、Grab の従業員の生産性はさらに高まるでしょう。
「Slack と Salesforce を早期から導入してきた当社は、1 つの CRM のもとで、営業やマーケティング、カスタマーサポートのシステムを合理化するというビジョンを描いています」と Lei 氏は語ります。
Slack を通じて、Grab の従業員は Salesforce のすべての CRM アプリを簡単に利用できます。つまり、今仕事をしている Slack 内から、顧客のデータやインサイトにアクセスできるのです。このような効率化が、東南アジア全域でのカスタマーエクスペリエンスの向上につながると Lei 氏は説明します。
「Slack をビジネスの玄関口にすることで、継続的に効率性を最適化できます。それにより、従業員だけでなく、外部のコミュニティにも恩恵をもたらすことができます」