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このデジタル時代に合わせ、Hearst がクリック可能コンテンツの配信を Slack を使って効率化

「当社の全ブランドにおけるコンテンツ作成ペースを考えると、秘密主義というのは誰にもメリットがありません。私たちは、Slack を導入することで、本当の意味でオープンさと透明性を促進できるようになりました」

Hearst MagazinesMarie Claire、Editor in ChiefAya Kanai 氏

編集者というのは、売れるストーリーへの「直感」が冴えていることが必須です。しかし、Harper’s Bazaar や Esquire といった代表的ブランドの出版社である Hearst Magazines では、競争が激しく繰り広げられるデジタル出版の世界において、編集者には直感以上のものが必要であると認識しています。現代のストーリーは「数字」によって刺激を受け、動かされています。そのため Hearst Magazines では、ヒットする刊行物や記事、成功につながるソーシャルメディア投稿それぞれを支えるデータの確認に Slack を活用しています。

「当社の信念は『目的を持ったコンテンツ』です」と Hearst Magazines のコンテンツ部門長 Brooke Siegel さん。チームは常に、情報を伝達し読者を楽しませるコンテンツとは何かを把握することに努めています。ABC が Cosmopolitan に The Bachelor の優勝者である Cassie Randolph さんの雑誌特集を持ちかけた時、当時チーフファッションディレクターだった Aya Kanai さん(現在は Marie Claire の編集長)は、Slack にデータを取り込むカスタムボット、HANS に着目しました。Cosmopolitan のウェブサイトでは当初から同テレビシリーズをカバーしていたことから、Kanai さんは「当社にはストーリーのパフォーマンスや、読者がこのトピックに関心があるかを実証するすべてのデータがありました。そして実際に、読者はそのトピックに関心を示したのです」と説明。 そこでそのデータに十分な確信をもち、Kanai さんは同誌の印刷版向けに Randolph さんの写真撮影の許可を出しました。

Hearst Magazines ではこういったストーリーが例外的なものではなく、新たな常識となっています。コンテンツ部門では、デジタルコンテンツとアナリティクスを強化し、スタッフがメディア掲載のインサイトにデータを利用することをすすめています。HANS のおかげで、このようなデータ駆動型の新たなアプローチが Hearst の雑誌ブランドすべての日常的なワークフローに取り入れられ、過去のデータを活用しながら今日の必読コンテンツを作成できるようになりました。

「データを取得する方法はたくさんありますが、HANS なら最も速く簡単に実現できます。雑誌やメディア事業ではタイミングが重要になるので、最適なボットですね」

Hearst MagazinesMarie Claire、Editor in ChiefAya Kanai 氏

HANS ボットでダッシュボードからデータを取得

25 のブランドで構成される Hearst Magazines のポートフォリオ全体では 2,500 件以上のコンテンツが日々作成され、それぞれにパフォーマンス指標が設定されています。同組織の代表取締役を務める Troy Young さんは、データの重要性を認める一方、データ抽出にかかる時間から非効率的になりがちであることも認めています。特にレポートの検索に 30 分かかることもある編集者にとっては、この作業時間はかなり負荷となります。そこで彼は、部門の製品ディレクターである Zack Packer さんと戦略ディレクターの Michael Solomon さんに、編集者から役員、SEO マネージャー、そして営業担当者まで、さまざまな従業員がデータを自ら管理できるようにするため、Slack を基にしたソリューションを開発する課題を与えました。

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その結果、Apple のデジタルアシスタント Siri や Amazon の Alexa から一部着想を得て、「Hearst Answers」=略して「HANS」が生まれました。HANS ボットは、「昨日の Elle で最もよいパフォーマンスを見せたストーリーは何でしたか?」などの自然言語を理解することができ、技術チーム以外の社員にとっても使いやすくなっています。その使いやすいインターフェイスの裏では、HANS が 7 種類のソースから情報を統合して 40 件のカスタマイズ可能なレポートを提供しています。わざわざ別の新たなダッシュボードにログインする代わりに、ボットの 1,500 人のユーザーは直接 Slack 内で情報を簡単に集めることができるのです。

ほんの数分という短い間に、ユーザーは HANS に話題のトピックや、そのトピックで Hearst ブランドが過去に公開したストーリーを聞き出し、各ストーリーのその時のパフォーマンスを調べることができます。取締役は、数回のキー操作で部門全体のレポートを引き出すことができます。そして、出版社は E コマースで最も収益を生み出している製品やストーリーを一目で特定することができるのです。「HANS でユーザーがしなければならなかった手作業を減らし、時間を大幅に節約することができます」と Hearst Magazines のシニアプロダクトマネージャー、Sara Sheehan さんは語ります。彼女のユーザーデータでは、従業員が HANS によって平均 1 日 1 時間を節約しているとの結果が出ています。

How Hearst uses HANS in Slack

HANS ボットの好影響は時間の節約だけではありません。部門全体の従業員たちが、より情報に基づいた決断を下すために必要なデータに簡単にアクセスできるわけです。Packer さんは、HANS を使用するすべてのチームのうち、編集部が「データに最も強いこだわりを持っている」と語ります。「編集部は、コンテンツを公開するとすぐにデータを HANS に追加します。常に情報が流れ、目まぐるしく動いています」。

編集チームでは、投稿に関する作業の進行方法を話し合っている時、ボットに相談します。「ボットを導入して以来、15 秒以内のすばやい決断が可能になりました」と Kanai さん。瞬時の状況分析がもたらす価値を認識している彼女は、「決断を裏付けるデータがあることで、当社の編集者は読者に適切な内容かどうかを多方面から判断することができます」と説明します。

これらのインサイトは、部門全体の大きな利益につながっています。2019 年 12 月、Hearst は 3 億 6,100 万人のユニークビジターを獲得し、同社のデジタルサイトへのアクセス量において新記録を出しました。E コマースの収益源は事業全体で成長しており、YouTube の視聴回数は 50% 近くも増加しました。こういった進展のいくつかにおいて、HANS が直接的な役割を果たしました。ボットには毎週 3,800 件以上の問い合わせがあり、ブランド全体で生み出された E コマースにおける記事の収益は、HANS 導入以来ほぼ 3 倍になったと Solomon さんは言います。

HANS ボットでワークフローを効率化する方法 :

  • 編集インサイト :  ユーザーが HANS にその日の最注目のコンテンツを尋ね、すばやく情報に基づいた判断をするためにトラフィックデータを詳しく確認し、情報を収集します。
  • 製品のパフォーマンス :  ユーザーはブランド間のコンテンツシンジケーションで最も利益を生み出すアフィリエイトリンクの一覧をすばやく引き出すことができます。
  • 事業計画概要 :  多忙な経営陣は、HANS に概要の「厳選点」を尋ね、パフォーマンスが最も高いコンテンツ、コマース、動画、そしてソーシャルメディアの投稿を大まかに確認します。
  • 新規採用情報 :  新しい従業員は HANS に Hearst の休暇ポリシーなどの情報が見つかる場所を聞くことができます。シンプルかつ簡単に使えるインターフェイスで、早期導入を加速させます。

HANS を常に関連性の高い状態にしておくため、Sheehan さんはボットを最もよく利用するユーザーとの月 1 回のフォーラムを開催し、疑問点や新しい機能、将来の展望について話し合っています。ボットを構築する際、製品チームは従業員の質問をキャプチャするログを使用できるようにしました。「それが自由型チャットウィンドウのいいところです」と Solomon さん。「ユーザーがどんな製品を求めているかをそのまま伝えることができるので、ユーザー自体のサービスの中で具体化することができます」。

「私たちの周りにはデータツール、コマース用クリエイティブコンテンツ作成ツールや出版ツールなど、数多くのツールが溢れています。HANS ボットを使用すれば、Slack でそのすべてを一元化することができるのです」

Hearst MagazinesProduct DirectorZack Packer 氏

よりよいコンテンツを作るためのブランドを超えたコラボレーション

Hearst Magazines のように多くのブランドを持つ会社では、チームが孤立したままで(サイロ型構造)、気づかないうちに情報をチーム内に溜め込みがちになります。4 年前に Slack が導入され、3,000 人以上のユーザーにとって必要不可欠なナレッジ共有ツールとなったことで、特に印刷チームとデジタルチーム間のコラボレーションで新たな道が切り開かれました。「印刷チームとデジタルチームを連携させ、より密に連携できるようにしたことで、非常に大きなメリットがありました」と Siegel さんは語ります。「Slack は、これまでできなかったコミュニケーションを実現してくれました」。

Slack の導入により、Hearst Magazines の 300 人の編集者は、大手出版企業におけるそのユニークな立場をコンテンツの強化に活用できるようになりました。「すべての編集者がほかのエディターのアナリティクスにアクセスすることができます」と Siegel さんは説明します。「そのため、Cosmopolitan を毎月読む 4,000 万人だけでなく、Men’s Health を毎月読む 2,000 万人の読者からも学ぶことができるのです」。 例えば Men’s Health の編集者は、Cosmopolitan の読者が「Toxic masculinity(有毒な男らしさ)」に関するストーリーにどのように反応しているかを確認し、それを自社のコンテンツに活用していくことができます。または、Women’s Health が O, The Oprah Magazine とコラボレーションして、有色人種の女性のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)に及ぼす影響についてストーリーに取り組むこともできるわけです。

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また、Slack は物流面やチーム・ブランド間の体系化にも役立っています。Kanai さんは Hearst Magazines でチーフファッションディレクターとしてチームを指揮していた当時、クリエイティブディレクターや写真家との連携が欠かせないプロジェクトを統括していくうえで Slack を活用しました。「Slack で、私たちのコミュニケーション能力が大幅に向上しました」と Kanai さん。ムードボードから画像の選別、レタッチ用のメモまで、すべてが Slack で効率化されている今と比べ、「それまでは Slack なしにプロジェクトをこなしていたのが信じられない気持ちです」と振り返ります。「メールへの画像の添付が、まるで石碑に彫刻することのように思えますね」。

Hearst の編集チームは、会話やプロジェクトを整理できる Slack のデジタルスペース、チャンネルを活用して業務を進めています。広く使用されているチャンネルは次のとおりです。

  • #cover-production(#カバー-プロダクション) :  セレブのスケジュール予約から、彼らのお気に入りの M&M’s の確認まで、カバー撮影における制作要素すべてをこのチャンネルを使ってまとめ、調整しています。
  • #ecomm(#E コマース) :  このチャンネルはブランド間の枠を超えて活用されており、部門内のチームすべてに Hearst の読者の心を掴むような最新プロモーションやオファー情報を届けています。
  • #cosmo-US-edit(#cosmo-米国-編集部) :  各ブランドにはそれぞれ独自のチャンネルが設けられていますが、これらチャンネルはほかのチームもアクセスできるようになっています。インターナショナル版 Cosmopolitan の編集者たちは、このチャンネルを確認してアメリカ版の状況を把握することができます。

「編集者にとっても、Slack は垣根を超えた連携を可能にしてくれました。人材を分断させてしまうサイロ(縦割り)構造を打破するためにも、そのようなコミュニケーションは本当に貴重です」

Hearst MagazinesVice President of ContentBrooke Siegel 氏

思わずクリックしたくなるコンテンツを作るため現状を把握

お互いのデータとインサイトに簡単にアクセスできることで、編集者たちはアイデアのクラウドソーシングおよび査定を効果的に実施し最新のコンテンツを作ることができます。「創造性というのは集団思考には大きなつながりがあると思います。Slack ではさらに多くのメンバーを巻き込んでそのみなぎるエネルギーをどんどん活かしていくことができます」と Siegel さんは語ります。Hearst Magazines では、このブレインストーミングのアプローチを Slack Law と呼んでいるそうです。

Slack Law では、強い関心を引くアイデア、トピック、質問が認識されています。「当社の編集者が Slack 上の会話で十分に盛り上がっている場合は、そこにストーリーがあるということです」と Siegel さん。例えば、Popular Mechanics のチャンネルで世間を沸かせている数学問題の話が持ち上がり、「あらゆるメンバーがその解答方法、どの科学者や研究者に相談するかで熱い議論を繰り広げていました」。 そこでチャンネルからその話題を引き抜いて、オンライン上でストーリーとして公開したところ、非常によい反応が得られたんです。「Slack 内で話題となって編集者たちをも引き込むようなストーリーなら、きっと読者の心を掴む内容になるはずだとわかるんです」と Siegel さんは続けます。

疑問があれば、編集者が質問とトピックを読者に直接投げ掛けます。オンラインストーリーに関する投票を挿入して、ポルカドットか格子柄、This Is Us をライブかストリーミングサービスのどちらで鑑賞するか、ウェブサイト訪問者に聞くことができます。その結果は、また HANS に送信されます。上記の方法で読者の感情をすばやく読み取ることで、コンテンツ戦略を立て、時間のかかるフォーカスグループに別の手軽な方法を届けることができるのです。

Slack と HANS の導入により Hearst Magazines の組織的な体系を取り払ったことで、透明性やコラボレーション、コミュニケーションを促進する、より効率的でクリエイティブな雰囲気を実現することができました。この変化によって、編集者は読者が心待ちにするコンテンツを作成できるようになり、これを裏付けるデータの確認も可能になりました。