編集者注 : Jackie Rocca は Slack のプロダクト担当 VP で、Slack AI の開発を主導しています。私たちは顧客データの保護に真剣に取り組んでいます。セキュリティとプライバシーの保護に配慮した Slack AI の構築方法をご覧ください。
私たちは生産性の革命の最前線にいます。
この 1 年で、AI のいくつかの進化がメインストリームで採用されるようになり、テクノロジー分野を変革しています。1 つの注目すべき傾向は、OpenAI の ChatGPT や Google の Bard など、大規模言語モデル(LLM)とそのユーザーインターフェイスの台頭です。人間の言葉を理解して生成するという革新的な機能により、チャットボットからコンテンツの自動作成まで、数多くのアプリケーションが誕生しています。
こうした AI ツールがにわかに脚光を浴びたことにより、AI が実際にできることに関して、誇大広告や過度な期待が生まれました。そんななか、Slack の製品チームは地道な取り組みを続け、少し違った視点で物事を見ていました。それは、プラットフォームの可能性を最大限に引き出し、Slack を通じてユーザーの生産性をさらに高めるには、こうした新しいテクノロジーをどのように応用すればよいのだろうかというものです。
設計の指針
Slack AI の設計プロセスを開始すると、2 つの優先事項が浮かび上がってきました。ユーザー企業の Slack には価値のある背景情報がたくさん蓄積されていますが、組織内の集合知から得られる情報をうまく検索できていません。こうした情報を即座に見つけられるようにすることが 1 つ目です。2 つ目は、仕事はスピーディーに進んでいくため、最も重要な情報を即座に確認できるようにすることです。
私たちは、AI の可能性に大きな期待を抱くと同時に、慎重かつ明確に対処する必要のある重要な疑問や課題を引き起こす可能性があることにも気付いていました。次の 3 つの点を念頭に置くことが重要でした。
- 安全性 : 安全であるか。ユーザー企業のデータの安全性を保つことができないなら、AI は適切ではありません。
- 利便性 : 便利であるか。Slack エクスペリエンスを最大限に引き上げる便利な背景情報をどのように追加できるでしょうか。
- 使いやすさ : AI を簡単かつ快適に使えるようにしているでしょうか。
これらの優先事項に基づいて、製品開発の指針となる原則を定めました。
ユーザーに突然エンジニアになるよう求めたりはしません。私たちの第一の目標は、価値をすぐに引き出せるようにすることでした。これらのツールを活用するために、まったく新しいスキルを身につけるよう求めることはありません。Slack AI は、助けが必要なときにサポートし、提案することでユーザーをガイドします。自由入力形式のテキストボックスを前に途方に暮れるようなことはありません。
- AI を使用している場合は明確に示す。 AI によって生成されたコンテンツを示すことはとても重要です。新しい分野に進出するにあたって、ある情報が AI によって生成されている場合は明確に示すことで、信頼の文化を促進し、ユーザーをサポートする AI の役割について理解を深められるようにします。
- ユーザーが非公開で AI とやり取りできるようにする。 デフォルトで、1 対 1 の場所で AI とやり取りできます。また、自分だけがその内容を確認できるということが常に明確に示されます。準備ができたら、AI を利用して得られた知見をチームメンバーと共有し、段階的にコラボレーション体験を築くことができます。
- 柔軟性を維持する。 Slack AI は、必要な時に登場し、不要な時には影をひそめるように設計されていますが、デフォルトの出力から結果を少し調整したい場合もあるでしょう。特定の日付範囲の概要が必要な場合や、簡潔な応答を希望する場合もお任せください。
- 便利な背景情報を提供する。 私たちは、便利なエクスペリエンスを作り出すことを目指しており、見逃したメッセージの概要を自動的に提供します。目標は、直感的でアクセスしやすい AI 支援機能により、ユーザーの満足度を高めることです。ユーザーが明示的に求める必要はありません。
多くの企業が製品のあらゆる部分に AI を取り込もうとするなか、私たちが取るアプローチは異なります。ユーザーの日常的な操作を大きく向上させるように、この新機能を磨き上げています。この機能なしでどうやって仕事をしていたのだろうと振り返ることになるでしょう。
透明性は信頼を築く
Slack と親会社である Salesforce にとって、信頼は最も重要な価値です。実際に、お客様から寄せられる AI に関する懸念のトップは、セキュリティに関するものです。そのため私たちは、意思決定の指針として、何よりもお客様からの信頼の維持に焦点を合わせたいくつかの製品価値を遵守しています。
ユーザーのデータは私たちの製品ではない
世の中には顧客データを金もうけのタネとして使用する企業もありますが、Slack はユーザーの安全とデータプライバシーをとりわけ優先しています。Slack の新しい AI 製品の機能は、ユーザーのデータがユーザーのものであり、ユーザーだけのものであることを保証するため、最初から Slack のセキュアなインフラストラクチャ内で設計されています。Slack がユーザーのデータを販売したり、レンタルしたりすることはありません。Slack は、ユーザーの情報のプライバシーとセキュリティを守りながら、すべての Slack ユーザーのためにさらなる機能向上を実現させるべく、強固なメカニズムを構築してきました。信頼は売り物ではないと固く信じているからです。
データへのアクセスはユーザーがコントロールする
Slack は、ユーザー企業の専有情報がほかのユーザー企業の情報と混在しないよう、細心の注意を払っています。Slack のエコシステム全体で、高い水準のセキュリティとコンプライアンスを遵守しています。Slack の Enterprise Key Management(EKM)は、暗号化キーをユーザー自身で管理できるようにするもので、選択したタイミングでアクセス権を取り消すことも可能な管理権限が与えられます。また、高い基準を遵守していることを証明するため、Slack のコンプライアンスは第三者である業界の専門家による監査を受けてきた HIPAA、FINRA、FedRAMP、SOC 2 といった標準による認証を取得しています。
ユーザー自身が結果を検証できる手段を設ける
なにかのテクノロジーを信頼してもらおうと思えば、その信頼性が常時確保されていることが必要です。Slack AI は、会社において従業員の判断を置き換えるためのものではありません。Slack では、AI サービスの機能を設計する際に透明性を確保するようにしているため、重要な点について自分で調査し、結果を独自に検証することができます。
Slack の最新情報
Slack AI のパイロットは今冬に開始予定です。送信済みのメッセージ、共有された canvas、録音・録画されたクリップなど、Slack は組織にとってナレッジの宝庫です。その集合知の力を最大限に引き出すために、ユーザーに日常的に大きな価値を提供する、いくつかの基本的でありながらもパワフルな機能からリリースを開始します。
- チャンネルの要約。 ユーザーはチャンネルのハイライトを生成して、重要なポイントをすぐに把握できます。例えば、休暇中に見逃した複数の会話を確認したり、参加したばかりのチャンネルから重要な内容を即座に抽出できるとしたらどうでしょうか。新しい知見にすばやく簡単にアクセスできることで、チームは十分な情報に基づいた、顧客中心の意思決定を行えるようになります。
- スレッドの要約。 ユーザーはワンクリックであらゆる会話の内容をすぐにつかめます。例えば、カスタマーサポートチームで協力して問題解決にあたる際に、特定分野に詳しいメンバーに加わってもらったとします。そこまでに長い経緯があったとしても、スレッドの要約機能を使えば、そのメンバーはすぐに状況を把握して、問題解決に向けて力を発揮することができます。
- インテリジェントな検索結果。 ユーザーが質問すると、関連する Slack メッセージに基づいた明確で簡潔な回答が得られます。例えば、新しいプロジェクトについて知りたい時に回答の検索機能を使えば、プロジェクトの目標や主なステークホルダーがさっとわかります。検索の結果は、ユーザーが慣れ親しんだ従来の検索結果の横に、視覚的に区切られたデザインにまとめて表示されます。
さらに多くの新機能のリリースが計画されており、もっとインテリジェントな機能を構築して皆さまが最高の仕事ができるようサポートしていく予定です。ワークスペースでこれらの AI ツールが利用可能になり次第、いち早くその情報を知りたい場合は、新しい電子ブックで詳細を確認し、Slack AI パイロットに今すぐ新規登録しましょう。