オープンイノベーションとは、企業が外部から技術やアイデアの提供を受けながら、新しいものを生み出すビジネスモデルです。連携する外部組織の例を挙げれば、スタートアップや中小企業、大学や研究機関、個人に至るまでさまざま。最近よく耳にする「アクセラレータープログラム」や「ハッカソン」も、企業が自社では出てこない発想を得て形にするためのオープンイノベーションの一種です。
企業にとってオープンイノベーションをするメリットは、自社にはないアイデアや技術を得ながら、新しいものを生み出せること。また参画するスタートアップや研究機関、個人にとっては、自分たちのアイデアや技術を形にするためのリソースを得られるまたとない機会です。
一方オープンイノベーションの事例についてリサーチすると、そのデメリットも少なからず挙げられているようです。今回は、特に気をつけたい点を 3 つ挙げながら、その解決策を見ていきましょう。
1. アイデア、技術、社内の情報流出を防ぐ
一緒にプロジェクトに取り組むうえで、情報共有は欠かせないもの。しかし、外部組織に無防備にすべての情報を共有することは避けなければなりませんし、双方が意図していないところで第三者に情報が流出してしまうリスクも防ぐ必要があります。
こうしたリスクを避けるためには、まずオープンイノベーションに適したコミュニケーション手段を選ぶことが肝心です。メールでは宛先に誰が入っているかを毎回しっかり確認しなければならないうえに、うっかり情報を流出させてしまう可能性があるため、ベストな手段とは言えません。情報共有のしやすさに加え、セキュリティが優れているツールを選ぶようにしましょう。
次に、プロジェクト内容に応じて「ここまでは共有して大丈夫」「ここから先は共有できない」という一線を明確にし、その決まりに沿ったコミュニケーションをとりましょう。例えば、1 つのプロジェクトのコミュニケーションでも、社外メンバーを含むグループと、社内メンバーのみのグループとに分けてコミュニケーションを進めること。社内と社外のグループを分けておくことで、情報共有の範囲を考えたり、迷ったりすることなくコミュニケーションを進められます。
2. コミュニケーションの負担増を避ける
コミュニケーションの方法は、組織によってそれぞれ。皆さんの会社での常識が、連携先の外部組織で通用するとは限りません。「いつも通りコミュニケーションをとっているはずなのに社外にはうまく伝わらない」というのはよくあること。
異なる文化を持つ組織が協調し、スムーズに連携するためには、まず各組織間でのコミュニケーション方法を整えること。ここでもやはりメールはおすすめできません。なぜならトピックや関係者の多さにより情報が錯綜してしまうことが考えられるからです。連携先の組織と使用するプラットフォームを決め、プロジェクトチームのコミュニケーションの拠点にすれば、そうした不安に煩わされることなくコミュニケーションに集中できます。
さらに、別々の場所で作業する時間が多いことを考えると、リモートでのコミュニケーションを前提に、最適な方法を選ぶ必要があります。面識のないメンバー同士で連帯感が生まれるかが気がかりな場合には、例えばプラットフォーム上でメンバーそれぞれの自己紹介を掲載してみるのはどうでしょう。プロジェクトや所属する組織での役割など、仕事に直結することから、息抜きの方法やハマっているお菓子など、それ以外の内容まで含めて紹介してみるのもいいかもしれません。顔が見えなくても、アイデア次第でオンラインならではのコミュニケーションを活かし、楽しむことができます。
3. ビジョンがずれないようにする
プロジェクトの実行中、問題に気づいて方向を微調整するのはよくあること。そうした軌道修正のたびに再確認したいのは、プロジェクトのゴール、生み出したい価値についてメンバーの理解が一致していることです。これは社内プロジェクトであっても気をつけたいことですが、外部組織と連携しながらの場合にはいっそう配慮しながら進めたいところです。
チームにプロジェクト全体のビジョンを共有し、認識のずれが起こらないようにするには、オープンな情報共有が重要なカギの 1 つです。各メンバーがプロジェクト全体の動きを把握できるようになると、プロジェクト初期から最終フェーズまで、常に自分のタスクを全体の流れのなかで位置づけながら進めることができるからです。そして全体の動きを理解することで、それぞれが全体像をアップデートし、その時々の自分の仕事の意味もより明確に捉えることができるはずです。
オープンイノベーションの魅力は、新しい試みで新しい価値を生み出すことです。オープンイノベーションの前例にとらわれすぎることなく、しかし同時に、前例から学べるリスクについては事前にしっかり把握し、対策を立てながら進められると良いでしょう。