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MTA New York City Transit が Slack で交通サービスをレベルアップ

「チームやレベル、業務環境を問わず、あらゆる従業員にとって使いやすいツールを導入することは、職場のサイロ化を解消してコラボレーションを高めるうえでとても重要です」

Metropolitan Transit AuthorityChief Customer OfficerSarah Meyer 氏

北米最大の公共交通機関である Metropolitan Transit Authority(MTA)の New York City Transit(NYCT)は、地下鉄、鉄道、バス路線の広大な交通網を通じて、毎日 550 万人の足となる大役を担ってきました。ところが 2020 年頭にアメリカで新型コロナウイルス感染症が拡大し始めると、ニューヨーク市の交通ニーズは数日で一変。同社はすぐさま状況に適応することを余儀なくされました。

そんな状況のなかで NYCT が取った対応は、乗客の安全を確保するためのプロセスを再構築することです。例えば列車やバスの運転士が感染によって休んだ場合は、利用客に対してサービスの変更に関する詳細情報を提供するようになりました。また 5 月からは集中消毒のために地下鉄の路線と駅構内を毎晩閉鎖したことで、不足した夜間の交通を補うべく、バスの新しい路線やルートを追加するなど代替サービスを拡充。さらに乗客が代替の交通機関を見つけるのに役立つアプリもリリースしました。

幸い同社には、このような変更を取りまとめて乗客に知らせるシステムがすでにありました。同社では 5 万人の従業員のコラボレーションを促進するために、2017 年 10 月に Slack を導入していたのです。その導入を牽引した Chief Customer Officer の Sarah Meyer 氏は、「私たちが 67 年間取り組んできたことは、今の環境では役に立ちません」と語ります。

Customer Communications Manager を務める Jed Poster 氏は、早期から Slack を使っていた 1 人です。カスタマーエクスペリエンスチームのメンバーである Poster 氏は、通勤客からいつも寄せられる「電車はいつ来るのか」という不満を解決する新たな方法を模索していました。 同社ではこれまで、3 つの異なるシステムからの最新情報をまとめて、利用客に通知していました。ただ信頼できる情報源が 1 か所にまとまっていないことで、重要な情報が抜け落ちていたのです。

この状況を変えたのが Slack です。今では、運転士から、操車係、駅構内の清掃担当者まで、誰もが Slack のモバイルアプリを使って本社のスタッフに最新情報をフィードバックしています。「私が知る限り、Slack はモバイルとデスクトップをまたいでシームレスに使える唯一のツールです」と、Poster 氏は話します。「スマホでもコンピューターでも同じエクスペリエンスを得られるため、どこからでも仕事ができるようになりました」。

こうして数年前に導入された Slack は、現在も変わらずチームの役に立っています。「今でも Slack は、地下鉄やバスの運行チームから入手した情報をまとめて利用客に伝えるのに欠かせません」と、Poster 氏は続けます。「それに加えて、このような前例のない状況のなかでインシデント対応をまとめてサービスを管理するためにも活用しています」。

運行を取り巻く状況は変わっても、NYCT が Slack を活用してチームの方向性を揃え、利用客へ情報を提供することに変わりはありません。「Slack が社内全体に浸透したことで、多様な経歴やスキルを持つメンバーが生産的な方法でやり取りし、全員の認識を揃えられるようになりました」。

「Slack が社内全体に浸透したことで、多様な経歴やスキルを持つメンバーが生産的な方法でやり取りし、全員の認識を揃えられるようになりました」

MTA New York City TransitCustomer Communications Manager Jed Poster 氏

リアルタイムの情報発信で、何百万人もの乗客に便利なサービスを

コロナ禍で、同社の Digital Communications Unit(DCU)などのチームはリモートワークに移行しました。幸いこの部門では、数年前に利用客とのコミュニケーションプロセスをいち早く Slack に移行していたため、リモート体制でも混乱なく最新情報の発信を続けることができました。

DCU では現場からの最新情報を処理する際に、複数のコンピューターシステムとさまざまな情報源を利用します。Slack の導入前は、操車係が問題や遅延を無線で知らせると、Rail Control Center(鉄道管制センター)のスタッフが慌てて最新情報を解析していました。

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写真 © MTA

そこで DCU がより正確な最新情報をよりタイムリーに提供するために使い始めたのが、Slack チャンネルです。このデジタルスペースでは、会話やプロジェクトを整理することができます。「Slack を導入する前は、インシデント情報には雑多な情報もたくさん入っていて、理解するのにずいぶん時間がかかっていました」と振り返るのは、MTA で Director of Digital Customer Experience を務める Josh Gee 氏です。「デジタルに現状を把握して、信頼できる唯一の情報源として発信できるツールを手に入れたことは、大きな転機になりました」。

NYCT の全路線に配属されている操車係は、Slack チャンネルに状況をリアルタイムで投稿します。それを受けてインシデントコミュニケーションの担当者は、影響を受ける路線や、影響の内容を示すカスタム絵文字を使ってまとめます。さらに DCU は、その最新情報から利用客向けのお知らせ文を作成。専用チャンネルでさまざまな部門の関係者を巻き込むことで、文面への承認を受けるのも簡単です。承認後、そのお知らせは MTA のウェブサイトやアプリ、システム内の画面、さらにソーシャルメディアで共有されます。

Slack チャンネルでは背景や経緯がすべて見えるため、DCU チームは利用客からの問い合わせにも方向性を揃えてすばやく対応できるようになりました。「Slack のおかげで、たとえパンデミックの最中でもタイムリーで役立つサービス情報とカスタマーケアを着実に提供できています」と、Poster 氏は話します。

「Slack を導入する前、インシデント情報には整理されていない雑多な情報が入り混じって、理解するのにずいぶん時間がかかっていました。デジタルに現状を把握して、信頼できる唯一の情報源として発信できるツールを手に入れたことは、大きな転機になりました」

MTA New York City TransitDirector of Digital Customer ExperienceJosh Gee 氏

現場から最新状況をリアルタイムで共有

コロナ禍が起こる前にも、MTA では Slack で複雑な移行を管理したことがありました。1 年前、L 線の補強と輸送量アップを図る大胆な計画として、L プロジェクトに着手したのです。プロジェクトを進めるうえでの調整はすべて、Slack チャンネルで行われました。

マンハッタンとブルックリン間を運行する L 線の 1 日の乗客数は、平均で約 22 万 5 千人です。2019 年 4 月、MTA は、2 つの区間を結ぶカナージートンネルの補修工事のために、夜間と週末の電車の本数を減らしました。その際、ほかの路線を使えない通勤者をサポートするために、MTA はその路線のすべてのホームに列車やホームの混雑などの問題を報告するスタッフを配置したのです。

当初のプロジェクトコミュニケーション計画ではトランシーバーを使うことになっていましたが、そこで問題が浮き上がってきました。トランシーバーだと現場のチームは本社と連絡を取り合うことができないうえ、すべての問題を 1 か所で把握することができなかったのです。そこで Poster 氏は、その代替手段として Slack を提案しました。

4 月 26 日に間引き運行が始まると、ホームのスタッフは Slack のモバイルアプリから #canarsiecoordinator(カナージーの調整)に問題を投稿。本社が状況を詳しく把握できるよう、写真やビデオも添付しました。Poster 氏は「チャンネルの設定はあっという間に終わり、現状を完全に把握できるようになりました」と振り返ります。

それからの 24 時間で、駅長からサービス責任者、運行計画担当者まで、あらゆる立場の何十人ものスタッフがチャンネルでインサイトや解決策を共有しました。またリアルタイムの情報が届くことで、NYCT はリソースを最も必要な場所にすばやく配置できるようになりました。

それからの 24 時間で、駅長からサービス責任者、運行計画担当者まで、あらゆる立場の何十人ものスタッフがチャンネルでインサイトや解決策を共有しました。またリアルタイムの情報が届くことで、NYCT はリソースを最も必要な場所にすばやく配置できるようになりました。

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MTA NYCT
チャンネル
ダイレクトメッセージ
canarsiecoordinator
MTA Canarsie coordinator
浅田 晶
ジェームズ・ハリス
相楽 健二
3
ジェームズ・ハリス10:55 AM

There's an overcrowding issue on the latest L line departure train to Manhattan. Pictures to follow, requesting insights. Thanks!

eyes3
高橋 さや11:00 AM

There are currently delays at this L line platform. Can we update public communications to let riders know, please?

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相楽 健二11:05 AM

Sharing a video in thread of an incident at this platform. Requesting immediate assistance.

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こうして #canarsiecoordinator(カナージーの調整)チャンネルはプロジェクト成功への布石となったほか、NYCT のスタッフの間で Slack の使用への関心が高まるきっかけになったのです。その間、Poster 氏のチームは社内での Slack 活用を進めながら、経営と利用客の両方にとって Slack を最も効果的に使う方法を取りまとめました。

「ただスタッフのスマホに Slack アプリをインストールしただけです。使い方を教える必要もありませんでした。#canarsiecoordinator(カナージーの調整)チャンネルを開けば、やるべきことがわかるとだけ伝えたのです」と、Poster 氏は説明します。

Slack の導入によって、NYCT ではチームの垣根を越えたコラボレーションが増えました。現在では全社の従業員が、情報共有のほか、利用客の問い合わせに専門の担当者を巻き込むために Slack チャンネルを活用しています。これにより、利用客にすばやく最新情報を提供し状況を認識してもらえるようになった一方で、利用客からリアルタイムで届くフィードバックを活かせる仕組みを作ることができました。また Slack モバイルアプリを活用し、MTA の地下鉄やバスで移動している際に気づいた問題を報告したり、現場のチームとやり取りしたりしています。

こうした効果について Meyer 氏は、「サイロ化を本質的に避けられる Slack のようなツールを導入した効果は絶大でした」と評価します。今では、現場や本社のスタッフが集めたナレッジを活用して、何百万人もの乗客によりよいサービスを提供できるようになりました。

マネージャーもまた、チャンネルを使って Slack でスタンドアップ・ミーティングを開催し、チームと毎日の優先タスクや課題、最新情報を共有しています。Gee 氏はチームのメンバーに毎日の優先タスクを入力してもらうために、ワークフロービルダーでカスタムワークフローを作成し、フォームへの入力リマインドが自動で送信されるようにしました。そのフォームはチャンネルに自動投稿されるため、誰もがチームが専念している分野を把握できます。

「サイロ化を本質的に避けられる Slack のようなツールを導入した効果は絶大でした」

MTA New York City TransitChief Customer OfficerSarah Meyer 氏

Slack コネクトでベンダーとのコミュニケーションをシンプルに

NYCT のカスタマーエクスペリエンスチームでは、乗客の利用体験を最適化するプロジェクトを外部の企業と一緒に進めることがよくあります。これまで社外パートナーとのコミュニケーションは、時間のかかる会議や長々としたメールのやり取りによってなかなか進まない場合がありました。それが今ではいつも使っている Slack ワークスペースSlack コネクトを通して、社外パートナーとチャンネルでリアルタイムにやり取りしています。

「以前は 3 日かけて 10 通のメールでやり取りしていた内容が、Slack コネクトなら午後だけでさっと終わります」と、Gee 氏は話します。

MTA が輸送コンサルティングを行う Cambridge Systematics と提携した時にも Slack コネクトが活躍しました。この提携は、リアルタイムの到着データや経路案内結果に関する乗客からの苦情のトラブルシューティングをすばやく行うためのもので、両社は Slack コネクトによってすばやいコミュニケーションを実現できました。「仕事の多くは、問題の対応順位の割り振りとトラブルシューティングです。このような場面では、Slack に勝るものはありません」と、Gee 氏は続けます。「データの問題について 30 分かけて考えてコンサルタントにメールし、さらにその返信を待つ必要はありません。Slack に問題を投稿して、リアルタイムで一緒に解決するだけです」。

MTA ではこの勢いに乗って Slack コネクトの活用を広げ、MTA のデータを扱うほかのパートナー企業にも導入することを計画しています。Cambridge Systematics やその他の社外パートナーを同じチャンネルにまとめれば、システムの問題に対して、さらにすばやいトラブルシューティングが可能になるからです。

さらに MTA では、Slack コネクトでデジタル製品の代理店と連携し、インタラクティブな路線図と新しいコンテンツ管理システムを構築しました。また主要都市のほかの交通機関ともチャンネルを共有し、参加メンバーとニュースや成功事例などを共有しています。

Gee 氏によると、同じ Slack チャンネルで複数の組織が自由に会話できることが、より有意義なパートナーシップを生むといいます。「特に交通機関や政府機関では、請負業者と発注元のコラボレーションは体系化された正式なものだと考えられがちです。でも Slack なら、最初から最後まで人と人とが有機的に効率よく仕事を進めていくことができるのです」。

Slack によって、MTA では社内のさまざまな部門や役職の従業員がつながり、コラボレーションし、利用者の体験向上について自分ごととして考えられるようになりました。その結果、同社では何百万人もの乗客に最新情報を効率よく提供し、よりよいサービスを実現しています。