Intuit QuickBooks は簿記や給与計算などあらゆる経理業務に欠かせないツールで、 チョコレート店からジャズクラブのオーナーまで、700 万人以上の顧客に愛用されています。そうした顧客が期待するのは、24 時間年中無休で利用できる迅速で好感度の高いカスタマーサポートです。
サポート依頼のスピードや頻度が高まるなか、それらに対応するための解決策はサポート担当者を増やすだけではありません。実際に QuickBooks では、チャンネルベースのメッセージプラットフォームである Slack で仕事をスマートに進めています。
「盤石なサポートエコシステム構築を推進するために、人工知能(AI)と Slack、さらに社内の製品エキスパートの力を活用したいと考えていました」と振り返るのは、QuickBooks の Customer Success で Digital Lead を務めていた Omer Khan 氏です。さらに顧客満足度の指標であるネットプロモータースコア(NPS)の改善も重要でした。
そこで QuickBooks が活用したのが、メッセージやツール、ファイルを共有できるデジタル空間である Slack チャンネルとカスタム Slack ボットです。これらを使ってサポートチームの総力を結集した結果、次の成果を得ることができました。
- 瞬く間に担当者の自信が 20% 向上
- カスタマーサポートのケース解決時間が 36% 減少し、担当者の時間を年間 9,000 時間節約
- 約 6 か月で NPS スコアが 12% 向上
この記事では、Khan 氏が Slack の年次カンファレンス SlackFrontiers で語った Slack 活用効果をまとめました。QuickBooks が Slack 主導のアプローチでどのように新たな学習機会を得て、社内のナレッジ共有を進め、チームの士気を高めたのか見てみましょう。
Slack と Quincy ボットでケースの解決時間を 36% 短縮
サポートチームでは以前より Slack を利用していたものの、効果的に使っているとは言えませんでした。当時の担当者は、1 つの問題解決に必要な情報を見つけるために複数のアプリを操作していました。その結果、データがすぐに断片化されるだけでなく、マネージャーはインサイトを得られず、担当者の満足度も低い状態でした。そのうえ、チームワーク評価の中心となる場もなかったのです。
Kahn 氏はこうした状況を受けて、「Slack をワンストップショップ、つまり、あらゆる質問の答えが見つかり、担当者がより効果的・効率的に仕事を進められる場所にしたかった」と言います。
その実現のために活躍したのが Quincy ボットです。QuickBooks が開発したこのボットは、AI を活用して担当者の質問に対応するというもので、今年の頭には質問の 10~15% を解決していました。そこでこの Quincy ボットを Slack に連携させたのです。
「これにより、担当者は Slack でいつでも Quincy に直接質問できるようになりました」と、Khan 氏は話します。その後同社のナレッジベースが大きくなり、機械学習アルゴリズムが発達するにつれて、Quincy の価値も急速に高まりました。
「今では Quincy が質問の 60% に対応しています」と Khan 氏は続けます。「これまで何度も同じ質問に答えるために、繰り返し行わなければならなかったことを考えると、途方もない時間や手間の節約になっています」。
その結果、以前はケースの解決に 2 日かかっていたところが今では 1.2 日になりました。Quincy のおかげで解決時間が 36% も減少したのです。「年間で計算すると、担当者が節約した時間は 9,000 時間にもなります」と、Khan 氏は説明します。
「以前はケースの解決に 2 日かかっていましたが、Slack で Quincy ボットを使ったおかげで、その時間が 36% 減少しました。年間で計算すると、担当者が節約した時間は 9,000 時間にもなります」
検索可能なナレッジベースで顧客の時間を 2,000 時間節約
担当者が Quincy で答えを見つけられない時は、Slack 用 atSpoke アプリを使ってチケットを発行します。すると、そのケースに「プロダクトチャンピオン」と呼ばれる分野のエキスパートが割り当てられます。
「プロダクトチャンピオンが Slack 上で質問し、ニーズを理解して、サポートを提供するのにかかる時間は 60~90 秒です」と、Khan 氏は話します。
これによって担当者の問題が解決されただけではなく、検索可能なナレッジベースを段階的なプロセスのなかで活用することで、解決のスピードアップにつながりました。また顧客が求める情報と対応する担当者が備えるコンテンツのギャップを、マネージャーが把握するのも簡単です。
QuickBooks では、その情報をもとにコンテンツハッカソンを定期開催して未解決の問い合わせを評価し、選んだケースにとことん取り組んで解決策を提供しています。そうして新たに拡充されたコンテンツは、Quincy ボット(担当者用)と QB Assistant(顧客向けボット)の両方に取り込まれます。
こうして進化するデータドリブンなナレッジライブラリをさっと利用できるため、顧客は速やかに本来のビジネスに戻ることができます。「適切な情報を適切なタイミングで提供することで、顧客の時間を 2,000 時間節約できました」。
担当者の自信が 20% 向上し、NPS も 12% 向上
チームの学習と能力開発に関しては、「正式なトレーニングから学ぶ人が 10%、同僚から学ぶ人が 20%、実務経験または OJT から学ぶ人が 70%」というのが Khan 氏の認識です。 そこで Khan 氏は、担当者を通常業務から外してトレーニングに終日参加させるのではなく、Slack エコシステムを活用して、顧客対応を通じて学べる機会を増やすことにしました。
担当者が顧客に対してケースの解決に必要な質問をしなかった場合、プロダクトチャンピオンは Slack でダイレクトメッセージを送るか、Slack コールで担当者と 1~2 分話して、次に似たケースが発生した時のために解決法を提示します。どちらも経緯をよく把握しているため、こうしたセッションは特に効率的です。
「毎日何百件もの問い合わせがあり、こうしたマイクロコーチングの機会がたくさん生まれます。これにより、当社が備えるスキルがかつてないレベルにまで押し上げられるのです」と、Khan 氏は説明します。また Khan 氏はチームの士気や自信を定期的に測定しているのですが、そこにも大きな効果が表れているようです。
「以前は、顧客をサポートする自信の度合いは担当者全体で約 60% でした」と、Khan 氏は続けます。「それが Slack エコシステムができると、あっと言う間に 20% も跳ね上がり、80% になりました。自信は伝染するものですから、これは大きな勝利です」。
QuickBooks は Slack の活用によって 、担当者の自信向上、問題解決の迅速化、ワークフローの合理化という 3 つの成果を達成しました。さらに Khan 氏は、「Slack の実装後、NPS も 12% 向上しました」と話します。「今後も、担当者と顧客両方にとっての成果を効果的に推進していく予定です」。
Slack は世界中でカスタマーサポートの改善に貢献しています。詳しくは次の事例もぜひ参照してください。