ビジネスにはさまざまなトラブルが付き物です。そのようなトラブルに、適切に対処できることも、企業やブランドの信頼を構築するうえで欠かせない要素のひとつといえるでしょう。
今回は、トラブル対策のひとつである「エスカレーション」について解説します。エスカレーションフローの策定方法や実施するポイントを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
エスカレーションとはトラブル対策のひとつ
エスカレーションとはトラブル対策のひとつで、担当者レベルでは対処できない事態が生じた際に対応を上長に委ねることを指します。本来、escalation は「上昇」という意味を表す英語です。部下から上長へと対応の段階が上がることから、上長に対応を委ねることをエスカレーションと呼ぶようになったと考えられます。
ビジネスによってエスカレーションが異なる
エスカレーションの基本的な意味は前述のとおりですが、ビジネスの分野や職種によってエスカレーションのニュアンスが少しずつ異なるケースがあります。ここでは、主な例として、エスカレーションの 5 種類の意味を見ていきましょう。
一般企業のエスカレーション
一般企業におけるエスカレーションとは、担当者レベルでは判断が難しい状況が発生した際、上長に報告して指示を仰ぐことを指します。通常とは異なる事態に遭遇した場合や、トラブルに発展しかねない状況が生じた際には、担当者が安易に判断せず、エスカレーションによって上長に指示を仰ぐことが大切です。
接客やサービス業のエスカレーション
接客やサービス業におけるエスカレーションは、主にクレーム処理が困難な場合に上司に対応してもらうことを指します。無理難題を要求してくる顧客や、説明しても納得しない顧客であっても、責任ある立場の人物が対応することで冷静に話を聞いてもらえる場合もあります。
コールセンターのエスカレーション
コールセンターなどで、担当オペレーターでは対応できない質問を受けた際などに、上司に電話を転送して対応してもらうことをエスカレーションと呼ぶ場合があります。対応マニュアルには記載されていないイレギュラーな対応が必要な場合には、曖昧に返答せず積極的にエスカレーションを行うよう指導しているコールセンターも少なくありません。
IT 業界のエスカレーション
IT 業界におけるエスカレーションとは、担当者の技術的な知識が不足している場合などに上司や管理者へ確認し、対応を依頼することです。また、作業の対象を広げ、トラブル対応の段階を引き上げることをエスカレーションと呼ぶ場合もあるため、使い分けに注意が必要です。
システムエンジニアのエスカレーション
システムにトラブルが発生した際などに、システムエンジニアがトラブル発生の事実や対応状況についてクライアントに報告することをエスカレーションと呼ぶ場合があります。この場合、対象が上長ではなくクライアントである点に注意してください。
エスカレーションフローの策定
エスカレーションは場当たり的に判断するのではなく、あらかじめ決めたフローに沿って対応することが大切です。エスカレーションフローを策定する際の手順について見ていきましょう。
1. エスカレーションが必要となるインシデントを規定する
どのような場面でエスカレーションが必要となるのか、さまざまな状況を想定したうえで規定を設けておきましょう。エスカレーションは主に、不測の事態や業務上のトラブルといったインシデントが発生した際に必要です。エスカレーションが必要とされる場面を担当者の判断に委ねてしまうと、人によって判断のレベルが異なったり、必要と判断する場面にずれが生じたりしがちです。具体的な場面を想定しておくことで、エスカレーションが必要な状況が発生した際に担当者が躊躇することなく上長へ報告しやすくなります。
2. インシデントをレベル分けする
発生し得るインシデントを緊急度や重要度などに応じてレベル分けします。あまり細かく分けすぎてしまうとわかりにくくなるため、4 段階程度に分けるのがおすすめです。
また、緊急度・重要度によって「課長に報告」「部長に報告」のように、エスカレーション先を変える方法もあります。
3. エスカレーションのルートを決める
エスカレーションをする際に、どのような手段で報告するのかを決めておくことも大切です。具体的な連絡手段と併せて、対象者が不在だった場合の代替ルールも決めておくと、より確実なエスカレーションルートとなります。
例えば、課長に報告する必要がある場合、直属の課長が不在であれば「別部門の課長級役職者に報告する」または「所属部門の次長に報告する」といったように、具体的な報告先を決めておくことが大切です。
4. ナレッジを共有する
エスカレーションをして担当者が上長などに対応を委ねた後、どのようにトラブルの解決が図られたのかといった共有をすることも重要です。対応策が共有されれば、次回以降は担当者が自分で対処できる可能性もあります。エスカレーションの事例を共有ナレッジとして蓄積していくことにより、組織全体の対応能力が高まっていくはずです。
エスカレーションがスムーズにいかない理由
エスカレーション自体は「上長に対応を委ねる」ことですが、組織においてはスムーズに実践できないケースが少なくありません。エスカレーションがうまくいかない理由として、下記の 3 点が挙げられます。
エスカレーションをするべきか迷った
担当者が「自分で解決すべき状況ではないか?」「上長に報告するほどの事態だろうか?」と感じることにより、エスカレーションをするべきか迷ってしまうケースが想定されます。エスカレーションを行う基準が不明確だったり、具体的な状況が十分に想定できていなかったりする場合に、このような事態が発生しがちです。
他部署と連携できなかった
トラブル解決につながる情報は、部署をまたいで組織内に点在していることもあり得ます。他部署と連携できていれば、必要な情報を確認したうえで、上長への報告が必要な事態であると判断できたかもしれません。部門間での連携不足は、インシデントへの初動対応の遅れにつながりやすいため注意が必要です。
情報共有ができていなかった
同じ顧客を複数名が担当している場合など、関係者間での情報共有が必須となるケースは少なくありません。情報共有が不足していると、「ほかの担当者が対応しているのではないか」といった思い込みの原因になりがちです。現状の最新情報を関係者間で共有できる仕組みを整えることは、適切なエスカレーションの判断を下すために欠かせない条件といえます。
エスカレーションを行う際のポイント
続いては、エスカレーションを行う際に意識しておきたいポイントを紹介します。下記に挙げる 5 点については、日頃から意識しておくことが大切です。
エスカレーションをためらわない職場環境づくり
エスカレーションの大敵は「判断の遅れ」です。一般的にトラブルは、時間が経過するほど深刻化していくため、いかに早くエスカレーションを行い適切な対策を講じるかが重要なポイントとなります。
上長にトラブルを報告することで、「責められるのではないか」「迷惑をかけてしまうかもしれない」といった躊躇があると、エスカレーションが遅れる原因になりがちです。報告者が必要以上に責任を問われることのないようルールを策定したうえで、エスカレーションをためらわない職場環境づくりを目指す必要があります。
トラブルのレベルに合わせた対応責任者の決定
トラブルをすみやかに解決するには、インシデントの緊急度・重要度に見合った対応責任者を決めておくことが大切です。各役職者が決裁権の範囲内で処理できる問題かどうかを確認したうえで、できるだけ偏りが生じないように対応責任者を決定します。
トラブル解決の進捗や対応の共有
エスカレーションを受けた上長は、トラブルの解決に向けての進捗や対応状況などを明らかにし、担当者に共有しておく必要があります。もし、トラブルが解決する前に、同じ顧客から再度連絡が入った場合、担当者が状況を把握していないようでは、火に油を注ぐ結果にもなりかねないからです。ナレッジの蓄積とトラブルの拡大防止のために、解決の進捗や対応方法を共有する仕組みを確立しておくことが大切です。
エスカレーションの手段の決定
エスカレーションを実施する際に使用する、具体的な連絡手段を決めておきましょう。例えば、電話やメール、チャットといった利用ツールを決めておき、ツールの優先順位を決めておくことで、報告者は具体的にどのような行動をとれば良いのかが明確になります。
エスカレーションフローの定期的な見直し
エスカレーションフローは、一度策定したきり放置するのではなく、定期的に見直すことが大切です。必要なタイミングでエスカレーションが実施されていない場合はもちろんのこと、ルールが十分に浸透していない場合なども見直さないと、適切なエスカレーションができません。
必要に応じて担当者へのヒアリングを実施し、エスカレーションをためらったことはないか、報告しづらいと感じる点はないか確認しておくことをおすすめします。
エスカレーションに Slack を活用
スムーズかつ適切なエスカレーションを実践していくには、コミュニケーションツールの Slack を活用することをおすすめします。エスカレーションの場面においてどのように Slack を活用できるのか、詳しく見ていきましょう。
豊富なコミュニケーション方法で、状況に合ったエスカレーションが可能
Slack には 1 対 1 のダイレクトメッセージ(DM)以外にも、豊富なコミュニケーション方法が用意されています。複数名との DM 、ハドルミーティング、外部アプリとの連携といった機能を使い分けることによって、インシデントの状況に合ったエスカレーションが可能となるでしょう。
例えば、第一報を上長に DM で送ったのち、詳細な状況についてハドルやビデオ会議で報告するといったこともできます。状況に合わせて柔軟なコミュニケーション方法を選べる点が大きなメリットです。
エスカレーションのナレッジを共有しやすい
エスカレーションの経緯や対応方法をナレッジとして共有・蓄積していくには、後日見直した際に確認しやすいよう、情報を整理しておくことが重要です。 Slack canvas を活用することで、テキストのほかファイルや画像などを埋め込んだドキュメントを簡単に作成・管理できます。 Slack canvas で作成したドキュメントは、 Slack 内のチャンネルや DM で自在に共有できるため、関係者への情報共有がよりスムーズになるでしょう。
エスカレーションがごく自然に行われる組織の仕組みを築くことが大切
エスカレーションは日常の報連相とは異なり、トラブル発生時にいかに迅速かつ的確に上長へ報告できるかが問われる局面といえます。エスカレーションフローなどの仕組みを整えることだけでなく、各担当者がエスカレーションをためらわず行える職場づくりを目指す必要があるでしょう。
今回紹介したポイントを参考に、ぜひ現状のエスカレーションフローの見直しや課題点の洗い出しを進めてください。エスカレーションがごく自然に行われる組織の仕組みを目指すことによって、トラブルに強い組織へと成長できるはずです。
よくある質問
HOME > Slack 日本語ブログTOP > 生産性 > エスカレーションとは?フローの策定手順やポイントを解説