1983 年に創業した Intuit は、TurboTax、QuickBooks、Mint や Turbo など消費者や自営業者、中小企業がよりよい家計管理や経理を行うための製品やプラットフォームをグローバルに展開するテクノロジー企業です。同社はそれらのソリューションを通してユーザーが最小限の手間で収益を最大化できるだけでなく、よりよいアクションや意思決定を可能にしてきました。その事業規模は非常に大きく、世界中に9,000人以上の従業員と 5,000 万人を超える顧客を抱え、2018 年度の売上高は 60 億ドルに達しています。
製品の幅が多様化して進化を続けるなかでも、Intuit は Fortune 誌の「働きがいのある企業ベスト 100」の常連企業であり続けています。そんな同社の職場環境は従業員から高い評価を得ていましたが、経営幹部は仕事の進め方にまだ改善する余地があることに気がついたのです。それは部門別にサイロ化したインフラがコラボレーションの壁になりつつあり、複数の製品にまたがって共通の開発リソースを要するプロジェクトや、カスタマーサポートの前線で常にほかのチームとのやり取りが必要なメンバーの仕事を妨げているという点でした。
「顧客サポートには 20 ほどのツールを使っていました」と話すのは、Intuit で Director of Collaboration and Productivity, IT を務める Brynna Donn 氏です。「そんな状況をシンプルにしたかったのです」。
Donn 氏のグループは 1 つのチームでこれだけ多くのツールを使っている背景を探るべく、メンバーに何度もヒアリングしてそうしたツールをどう併用しているかを調べました。すると、次の 2 つが浮かび上がってきたのです。
- モバイルを含め、あらゆるプラットフォームでシームレスに使えるメッセージツールが必要だということ
- この問題の解決策として、Intuit サポートチームのエンジニアがすでに Slack を 導入していたこと
「エンジニアが Slack を使ってすでに挙げていた成果を耳にしたことで、Slack の必要性がますます高まりました」と、Donn 氏は続けます。
Slack でサイロ化を脱却し、プロジェクトのコラボレーションを促進
当初は、社内キャンペーン「Work Better Together(コラボレーションでよりよい仕事を実現)」の一環として Intuit に導入された Slack でしたが、今ではすべての部門で利用されています。また、同社は Slack チャンネルを活用して、外部のパートナーと直接共同作業して、チーム間の距離を縮めています。
「パートナーのチャンネルに参加するのは、とても興味深いんです。内容が幅広くバラエティに富んでいますから」と、Donn 氏は話します。「さまざまな組織のメンバーが、社外とのスムーズな連携やパートナーシップについて話題にしています。Slack によって、チームがよりよい成果を生むためにさっと集まりやすくなったことで、これまでにはなかったようなコラボレーションが生まれたのです」
新しいテクノロジーやワークフローを導入する際は、全社的な定着がなかなか進まないこともあります。Intuit で Slack を導入した時は、最初こそばらつきがありましたが、その後は定説に反して急速に社内に広がっていきました。
「Slack を使い始めるのがどれだけ簡単か目の当たりにした途端、一気に普及したんです」と振り返るのは、Group Manager, IT の Pam Whitmore 氏です。「Slack の利用を希望するすべてのグループに対応するのが大変でした」。
Intuit では社内のネットプロモータースコア(NPS)を導入しているのですが、その調査によれば Slack に対する期待は高く、それがあっという間の定着につながりました。また同社ではトレーニングが必要なチームを見つけるために、社内に導入したツールに NPS を割り当てています。最も重要なツールでは最低ラインとしてスコア 20 を想定しており、現在の平均値は 24 です。Slack のスコアは直近の調査で 50 であり、非常によく使われていることを示す結果となりました。
「Slack によって、これまでになかったコラボレーションが生まれたのです」
カスタマーサポートの研修を効率化
Intuit のカスタマーサポートチームは、同社が製品を展開する各地域に分散しています。これまでに同チームで利用していたツールは、どれも社内の他チームとのやり取りや社外の委託企業とのコラボレーションには向かないものでした。しかし Slack の導入で、現在は関係するチームがすべてを 1 つのプラットフォームに集まっています。さらに Slack チームから、シンプルで使いやすく直感的な操作で手動のタスクを自動化できるワークフローについての研修を受けたことにより、生産性を向上できる部分が見えるようになりました。
同社ではこうしたメリットを社内での IT サポート対応で日々実感しています。「インシデントが作成されると、新しい Slack チャンネルを作成して関係者全員が集まります」と、Whitmore 氏は説明します。「これは初期に行った価値あるインテグレーションの 1 つです。今では Intuit のミッション実現にとって欠かせません」。
Slack の導入で、期間限定メンバーの研修もシンプルになりました。「Slack のおかげで、全員がチャンネルに集まって研修を自動化できるようになり、本当に楽になりました」と、Donn 氏は話します。
期間限定メンバーが使うさまざまなツールの設定が終わると、次は Slack を設定する番です。Intuit では、こうしたメンバー用に Slack 上でユーザーグループを作り、それぞれの業務に関連度の高いチャンネルやワークスペースに自動でメンバーを追加して必要な範囲の権限を付与します。例えば、期間限定メンバーは割り当てられたチャンネルでコラボレーションを行ったりパブリックチャンネルに参加したりすることはできますが、チャンネルの新規作成や投稿の削除はできません。
「インシデントが作成されると、Slack チャンネルを新規作成して関係者全員が集まります。(中略)今では Intuit のミッション推進にとって欠かせません」
カスタムボットを活用して常に学べる環境を用意
Intuit の期間限定メンバーの研修を Slack で行ううえで大きな役割を果たしたのが、オーストラリアのカスタマーサポートチームのカスタムボット、Learning Bot です。例えばカスタマーサポートチームの誰かが、会話のなかでアプリのニッチな機能など特定のトピックに触れると、Learning Bot がそのユーザーに詳細を知りたいかどうかを尋ねます。
これはカスタマーサポートチームの新メンバーが会話の文脈のなかで学びを深めるのに非常に役立っています。実はこのボットは、コーディング経験がほとんどないメンバーによって作成されました。「そのメンバーは 2~3 のツールを習得したあと、すぐに Learning Bot を作って試してみたんです」と、Whitmore 氏は説明します。「こうしたツールを構築するのにエンジニアである必要はないということです」。
カスタマーサポートチームでは Learning Bot などのカスタムインテグレーション活用に加え、さまざまな地域に分散するチームを共通のワークスペースに集めたことで生産性向上につながりました。「Slack を使えば同じ部屋に全員集まっているかのようなコミュニケーションが取れます」と、Whitmore 氏は続けます。「メンバーの拠点が世界中に分散していても、複数のチームが一緒に仕事を進めたり問題を解決したりするのがぐっと早くなったという声が届いています」。