顧客関係管理(CRM)ソフトウェアで業界をリードする Salesforce は、顧客中心の最高のエクスペリエンスを生み出すことに尽力しています。自社の顧客ベースにサービスを提供する場合にあっては、なおのこと、この点を重視しています。
Salesforce のサポートチームは、顧客の問題を迅速に解決するために、直接 Slack で新しいアプローチを試験的に導入しました。ここでは、Salesforce が Slack のチャンネルとワークフローを利用してケーススウォーミングを標準化し、最終的にカスタマーロイヤルティを高めながら、より迅速かつ精度の高いソリューションを提供する方法を説明します。
時間のかかる階層化された従来型サポートシステムからの脱却
Salesforce は、年間 120 万件以上のケースを解決する 3,300 人の担当者からなるグローバルなカスタマーサポートチームを擁し、従来の階層化されたモデルを模範としていました。ケースはチケットシステム経由で顧客から提出され、第 1 層のサポート担当者が管理するキューに取り込まれます。
より深い専門知識が必要な場合、ケースは第 2 層または第 3 層のサポート担当者に引き継がれます。その担当者は、そのつどケースの状況を把握した上で、ケースに対応する必要がありました。ケースが指揮系統の中をゆっくりと進み処理されるのを顧客が見守るなかで、時間は刻々と過ぎていくのです。
Salesforce のサポートチームはコラボレーション主体の新しいソリューションを求めていました。そのソリューションでは、スムーズな顧客体験を実現し、引き継ぎ回数を減らし、1 人の所有者がケースを管理します。そこで取り入れられたのが、Slack とケーススウォーミングです。
「Slack は、ケースの迅速な解決だけでなく、担当者が参照できる集合知識ベースの構築にも役立っています。この知識ベースにより、問題解決を今後さらにスピードアップできます」
スウォーミングでケースの解決にかかる日数を 26% 短縮
Salesforce と Slack は、力を結集して(スウォーミングして)問題を解決する新たなプロセスを共同開発し、お客様に、これまで以上に迅速かつ効率的にサポートを提供できるようにしました。スウォーミングモデルでは、サポートチームごとに、新しいケースを共有するためのパブリック Slack チャンネルが用意され、ワークフローを管理し専門知識を提供するスウォーミングリーダーが存在します。ケースが製品や地域に基づいて適切なチャンネルに投稿されると、エンジニアとシニアサポートの担当者がスレッドで問題をスウォーミングし、アイデアとソリューションを整理します。
スウォーミングでは 2 つのことを行います。まず、ベテランのサポートチームメンバーと関連する特定分野に詳しいメンバーを 1 つの場所で引き合わせ、専門知識を直接お客様に提供することで、不要な引き継ぎ(と毎回必要な報告)をなくします。次にチーム全体に知識を公開し、スウォーミングの過程で学習の機会を増やします。
Slack のチャンネルやスレッドでケースを解決することで、Salesforce の担当者は、互いに学びあったり、同様のケースから知識を得たりすることができます。問題が解決すると、その情報はすべての人に公開され、Slack で検索できるようになります。
Salesforce はすでに、スウォーミングに移行することのメリットを得つつあります。同社の年次書簡で、CEO の Marc Benioff 氏は、Slack のスウォーミングにより Salesforce のケースの解決にかかる日数が 26% 短縮したと述べています。Salesforce 社内でも、ケースの当日中の解決率が 19% アップしたことがわかりました。
26%
ケース解決率が向上
19%
ケースの当日中の解決率が向上
Salesforce による Slack でのケーススウォーミングの実施方法
スウォーミングは、Slack 内で実施され、さまざまな製品と重点分野を軸とする多様なパブリックチャンネルを利用します。Salesforce の Service Cloud 担当者は、ケースを解決するために新たな支援が必要になると、まず既存のスウォームチャンネルで解決済みの同様の問題をチェックします。
必要な情報が得られない場合は、Slack のカスタムワークフローを使用してフォームを開き、ケース番号、緊急度、分野などの主要な情報を入力します。フォームが送信されたら、ワークフローによってスウォームチャンネルに、この情報とチケットシステム内の元のレポートへのリンクが自動的に投稿されます。これにより一貫性が確保され、ケースに関連する情報が常に共有されることになります。
チャンネルでケースの詳細情報を入手できれば、エンジニアをはじめ、関連する専門知識を持つ担当者や製品スペシャリストは、スレッドに参加して問題解決方法のアイデアを共有したり、バックエンドシステムをさらに詳しく調べて根本原因をつきとめたりできます。
ときにはケースが複雑になり、専用のチャンネルが一時的に必要になることがあります。こうしたことは、会計、コミュニケーション、法務など、サポートやエンジニアリング以外のチームからの情報を必要とする、優先度の高いケースで発生します。営業チームやカスタマーサクセスチームなど、部門の垣根を越えた関係者は、チャンネルや最新情報をモニタリングすることでも、連携できます。
「Slack でスウォーミング(力を結集)すれば、適切な時に必要なエキスパートを巻き込めるだけでなく、階層やエスカレーションもなくなります。その結果、問題をただちに解決できる最適なメンバーが見つけられるのです」
会社にケーススウォーミングを導入するためのヒント
Salesforce と Slack は反復的なプロセスを踏んで、スウォーミングの開発と改善を行っています。Service Cloud、Marketing Cloud、Digital Engagement の各サポートチームによる試験導入が成功した後、Salesforce はスウォーミングモデルをグロバールサポート組織に展開する予定です。このジャーニーから得た次の教訓は、何千人もの顧客を一度にサポートするほかの会社にも役立ちます。
新たなスウォーミングに Slack のパブリックチャンネルを使用
サポートチームがまず考えるのはプライベートチャンネルを作成することかもしれません。しかしデフォルトのチャンネルをパブリックチャンネルにすると、社内の誰もがスウォーミングへの参加、スウォーミングのレビュー、スウォーミングの検索を簡単に行うことができます。組織のほかの部門のエキスパートが新しいスウォーミングを参照し、必要に応じて情報を提供することもできます。
パブリックチャンネルでは、ユーザーは特定のチームメンバーをメンションし、メッセージのサイロ化につながる可能性のあるダイレクトメッセージの使用を抑制することができます。何よりも、Slack の検索機能はパブリックチャンネルで最もうまく機能し、サポート組織全体での知識の共有を可能にします。
ワークフロービルダーを使用してケースの投稿を統一し、必要な情報を収集する
ワークフロービルダーはポイント&クリックで操作できるツールであり、情報を収集してケースを解決するなどの日常的なプロセスを自動化します。ワークフロービルダーは、Salesforce の最初のフレームワークとスウォーミング構造を構築すると同時に、そのプロセスをすばやく繰り返すために、極めて重要な役割を果たします。ワークフロービルダーにより、複雑なコードの記述が不要になり、全体的な開発作業が削減されるため、どのチームでも新しいプロセスを簡単かつ迅速に適用できるようになります。
Salesforce のサポートチームはワークフローを使用して、ケースがスウォームチャンネルに投稿される前にケースに関して必要な情報を収集するためのシンプルなフォームを作成しました。またサポートリクエストを使用して、関連する詳細情報とトラブルシューティング情報をすべて事前に収集することで、担当者の作業効率を低下させ、解決時間を遅らせるやりとりを削減するようにしています。
ケースの複雑化に伴うインシデントチャンネルの使用
複雑なソリューションを必要とする特殊なケースで、組織全体から専門家を集めてケースを解決するには、スウォーミングをディスカッションスレッドから一時的なインシデントチャンネルに移動するという方法もあります。チャンネルには、重要度とケース番号を含む、標準規格に基づいた名前を付けるとよいでしょう(例 : #support-api-sev1-27343
)。
チームをひとつにまとめケースを迅速に解決
非常に長い引き渡しメモや、ナレッジのサイロ化により解決が長期化する時代は、はるか昔になりました。Salesforce のサポートチームのメンバーは組織全体の力と専門知識を味方につけ、Slack でのスウォーミングで迅速に答えを引き出し、より高度なカスタマーエクスペリエンスを提供します。