この 1 年は試練と変化の年でした。社会だけでなく、1 人ひとりが、多くのものを失いました。一方、そんななかで得られたものもあります。科学の進歩、忍耐力、そしてこんな時だからこその誠実な思いやりです。
私たちはこの 1 年で多くのことを経験し、そこから学んできました。パンデミックの発生で働き方を変えるスピードについて考え、人種的平等を求める闘いによって、長らく後回しにしてきた真の不平等解消に向けて意味ある前進を始める時だという意識が芽生えました。これらはすべて、私たちの生活や社会のあらゆる面を変える千載一遇のチャンスです。
変革とは難しいものです。人は知っていることを歓迎し、知らないことを避けます。そして現状に疑問を持つことを好みません。これを社会のレベルで考えると途方もなく難しいことです。しかしこの 1 年の間に私たちが強いられた変化の数々は、これまでやってきたことを大きく変え、状況に適応するきっかけにもなりました。それを支えるのは想像力や決意、そしてイノベーションや発明です。
私たちが生きる世界は誰かが意図して設計したわけではなく、誰かが計画したものでもありません。私たちの生活の仕方や、もちろん働き方も同じです。今私たちがいる世界には、暗黙のルールや様式があります。それらは人の善意や、明らかにそうでないもの、またはまったくの偶然などあらゆる要因によって作られてきました。でも、それをそのままにしておく必要はありません。私たちには、どんな世界にしたいかを決め、それを実現する機会や能力があります。かつてあったオフィスで仕事をするメリットを取り戻すだけでなく、もはや役に立たない古い体制や慣習を断ち切ることもできるのです。今こそ、働き方の未来を拓く時です。そしてその未来とは、インクルーシブで、柔軟性があり、つながりとエンゲージメントに根ざしたものです。
働き方の未来には柔軟性がある
「9 時 5 時」の定時勤務は万人向けではありません。例えば、11 時から 6 時の間に生産性を発揮できる人もいれば、子供が寝静まったあとに集中できるケースもあります。この 1 年、こうした問題が浮き彫りになりました。
パンデミックが起こるまで、ナレッジワーカーの仕事で大きな要素を占めていたのは、オフィスと会議の 2 つでした。それがコロナ禍で、多くの人はオフィスではなくパソコンの画面に向かうようになりました。しかし 1 日中ビデオ通話をしている状態を 1 年間やってみてわかったのは、それを今後も続けるのは難しく生産的でもないことです。
仕事で成果を出す責任があることは誰しもわかっています。でも管理されるのではなく、任せて欲しいのです。従業員が柔軟性を求めるのは、それぞれの生活があるからです。従業員には子供や親がいて、家の何かが壊れたら修理の業者を呼びます。それと同時に自分の仕事が好きで、成果を出したいとも思っています。
だからこそ、目指すべき未来はハイブリッドで非同期型の働き方なのです。Future Forum の調査によると、柔軟なリモートワークをしている人はオフィスで働いていた時よりも生産性が高く、よりよいワークライフバランスを享受し、満足が高いことがわかりました。実際、働く場所を柔軟に選べることを望むナレッジワーカーは、グローバルで 83% に上ります。
企業がハイブリッドな働き方モデルを採用するのに伴い、リーダーたちは同期的なプロセスや会議に代わるより柔軟な方法を見つけようとしています。それは、結果的に効率と生産性を高めることにつながるからです。こうした変化は、勤務時間を見直すきっかけにもなっています。つまりそれは、従業員がどこでどんな時間に働いても、チームがつながってやり取りできるようにするということです。
働き方の未来はもっとつながっている
メンバー同士のつながりや絆は、あらゆる組織の成功を支える基盤です。仕事やチーム、パートナー、そして組織とのつながりを感じている人は、ただ毎日出社するだけではありません。チャンスを心待ちにし、逆境での回復力があり、かつてない速さで目標を達成します。
従業員のエンゲージメントには職場のプロセスやツールが大きく影響します。特に、従業員同士が人間関係を育み、チームが信頼を築き、多様なグループからなるコミュニティが互いに支え合えるようなものが重要です。調査ではほぼ半数が、自社やチームにおいて「リモートで仕事をするようになってから、コラボレーションの方法を意図的に変えた」と回答しました。
社内だけでなく、パートナーや顧客、ベンダー、クライアントなど、一緒に働くすべての人とのつながりを深める方法もあります。市場調査会社 IDC の調査では、リモートワークへの移行における主な課題として、回答者の 43% が社外関係者とのコミュニケーションやコラボレーションを挙げています。例えばパンデミック以前の商談では、クライアントのもとへ出向いて提案を行ったり、次に顔を合わせる機会を待ったりするという制約がありました。しかし企業同士がつながる手段が出てくると、場所や時差にかかわらず一緒に仕事を進めるすべての人との関係を保てるようになりました。それはパンデミックのような困難な状況でも同じです。
働き方の未来はインクルーシブ
多様性のあるチームは特に革新的で、より優れた製品やサービスを生み出し、さらに逆境のなかでも回復力があることが知られています。そのため、インクルーシブで公正なチームを作ることで多様な従業員に対して平等な機会を確保することは、正しいことであり賢明です。
今やナレッジワークの多くは都市部に集中しています。そしてたいていの都市は人口密度が高く、コストも高く、環境への配慮が足りません。場所を問わない働き方は、ナレッジエコノミーに参加する機会をこれまで疎外されてきた地域にまで広げるチャンスになります。雇用における地理的な障壁を取り除くことで、才能ある人材の世界が文字どおり広がるのです。
働く場所が分散化すると、企業の中心となる物理的な職場がなくなります。その代わりテクノロジーを活用することで、いつ・どこで働き、仕事にどう向き合って、同僚とどうやり取りするかが従業員の裁量に委ねられます。また仕事への関与やコラボレーションが、もはや会議室の大きさに制限されることはありません。上司の近くに座る人が情報を多く持っているということもなくなります。そしてリーダーシップは、特定のフロアに通勤する人にだけ与えられる特別なものではありません。
働き方を変えるだけでは、プロセスや構造における不公平のすべてを解決することはできません。しかし、人を中心としたデジタルファーストな職場構築に取り組む Future Forum の調査によると、柔軟な働き方がさまざまな面で満足度を大きく向上させることが明らかになっています。例えば、黒人の回答者はリモートワークによって帰属意識が倍になり、ストレス管理能力が 64% 向上したことがわかりました。
今すぐ自社の働き方を見直しましょう
これまで仕事を進めるよい方法だと思ってきたものは、何世紀も前からの慣習に根ざしていて、その多くは意図して排他的に作られたものでした。今こそその状況を変え、誰にとってもよい働き方の未来を拓く時です。そのためには、継続的なコミットメントと全社的なアクション、そして多くのステップが必要です。とはいえ Slack では、皆が希望に満ちています。私たちと一緒にこのチャンスをつかみましょう。
チームの働き方を変革するために役立つガイド :