日本の株式会社 NTT ドコモのユーザー数は 7,900 万人以上。これだけ多くのユーザーが同社のビデオ、電話、メールの高速サービスを利用しています。国内最大手の電気通信事業者である NTT ドコモの「ドコモ」は、日本語の「どこでも」から来ており、信頼できる 5G ネットワークの開発で世界をリードする同社にふさわしい名称です。
日本電信電話株式会社(NTT)の子会社である同社では、グループ合計で 27,000 人以上の従業員が働いています。NTT ドコモ単体の従業員数は 8,100 人です。1992 年に設立された、業界の先駆者である同社は多数の部門と部署を抱え、それぞれに複雑な IT インフラストラクチャがあります。同社では、膨大な顧客情報を保護するために必要な厳格なセキュリティポリシーに対応するために、メールや社内のコミュニケーショツールなど、そのほとんどの業務システムを自社で構築しています。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅勤務に方向転換すると、限られた内製のツールセットでは事業を前に進めることが難しくなりました。
幸い、NTT ドコモの R&D イノベーション本部イノベーション統括部では、2019 年の早い時期に Slack が実験的に導入されていました。このチャンネルベースのメッセージプラットフォームにより、NTT ドコモはリモートワークにスムーズに移行し、組織のアジリティを向上させ、社内チーム間の連携を維持できました。また、社外パートナーとつながり続けることも可能でした。
先頭に立ってこの戦略を推進したのは、NTT ドコモのイノベーション統括部クラウドソリューション担当の中村拓哉さんです。「リモートワークへの移行と Slack により、コミュニケーションだけでなく、組織文化も変革できました。Slack を使うことで、オープンで上下の隔たりのないコミュニケーションを実現できました」と中村さんは話します。
「新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴い必要になったリモート環境により、これまでよりも優れたツールが必要になりました。その結果、Slack のユーザー数が飛躍的に増え、社内のコミュニケーション文化が根本から変わりました」
高水準のセキュリティを保ちつつ、社外パートナーとのやり取りを迅速化
以前、NTT ドコモのイノベーション統括部では、メールや電話を使って外部の組織とやり取りしていました。この方法はやり取りに時間がかかり、ばらばらに行われるため、やり取りの内容を 1 か所にまとめることができず、社内で情報を見つけにくくなっていました。
中村さんはさまざまなツールの導入を検討しましたが、NTT ドコモの社内規定は厳しく、新しいサービスを導入する場合には、厳しい審査をクリアし、会社のセキュリティポリシーを遵守していることを証明する必要がありました。
コロナ禍の直前に導入した Slack Enterprise Grid は、パスワードに関する厳しい要件、アクセスログの保管期間、第三者認証の取得状況の確認など、200 項目以上におよぶセキュリティポリシーをすべてクリアしました。これにより、NTT ドコモは高水準のセキュリティを維持しながら、社内のみならず、外部とのやり取りも迅速化できました。
「セキュリティや監査などのガバナンスの視点や、分散管理が可能という点から考えると、Slack Enterprise Grid の採用が不可欠でした」と中村さんは話します。
「世の中にコミュニケーションツールは多数ありますが、システムアラートの通知や API 連携などに対応していて、エンジニア界隈でのデファクトスタンダードとも言える Slack を選ぶのは必然と言えました」
メールから Slack に移行することで、作業負荷が 70% 減少
2019 年より前の NTT ドコモでは、重要なメッセージはサイロ化したメールスレッドに埋もれ、従業員は何時間もかけてそれらのメッセージに返信したり、ごちゃごちゃした中から重要な情報を探し出したりしていました。2019 年 10 月、NTT ドコモは、R&D イノベーション本部以外のほかの部門にも Slack を展開しました。
今では社内のコミュニケーションは Slack チャンネルに整理されています。このチャンネルは、メッセージ、ツール、ファイルを共有できるデジタルスペースです。メールに欠かせない文頭や文末の挨拶に時間をかけるのではなく、従業員は絵文字ひとつでリアクションを伝えることができます。また、カスタム絵文字も自分たちで作成しているようです。NTT ドコモの多くの従業員は、特に絵文字に親しんでいます。というのも、1999 年、同社は長く親しまれている表現力の豊かな視覚言語を応用し、世界で初めて携帯電話用の絵文字を 176 個発表しました。絵文字は、今ではモバイルメッセージの定番となっています。
あふれかえる受信トレイからの脱却に本腰を入れた NTT ドコモは、チームにメールを Slack に送信することを推奨しました。仕事上のやり取りを 1 か所にまとめたい場合、社内の問い合わせを受け取るためのメーリングリストに Slack メールアドレスを登録するだけで、受信メッセージが Slack に自動的に表示されます。
NTT ドコモは Slack で従業員をサポートすることで、信頼関係を構築し、チームの絆を強め、組織全体のやる気を維持しています。2019 年の後半に行われた社内アンケートで、NTT ドコモの回答者の 56% が「ほかのチームに質問や依頼をしやすくなった」と回答しました。また、58% が「部門間のコミュニケーションがスムーズになった」、70% が「作業負荷が減った」と回答しました。
「ある部門では、Slack の導入によって部門間やチーム間のコミュニケーションのハードルが下がったと回答した従業員が半数以上に上りました」
協調的で前向きな文化を構築
2019 年後半、「Slack には変える力がありそうだ」といううわさが社内に広まった後、NTT ドコモの従業員は在宅勤務になり、Slack の定着が一気に加速しました。新しいやり方で活気を取り戻した同社は、コミュニケーションと組織の最新の文化を取り入れるようになりました。
例えば#docomo-random
(#ドコモ-random)Slack チャンネルでは、Slack のベストプラクティスからリモートワークのコツまで、いろいろな話で盛り上がっています。各メッセージへの絵文字リアクションにより、経験を共有することでほかにはないつながりを生む環境への強い関心がうかがえます。ほかにも、#lets-speak-english
(#英語で話そう)、#people-who-like-rugby
(#ラグビーが好きな人)など、50 件以上のソーシャルチャンネルが作成され、さまざまなコミュニティが形成されています。
絵文字リアクションは大好評です。従業員は精神的な負担の少ない新しい方法で発言できます。ミーティングや集団の前だと質問するのをためらっていた人たちが、参加するようになりました。より協調的なアプローチが支持され、従来あった上下の隔たりがなくなってきています。
「組織の企業文化の改革はすぐに実現できるものではなく、まだまだ道半ばです。今後も Slack の展開と企業文化の発展に真摯に取り組んでいきたいと思います」と中村さんは語ります。
中村さんは、今後、NTT ドコモの従業員の Slack 使用率を 100% にし、従業員が仕事をしやすくなるだけでなく、社外パートナーや NTT ドコモの多数のユーザーにとってメリットのある組織のアジリティを実現するつもりだと話しています。