「ビジネス向けのケータリングをもっと簡単でスムーズなものにしたい」。そんなこれまで見過ごされてきたニーズから誕生したのが ezCater です。どの業界でも毎日のように発生しているのが、会議やイベント、オフィスでの会食などへの食事の手配。これは「最高ケータリング責任者」という肩書をもつ人がいてもいいくらいの重要な仕事です。しかもパンデミックにより、食事の手配はさらに複雑になりました。職場で食をともにすることの重要性が増す一方で、出社人数が日によって変動するなか、その提供はますます簡単ではなくなっています。
「職場における食の価値が変わってきました」と話すのは、Chief Technology Officer を務める Erin DeCesare 氏です。「オフィスに出社する日が限られるようになるなか、食事をともにすることは、単なる利便性にとどまらず、共同体を育むうえでも重要な役割を果たすようになっています」
職場での食事の手配は、思うほど簡単ではありません。どこに注文する?どれくらいの量が必要?時間どおりに届かなかったら?期待したものではなかったら?……など心配は尽きません。さらに味の好みや社内ルール、予算なども考えなければならないとなると、たいへんな作業になってしまいます。ezCater なら、そのような手間を解決できます。その秘密は、20 年近いケータリング実績から得られたデータ、10 万店を超える提携レストランのネットワーク、そしてビジネスの基本システムとして Slack を活用した仕組みにあります。
ezCater では、コミュニケーションも、従業員同士の連携も、仕事の調整も、ほぼすべてが Slack 上で完結しています。チームは 950 を超える Slack チャンネルで業務を行い、600 のワークフロー、120 を超えるインテグレーション、160 の Slack コネクトチャンネルを活用。ハドルミーティング、クリップ、リスト、canvas といった機能も使いこなしています。最近では、Slack AI や Salesforce の AI エージェントレイヤーである Agentforce も取り入れています。
同社で Enterprise Architect を務める Chris Puzzo 氏は「私たちにとって Slack は職場の OS のような存在です。ですから、Agentforce も自然に受け入れられています」と話します。Slack から直接アクセスできる Agentforce は、ezCater にとっていつでもすぐに頼れるデジタル労働力になっています。「Slack と Agentforce の組み合わせによって何が起こるか、本当にワクワクしています。これは私たちが AI エージェントの新時代に自信をもって踏み出すための大きな力になるでしょう。社内の業務はすべて Slack 上で行われているので、作業効率の向上はもちろん、業務知識の集約にもつながるはずです」

「Agentforce は、あらゆるデータを理解して、推論を行い、Slack 上で先を見越した提案をリアルタイムに行ってくれます。まるで全員に専属のアシスタントが何人もついているようなものですね」
新たなツールを導入することなく、デジタル労働力が無限大に
ezCater は、Slack と Agentforce の組み合わせにより、特別なスキルの必要なく、従業員が慣れ親しんだ環境で AI による支援を業務に取り入れられると考えています。「Slack で Agentforce を利用することで、職場向けの食事の注文という複雑な業務に取り組むメンバーが、システムをテストし、改良していけます」と Puzzo 氏は言います。「Slack なら、新たなツールを導入する必要なく、まるでチームの一員のように AI とやり取りできます」
たとえば、ある顧客が「来週の大きな会議のためにランチを手配したい」とリクエストしたとしましょう。Agentforce はその顧客の注文履歴から、料理の好みや予算、参加人数といった情報を得て、数十のレストランの中から候補をすばやく絞り込み、担当者におすすめを提案します。カスタマーサービス部門のシニアマネージャーを務める Stephanie Litke-Avery 氏はこう話します。「Agentforce はこうしたデータを裏で一気に処理し、最適な選択肢をすぐに提示してくれます。節約できた時間で、カスタマーサービス担当者は本来の強みを活かせる仕事に注力できます」
Slack は業務フローを効率化するだけでなく、将来的な機能拡張のための土台にもなっています。「Slack のおかげで、AI エージェントを活用した働き方へ、自然な形で移行できるでしょう」と Puzzo 氏は言います。たとえば、ezCater では顧客への補償対応に 1 件あたり約 20 分かかることがあり、サポート担当者の負担が課題になっていました。そこで同社は Slack と協力して、Agentforce を使って補償業務を支援する AI エージェントを開発。社内で試験運用を進めています。
「Slack のサービスチームは、私たちのビジョンをたった 5 週間で形にしてくれました」と Puzzo 氏。この AI エージェントは ezCater のポリシーに従い、あらかじめ定められた補償レベルに基づいて、顧客への提案を行います。たとえば、配達が遅れ、しかも途中で中身がこぼれてしまったというケースの場合、AI エージェントが同社のガイドラインに沿って割引を提示します。また、より柔軟で手厚い対応が求められるケース、たとえば、ユーザーがサムズダウンの絵文字でフィードバックを送った場合、AI エージェントはこれを例外対応が必要なサインと認識し、その後の対応を調整します。
「AI やエージェントの導入というと、難しそうに感じられるかもしれません。でもその本質はシンプルです。何をしてほしいかを自然な言葉で Slack の Agentforce に伝えるだけでいいのです。実際に私たちのチームでも、この技術を簡単に取り入れて使いこなしています。組織全体で利用が広がり、役立っているのを見るとワクワクしますね」
ezCater は今後、Agentforce と Slack を実験の場として活用し、さらにソリューションを洗練させようとしています。「まだ始まったばかりです。Slack がカスタマーサービスの自然なハブになっていくにつれて、活用の幅も広がっていくでしょう。カスタマーサービス担当者だけでなく、アカウントマネージャーや他の部門にも、その恩恵を広げられるはずです」と Puzzo 氏は話します。「Agentforce の活用により、ezCater のマーケットプレイスの供給側と利用側をつなぎ、顧客情報、CRM、業務データをすべて 1 つのプラットフォーム上で扱えるようにしたいと思っています」