Slack の検索機能により、ユーザーはそれぞれの組織やコンプライアンスの枠内で、メッセージやファイルから必要な情報をすばやく見つけ出すことができます。Slack の検索インデックスは、複数のチャンネルやオーガナイゼーションが含まれる複雑な Slack のエコシステムにおいて、きめ細かな可視性とコンプライアンス対応を実現しながら、ユーザーが期待する高速かつ正確でインサイトに富んだ結果を提供できるよう設計されています。
そして、エージェント時代を迎えようとしている今、その重要性がさらに増しています。Agentforce では、自律型の AI エージェントが、付与されたアクセス権に応じて Slack 内の情報を活用。それにより Agentforce は学習を続け、さらにスマートな応答を提供できるようになっていきます。人間と AI が組織のナレッジベースに簡単かつ安全にアクセスできるようになれば、さらにスマートでスピーディー、そして有意義な働き方を実現できるでしょう。
このようなエージェント時代において、メッセージやファイルの可視性の向上、外部のコンプライアンスやセキュリティの基準への対応、および世界各地で働くメンバーのつながりの強化に、Slack の検索システムはどのように役立つのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。
メッセージ : 設計段階から組み込まれた、きめ細やかな可視性
Slack のチャンネルには、パブリック、プライベート、共有、複数のワークスペースにまたがったものなど、さまざまな種類があり、それぞれ可視性を実現する方法が異なります。Slack の検索システムは、各チャンネルの種類に応じてメッセージをインデックスし、クエリ時に可視性フィルターを適用。これにより、そのユーザーがアクセスできるメッセージからの情報だけが、検索結果として表示されるようになっています。
チャンネルベースの可視性
メッセージの可視性には、そのメッセージが存在するチャンネルの可視性が引き継がれます。各チャンネルは種類に応じて、以下のようなルールで扱われます。
- パブリックチャンネル(共有なし): ワークスペースのメンバー全員が見ることのできるパブリックチャンネルは、ワークスペース ID でインデックスされ、クエリ時にユーザーのワークスペースメンバーシップを用いてフィルタリングされます。
- プライベートチャンネル : そのチャンネルのメンバーのみに表示されるプライベートチャンネルでは、インデックスにすべてのメンバーの ID が登録されるのを避けるため、チャンネルのメンバーシップが直接クエリされます。
- オーガナイゼーション間で共有されるパブリックチャンネル : そのチャンネルが複数のワークスペース間(またはオーガナイゼーション全体)で共有されている場合、インデックスの更新はオフラインジョブとして行われるものの、リアルタイムのクエリには、ワークスペース共有の最新の変更を動的に反映した調整がなされます。
- ダイレクトメッセージ(DM)および複数人でのダイレクトメッセージ(MPDM): メンバーシップのリストは小規模かつ静的であるため、メッセージはメンバー ID でインデックスされます。
外部と共有されているチャンネル
Slack コネクトを使って複数のオーガナイゼーション間でチャンネルが共有されている場合は、参加している外部パートナーのそれぞれが、インデックスされたメッセージのコピーをもつことになります。こうすることで、チャンネルの分類に関係なく、それぞれのオーガナイゼーションの可視性ルールに従うことができます。
共有されたファイルの可視性
Slack 内のファイルには、そのファイルが共有されているチャンネルや DM / MPDM と同様の可視性モデルが用いられます。検索インデックスが、共有されたファイルを「子」ドキュメントとして表すことで、クエリ時に複雑な可視性ルールを反映できます。
ファイルに対する主なインデックス作成パターン
- パブリックチャンネル内で共有されたファイルは、チャンネルのワークスペース ID でインデックスされます。
- プライベートチャンネル内のファイルは、チャンネルのメンバーシップによって制限されます。
- オーガナイゼーション間で共有されたチャンネルでは、ワークスペース ID またはオーガナイゼーション ID を用い、共有に関する最新の変更に合わせて動的にクエリが調整されます。
- DM または MPDM 内で共有されたファイルは、参加する全ユーザーのメンバー ID でインデックスされます。
子ドキュメントを用いることで、複数のチャンネル間で共有されたファイルも、インデックス内でデータを重複させることなく、効率的に扱えます。
Agentforce : Slack 検索の活用で AI がさらにスマートに
Slack の検索機能は、検索拡張生成(RAG)を用いる Agentforce などのインテリジェントシステムによって、さらに強化されます。このようなシステムは、アクセスが許可されたチャンネル内のデータをリアルタイムで取得・分析して、コンテキストに即した正確な結果を提供。関連性の高い情報がすぐに手に入ることで、チームは意思決定のスピードを上げることができます。
仕組み
- オンデマンド検索 : ユーザーが Agentforce に問い合わせを行うと、システムが Slack 検索のアクションを呼び出すかどうかを自動的に決定。必要に応じて、ユーザーがアクセス可能な範囲内にあるメッセージやファイルを含めた検索結果が Slack から取得されます。
- コンテキストに基づいた結果の出力 : Agentforce は、クエリを行うユーザーが閲覧できる内容(メッセージ、ファイル、その他のワークスペースデータなど)のみを取得します。
- リアルタイムでのインサイト取得 : 現在のコンテキストに基づいた結果が出力されることで、ユーザーは最新かつ関連性が高く、実用的な応答が得られます。
セキュリティとプライバシーを最優先
Slack の検索アクションは、信頼性と安全性を最優先して設計されています。
- 可視性ベースのアクセス : Agentforce が取得できるのは、ユーザーがその時点で閲覧可能な内容のみとすることで、意図しないデータ漏えいを防ぎます。
- 管理者によるコントロール : ワークスペース管理者が、チームごとに Slack 検索アクションの有効化と設定を完全に管理できます。
- データ共有の最小化 : データを Slack の安全なエコシステム内に留めることで、不要な複製や外部への転送がなされないようにしています。データが 1 か所にまとまっていることで、チャンネルをプライベートに設定したり、チャンネルからメンバーを外したりするような変更にも即座に対応できます。
このような安全対策が維持されていることで、Agentforce はユーザーのプライバシーやワークスペースのセキュリティを損なうことなく、AI を活用した強力な体験を提供できます。
コンプライアンス : 可視性・セキュリティ・制御のバランスを確保
Slack は、厳格なコンプライアンス要件を満たしながら、組織の中でコラボレーションに必要な可視性を実現できるよう設計されています。データセキュリティと国際標準への準拠が保証されている Slack は、規制の厳しい業界においても信頼されるプラットフォームになっています。
FedRAMP 認証
Slack は、FedRAMP Moderate と FedRAMP High の両方の環境をサポート。FedRAMP High には、隔離された独立環境として AWS GovCloud 内で実行される GovSlack によって対応しています。いずれの環境も強力な検索機能を備えていますが、こうした分離により、環境を越えた検索や共有が起こらないようになっています。
Enterprise Key Management
Enterprise Key Management は、組織がサードパーティのキー管理サービスによって独自の暗号化キーを管理することで、データセキュリティを強化できる機能です。メッセージやファイルの暗号化と復号がリアルタイムで実行されるため、アクセスを管理しながら、シームレスなコラボレーションを実現できます。さまざまなコンプライアンスや規制の要件を満たせるよう、キーのローテーションや失効にも対応しています。
国際データレジデンシー
Slack は、複数の地理的地域に検索クラスタを配置することで、地域ごとのデータレジデンシーのニーズに対応しています。この機能によってデータは指定された地域内に確実に保持されるため、各地域の規制やコンプライアンスの基準を満たすことができます。
カスタム保存ポリシー
データが必要な期間のみ保持されるよう、組織でメッセージやファイルの保存ポリシーを定義できます。Slack はこのポリシーに従い、期限が切れたデータを定期的にデータベースや検索インデックスから消去。データガバナンスのニーズに対応したコンプライアンスの確保と、柔軟性を両立させています。
将来を見据えた拡張性
チャンネル共有への動的な対応、複雑な基準に対するコンプライアンスの確保、大規模な組織のニーズを満たすための拡張などを通じて、Slack のエンジニアリングチームは、安全で信頼される高速な検索を実現するためのイノベーションを続けています。
分散型システム、検索テクノロジー、セキュリティが交差するこの興味深い分野についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ専門家とお話しください。