日本一の家具産地で、その先頭を走る会社
関家具は、家具の生産地として知られる福岡県大川市に本社を置く家具の総合商社だ。全国の家具店、インテリアショップ、通販会社に一般家庭向けの家具を卸し、ホテルや飲食店、ハウスメーカー、オフィスの空間づくりも手がける。関家具大川本店、CRASHGATE、アトリエ木馬といった店舗も運営している。卸先は全国の家具店、インテリアショップ、通販会社、設計事務所を合わせて約4,000社にのぼる。
「もう、AIしかないんですよ」
円安は止まらず、素材も原油も値上がりを続けている。「全部が高くなるインフレの時代です」と春田社長は言う。
原価を抑える努力は、これまでも重ねてきた。良い製品をつくり、メーカーと交渉し、為替デリバティブも使う。それでも春田社長の視線は、さらにその先にある。
「粗利から販管費を引いて、残ったものが営業利益です。だから販管費のコントロールは、ものすごく大事なんです」
そして、販管費のなかで最も大きいのは人件費だ。
売上を伸ばしたいなら人は要る。けれど、人を増やしすぎれば利益は残らない。経営者なら誰もが向き合うこのジレンマに、春田社長は迷いなく答えを出した。
「なるべく人を増やしすぎずに効率よくやろうとすると、もうAIしかないんですよ」
こうして、全社の「DXプロジェクト」が動き出した。
毎月、数十万行。誰も気づかない重労働
春田社長がまず目を向けたのは、表からは見えにくい膨大な手作業だった。
得意先はおよそ4,000店舗ある。月末になると、4,000通の請求書と4,000通の支払明細が行き交う。しかも1通の中には100行、200行の明細が並ぶ。
「毎月何十万行を照らし合わせて、『1,000円足りないですよ』『1万円足りないですよ』と突き合わせる。これをやらないと違算が溜まっていくんです」
この作業を、今も人がひとつずつ手で照合している。会社が成長して得意先が増えるほど、その量は膨らんでいく。
運賃の処理も同じだった。家具を運ぶ運送会社は約30社あり、運んだ数だけ請求が届く。それを運送会社ごとに仕分けて照合しなければならない。
「普通に考えたら、これだけで60人ぐらい要るんじゃないか、という量です」
書かれない日報と、流れていく情報
課題は数字の照合だけではなかった。
商談の記録を残そうとすると、まず顧客ページを検索して開き、日時を選び、相手を選ぶ。相手が未登録なら登録画面に移り、人を登録してから戻ってくる。
「手間がかかるので、結局誰も書かないんです」
日々の連絡に使っていたコミュニケーションツールでも、情報は流れていく一方だった。話題は途中で変わり、遡って探してもたどり着けない。そのうえ誤送信のリスクもつきまとう。「送信を後から消せない。しかも送った相手が社外かもしれませんから」。
情報は確かにあるのに、どこにあるのかわからない。春田社長がSlackbotのデモに身を乗り出したのは、ちょうどそんな時期だった。
「うちだけのボックスがある」
Slackbotの何が、春田社長の心をつかんだのか。
「当社はAIをめちゃくちゃ使う会社です。だから『これは便利だぞ』と直感しました。外から何かを持ち込むわけでも、情報が外に出ていくわけでもない。この中で働いてくれる、うちだけのオリジナルのボックスがある。そう思ったら、『これはやりたい』となりました」
導入後、春田社長は自ら誰よりもSlackを使い倒している。
上海の商談会場から、粗利を弾く
春田社長には、社内でもあまり例のない使い方がある。
原価計算用のチャンネルを作り、愛用しているExcelの原価計算表を取り込んだ。
先日訪れた上海の展示会では、何十社ものメーカーと商談した。その場で得たメーカー名、商品名、ドル建ての価格、40フィートコンテナに入る個数、1個あたりの体積といった情報を、次々とそのチャンネルに書き込んでいく。
そして、Slackbotにこう尋ねる。
「この商品を〇〇円で売ったら、粗利は何%残る?」
答えはすぐに返ってくる。展示会で得た情報が、その場で仕入れの判断材料に変わる瞬間だ。
見積の比較も同じだ。同じテーブルを5社に見積もってもらい、「この品番のメーカー別比較をして」と頼む。
「以前はパソコンの中から見積書を1件ずつ探して、30分くらいかけて貼り付けて比べていました。今は10〜20秒でバチッと出てくる」
社長に、反対してくれる人(AI)
春田社長がSlackbotに任せているのは、データの処理だけではない。
「たまに、『今から言うことを全部批判してくれ』と頼むんです」
そう言って、春田社長は笑った。
「社長になると、なかなか反対してくれる人がいないんですよ。AIは意地でも穴を見つけてくる。ムカッとすることもあります。でも、大事なことなんです」
それでも、最後の判断はあくまで人が下すと春田社長は決めている。
「感性の部分、決めるところは人がやる。そこに至るまでの分析やデータ集めは、アシスタントを付けるよりAIに聞いたほうが早いですね」
マスターのいらない記録
Slackに移ってから、商談記録の残し方は一変した。
顧客ページを探す必要も、人を登録する必要もない。ただ書くだけでいい。顧客名やキーワードさえ入っていれば、あとでSlackbotが拾い上げてくれる。
「顧客マスターがそもそも要らない。まずそれが楽ですね」
書いた内容は消えずに残り、後から直すこともできる。話題はスレッドごとに深まっていく。今ではSlackbotをチャンネルの中で呼び出せるようになり、その回答がメンバー全員に共有される。
次の舞台は、100人の営業現場
現在、Slackを使っているのは幹部と部課長に限られる。春田社長の視線は、すでにその先を見ている。
「使ってみて思うのは、これは営業にこそめちゃくちゃ便利だということです。特に営業日報は、これでないとできない。電車で移動している間に、携帯から忘れないうちに書いておける。後から直すこともできますから」
かつて「誰も書かなかった」記録が、これからは約100人の営業から自然に集まってくるようになる。
インタビューの最後に、春田社長にとってSlackbotとはどんな存在かを尋ねた。
答えは、ひと言だった。
「東大卒の超優秀な秘書です」














